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神化論 after  作者: ユズリ
浄化
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浄化 5

 ローズのお礼の言葉に、アゲハが笑顔で「いえいえ、正直、暇でしたし!」と返事を返した。


「そーそー、私とアゲハはここでやることないからね。出迎えくらいはするよ」


 イリスが苦笑いと共にそう言葉を付け足すと、ユーリがアゲハに向けてこんなことを言う。


「つかアゲハ、お前エルミラたちんとこの様子見に行くって言ったっきり、音沙汰無しだったからちょっと心配したぞ」


「はっ! そ、そうでした!」


 ユーリに指摘されて、すっかり連絡を入れるのを忘れていたことを思い出したアゲハは、ユーリたちに「すみませんでしたっ」と頭を下げた。


「あわわわ、私ってばすっかりこっちにお邪魔になっちゃってて……ごめんなさい~!」


「いや、別にそんな謝ることじゃあねぇけどよ」


 ユーリが苦笑交じりにアゲハへ言葉を返すと、アーリィも「アゲハのことだから、忘れてるだけだろうとは思ってた」と笑って告げる。二人のその言葉に、アゲハは恥ずかしそうに笑って「私、しっかりしないとだめですね」と反省を呟いた。


「もう私は立派な大人の女性なんですから、ホントちゃんとしないとですっ! うん!」


「大丈夫、ちょっと抜けてるところがアゲハの可愛いところだから」


 イリスが微笑んでそう言うと、アゲハはちょっと照れた様子で「レイリスさん、からかわないでください~」と返す。そんな彼女にイリスはただ楽しげな笑みを返した。


「それで、出迎えもできないくらいに忙しいエルミラたちはちゃ~んとマナ水を完成させたのかしら?」


 マヤが目を細めてそう問うと、イリスが苦笑しながら「そんな疑わしげな顔しなくても大丈夫だよ」と答える。


「マナの精度に少し不安があるとか言ってたけど、マナ水自体は出来たって言ってた。今も最終調整中って感じかな?」


「ふ~ん。どれだけの精度のものが出来たのかしらね。っていうか、ホントに完成させたのなら驚きだけど」


 未だに疑う視線を向けるマヤに、イリスは「そんなにエルミラたちのこと、信用してなかったんだ……」と呆れた様子で呟く。それに対してマヤは「期待はしてたわよん」と、取り繕うように言った。


「まぁ、エルミラは普段があんな感じだから信用できないのはわかるけど、頭が良いことは間違いないから……ラプラやフェリードたちも手伝ってたし、問題ないものが出来ているはずだけども」


「そう? ま、いいわ。どんなものが出来たのかは、本人たちに直接確認しましょう」


「それがいいよ。エルミラたちは中にいるから、彼らの所に案内するね」


 イリスはそうマヤたちに告げると、背を向けて建物の入り口へと向かう。アゲハも元気に「皆さんのことは施設の方には説明してあるので、気にせずついてきてくださ~い!」と説明し、それを聞いたジュラードたちは安心して二人の後に続いて建物の中へと入っていった。





 イリスの後に続いて研究所内を進み、とある研究室の一つへとジュラードたちは足を踏み入れる。


「エルミラ、ラプラ、お待たせ。ジュラードたち連れてきたよ」


 ノックも無しにイリスがそんな言葉と共にドアを開けると、広い研究室内から「あ、おつかれー」とエルミラの声が返ってきた。


「やほー、ジュラード、ローズ、帝王マヤ様にユーリ……とにかくみんな、よーこそ~! 元気~?」


 エルミラは相変わらず行儀悪くビスケットを頬張りながら、やってきたジュラードたちに笑顔で手を振って挨拶する。彼の傍ではラプラが真剣な表情でテーブルの上の図面に視線を落としていたが、ジュラードたちの来訪と共に顔を上げた彼は僅かに微笑み「皆さん、ご無事でしたか」と呟いた。


「ウネも、無事でよかった」


「えぇ、ありがとうラプラ。あなたも……」


 友人同士であるラプラとウネが互いの無事を確認してそう短く言葉を交わすと、傍でエルミラも「オレもみんなのこと、ちょー心配してた!」と熱く訴える。


「とくにジュラードたちなんてドラゴン退治に行ったんでしょ? オレ、ジュラードが頭からゴリゴリとドラゴンに食べられたりしてないかって、すげー心配してたよ! 毎日ウィッチ神様にジュラードの無事をお祈りしてたくらいだし!」


「食べられてないが」


 本気で心配しているのかそうでないのかイマイチよくわからない態度のエルミラに、ジュラードが呆れた表情で言葉を返す。すると傍でイリスが「エルミラ、心配してたっけ? ビスケット食べるか寝るか研究するか、その三択の行動しかしてなかった気がするけど」と小さく呟くのが聞こえ、ジュラードは『こいつは別に心配はしてなかったな』と理解した。


「それでエルミラ、マナ水は完成したのだろうか?」


 ローズがそう少し心配した面持ちでエルミラに問いかけると、エルミラはビスケットを食べる手を止めてにやりと笑んだ。


「当然だろ、オレを誰だと思ってるの? ちょー天才のエルミラ様ですよ? そんな質問は愚問だね!」


「それじゃあ完成してるんだな」


「もっちろん!」


 エルミラの返事を聞いて、ローズがほっとした表情となる。マヤも「よかったわ、あんたを張り倒さずに済みそうで」と言った。


「え、マヤ様怖い。出来てなかったら本当に張り倒す気だったの?」


「むしろ張り倒すだけで済んだらまだいい方よ。バリエーション豊かな各種お仕置きを考えていたわ」


「ひぃ……こわ、完成してよかった。……んじゃ、ちょっと待ってね。今、試作品持ってくるから」


 マヤ様の真顔での恐ろしい発言に小さく震えつつ、エルミラは研究所の奥へと向かう。彼がマナ水を取りに向かうと、ローズはラプラに声をかけた。

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