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神化論 after  作者: ユズリ
浄化
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浄化 6

「ラプラも協力してくれてありがとう。マナ水作り、あなたの協力もあったから完成したのだろう?」


 ラプラはローズへ視線を向けると、わずかに目を細めて「いえ」と微笑む。


「材料となる魔物の捕獲はイリスの手伝いがあってこそでしたし。それ以外の、マナ水を制作する作業は先ほどの彼が……私はマナを抽出する魔物の捕獲と、その後完成したマナ水のマナの精度を高める調整を主に担当しただけですよ」


 そう説明し、ラプラは「しかし、こちらの世界に住む魔物からアトラメノクのマナを十分な量抽出する作業に苦労しました」とため息交じりに言葉を漏らす。


「正直、私はまだ精度に納得がいっていないのですが……しかし現在の試作品でも、使えないこともないでしょう」


 完璧主義者であるのかそんな言葉を漏らすラプラに、ローズは苦く笑って「そうか」と返事を返した。


「とにかく二人とも、ありがとう。あ、フェリードたちも手伝ってもらったのか……? 彼らにもあとで礼を言わないとな」


 ローズがそう感謝を改めて伝えると、エルミラが小さな小瓶がいくつも入った木箱を持って戻ってくる。おそらくは小瓶の中身がマナ水なのだろう。


「はーい、お待たせ。こちらが出来立てほやほや、美容と健康にいいと今話題のマナ水でございま~す」


 エルミラは適当なことを言いつつ木箱をテーブルの上に置き、小瓶の一つを取り出してローズへと手渡す。無色透明な液体の入った小瓶を受け取ったローズは、それをマヤに見せるように持った。


「へぇ、これがアトラメノクのマナ水ね」


 マヤがマナ水を観察すると、そういうものに興味があるアーリィも「私も見たい」と言って木箱の中を覗き込む。エルミラは「どーぞ、自由に見てよ」と彼女に言った。


「まだ数が少なくて希少だから、瓶を落としたりしないようにだけ気をつけてね。落としたらまたオレら、魔物捕獲のための肝試しやりに行かないといけなくなるから」


「なんだよ、肝試しって」


 エルミラの不可解な言葉にユーリが突っ込みを入れると、エルミラは世にも恐ろしいものを見たかのような表情を浮かべた。


「マナを抽出する魔物を捕獲するためにってさ、夜の樹海へ肝試し行く羽目になったんだよー。もーマジ怖かった! 二度とあんなのやりたくない!」


 エルミラは当時の恐怖を思い出したらしく、「魔物だけじゃなくて、謎の人魂が出たりしてさぁ」とユーリに恐怖を訴える。


「いや、エルミラ……その人魂が魔物だったんだけど……」


 恐怖でほとんど気絶しているだけだったエルミラなので、”人魂”が魔物だったことを理解していないのだろう。イリスがあきれ顔で突っ込むも、エルミラは聞いてない様子でユーリへとさらに説明を続けた。


「人魂だよ、人魂! 怖いでしょ?!」


「う……こ、怖くねぇよ……ヒトダマなんてヒカガクテキなアレが存在するわけねーだろ」


 オバケ嫌いのユーリが嫌な顔で強がるも、同調してほしいエルミラは負けじと恐怖体験を語る。


「そう? 人魂は科学的にも研究されているけども……じゃあさ、もっと怖い話をすると、さらにその後にナゾの角オバケが表れて……!」


「ちょっと、角お化けなんて出てないよ!」


 エルミラに”角オバケ”と勘違いされたままのイリスが訴えると、即座に角お化けの正体を理解したユーリは、今度は真顔で「それはこえぇな」と言った。


「角お化けはやべぇな。そいつ、相当悪質な怨霊じゃね? お祓いして消滅させとけばよかったのに」


「だよね! オレも悪質な怨霊だと思う! この世に恨みを持ってそうな顔してたし! お祓いすべきだったかな……!」


「だから、角お化けは見間違いだってば! つかユーリ、あんたわかってて言ってるでしょう! エルミラもいい加減にしてくれない!?」


 なんだかキレているイリスの様子に、エルミラは首を傾げながら「なんでレイリスがそんなに怒るの?」と言う。一方でユーリは知らん顔で「更年期のアレじゃね? あいつ、相当なお年寄りみたいだし」と言いイリスに本気で蹴られた。


「死ね! 今すぐ死ねクソガキっ! コロス!」


「イッテぇ! 暴れんなよ、クソ角おばけっ! 大人しく成仏してろ!」


「本当にあいつらは仲良しね……少し静かにしててもらいたいんだけど」


 ガチギレして暴れるイリスとユーリの悲鳴を迷惑そうに聞きながら、マヤは苦笑するローズに「ちょっと瓶のふた開けてほしいわ」と要望する。ローズは慌てて「わかった」と頷き、小瓶の蓋を開けた。蓋を開けるとマヤは身を乗り出して瓶の中身を確認しようとする。マヤが瓶の中に落ちないかローズはハラハラしながら見守り、やがてマヤは「なるほどね」と一人納得した反応を示した。


「何かわかるのか?」


 そうマヤに問いかけたジュラードは、正直自分には瓶の中身がマナ水と言われてもピンと来ていなかった。無色透明な液体であるからだろうか、ただの水が入った瓶にしか見えないのだが、マヤは何か理解している様子なので、きっと特殊な液体なのだろうと彼は思う。


「そうね、中に溶けてるマナがこちらの世界のものとは異なることはわかるわ」


 マヤはジュラードの問いに対してそう答え、彼女は同じくマナ水を観察しているアーリィに声をかける。


「アーリィもわかるわよね」


「うん……これ、すごい。興味がある」


 マヤに声をかけられたアーリィは、視線は小瓶の中身に向けたままで頷く。そんな彼女は言葉通り、なんとなく目を輝かせてマナ水に興奮しているようだった。どれくらい彼女がマナ水に夢中になっているかと言えば、大事な旦那が角おばけに罵倒されながら蹴られていても気づかないくらいに、だ。


「ちゃんとこっちの魔物から、これだけの量のアトラメノクのマナが抽出できるんだね」


 アーリィが関心したようにそう呟くと、ラプラが「苦労はしましたけどね」と苦笑と共に言った。


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