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神化論 after  作者: ユズリ
浄化
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浄化 29

 鬱々と泣いているユーリの姿を確認し、ウネは「こっちも手遅れね」と残念そうに呟く。ウネ曰く『手遅れ』らしいユーリの隣で、アーリィが「ユーリ、どうしちゃったの?!」と叫んだ。


「うぅ、アーリィ……小人たちが俺を責めるんだ……親友の妹を殺した俺は生きてる資格のない人間だって、小人たちが俺を裁判に……」


「そ、その話はユーリの中で解決したんじゃなかったの? しっかりしてユーリ! 大体、小人ってなに?!」


「小人さんごめんなさい……うぅ、俺が悪かったです……そうです、俺は生きる価値の無いクズですぅ……」


「ゆ、ユーリってばー!」


 どうやら謎酒を飲んでおかしくなってしまったのは、とりあえずはユーリとイリスの二人だけらしい。ラプラとウネは少しダメージを負ったようであったが、しかし意識ははっきりしている。店主も「相変わらずイカれた酒だぜ」と楽しげに笑っているが、まだ平気なようだ。そして壊れたユーリを心配するアーリィだけは、なぜか普段と一切変わらない様子だった。


「おいマヤ、先生たちは一体何を飲んだんだ?」


 ネガティブなことを言って泣いているユーリと、反対にゲラゲラ楽しそうに笑っているイリスの異様な光景を眺めながら、ジュラードが恐怖に震えるうさこを抱えてマヤに問う。マヤは「なんでアタシに聞くのよ」と文句を言いつつ、こう言葉を返した。


「何か相当ヤバイ酒だったよね……飲んだらアタシも無事じゃすまなかったのかしら」


「いや、でもアーリィは平気そうだぞ?」


 マヤの呟きにローズがそう意見すると、マヤは「確かにそうね」と不思議そうな顔をする。


「まぁ、元々アーリィはお酒に強いから……」


「レイリスさんも相当強いはずですよ!? それなのに……あ、あんなことになっちゃってるんですが……」


 楽しそうに笑い続けるイリスを不安げな表情で見ながらのアゲハの言葉に、マヤは「そ、そうよね」と頷く。そして彼女は小声でこう推理した。


「アーリィがアンゲリクスだから、かしらね……思考やらなんやらはすべてコアが処理するから、基本的にアルコールに影響はされないんでしょうけど」


「なるほど、それならこの勝負はアーリィが勝利の鍵だな……!」


 マヤの推理を聞いて、ローズの表情が少し明るくなる。マヤは「どこまで影響されないかはわからないけどね」と、一応言葉を付け足しておいた。


「それにしてもいきなりひどいことになったね。頭は大丈夫、その二人」


 一人焼き肉を再開させたエルミラが、他人事のようにそう言いながら勝負する者たちへ視線を向ける。視線の先、泣き上戸に笑い上戸と化したユーリとイリスの二人を見て、エルミラは「こわ、近寄らないでおこう」と呟いて再び焼き肉に集中することにした。


「で、どうする? その二人は勝負続けるのか?」


 店主がにやにやと笑いながらそう問うと、イリスは「あははっ! 飲む飲む~!」と普段の彼とはかけ離れたテンションで返事をする。一方でユーリは泣いていて聞いちゃいない様子だった。


「イリス、もうあなたは止めておいてくださいっ! これ以上コレを飲むのは危険です!」


「なんで止めるの、ラプラ~。よーせーさんがもっと飲めって言ってるのに~。ふふっ……くっくっくっ……!」


 イリスを心配して止めるラプラは、「これは幻覚が見えたら危険なんです」と説得しようとする。しかしイリスは笑って説得を聞いてないどころか……


「あははっ、じゃあラプラ、口移しで飲ませて~! もっとたくさん飲みたいの~」


「はーい、いいですよ! ふふ、満足するまで私がたっぷり飲ませてあげますよ……」


 あっさり寝返ったラプラに、ウネは「ラプラー!」と怖い顔で叫んだ。


「イリスももうダメよ、ダメ! ラプラ、飲ませたら怒るわっ!」


「ひ、一口だけ……だめでしょうか? こんなに甘えてくれるイリス、初めてでかわい……」


「ダメ! 彼を殺す気?!」


 ウネの剣幕に押され、ラプラは「はい……」と大人しく返事する。そしてイリスはおかしそうに笑い続けながら「やだぁ飲む~」とか言っていたが、魔族二人に止められてここで退場となった。 


「ユーリももう、飲むのは止めた方がいいと思う……」


「う、うぅ……アーリィちゃん、俺を心配して……こんなどうしようもない俺を……うううぅ……」


 精神状態がヤバイことになっているユーリは、アーリィの判断でストップとなる。

 ネガティブなことを言って机に突っ伏して泣くユーリを見て、アゲハは「リーリエさんみたいになってる……」と心配そうにつぶやいた。


「よし、じゃあ残り3人だな……くっくっく、楽しくなってきた」


 店主が低く笑いながらそう言って二杯目の準備をローズたちに頼む。そしてラプラとウネは、多少テンションが上がってるとはいえまだ平気そうな店主の様子を見て、驚きと共にある疑惑を抱いた。


「このお酒を飲んで平気でいるって……」


「あの男、もしや……」



「さー二杯目だ! お前ら、覚悟はいいな! がっはっはっ!」


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