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神化論 after  作者: ユズリ
古代竜狩り
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古代竜狩り 49

 しかし二人の話を聞いて少し考えると、何となく自分を助けた不思議の正体がそれであったのかもしれないともジュラードは思った。

 いや、正体なんてなんでもいい。とりあえずマヤたちが自分の話を信じてくれたようなので、ジュラードは「とにかくそういうことなんだ」と話を纏めた。

 

「ふぅん……まぁいいわ、とにかく無事でよかった、ジュラード」

 

「そうだな……それは本当に良かったよ」

 

「あぁ……」

 

 マヤたちの言葉にジュラードは頷き、そして彼はまたドラゴンへ視線を向ける。すると丁度ウネがこう口を開いた。

 

「ヴォ・ルシェ……あなたを襲ったと言う事は、ここはもう彼らの縄張りのようね」

 

 ウネのその静かな言葉に、ジュラードは再び体が強張り緊張するのを感じる。

 すでに危険なドラゴンの住まう領域へと、自分たちは立ち入ってしまっているのだ。それはすなわち、いつ今のように襲われてもおかしくない状況と言う事だ。

 

(まぁ、今はローズたちも一緒だからまだいいけど……)

 

 改めて一人でドラゴンに挑んだ事の無謀さをジュラードが感じていると、うさこがまたジュラードの頭の上を目指してよじ登ってくる。そしてうさこがいつもの定位置にたどり着くと、ローズが「ジュラード、先へ進めそうか?」と声をかけた。

 

「もう少し休んでいってもいいけど……」

 

「いや、平気だ……行こう」

 

 気遣うローズにそう返事を返し、ジュラードは「休んでても、ここが危険な事には変わりないし」と呟く。それを聞き、ローズは苦く笑いながら「そうだな」と頷いた。

 

「あら、先へ進むのね。それじゃ今度は落ちないように足元に気をつけて進みましょ」

 

 マヤのその言葉にジュラードは「さっきのは足元に気をつける問題じゃないだろ」と返し、マヤは小さく笑う。

 

「じょーだんよ。ま、アレね。言い返すヨユーがあるなら大丈夫そうね、行きましょうか」

 

 そうして再び合流した一行は、いっそう危険度が増した坑道地下をまた進み始めた。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「あー、ジューザスさーん!」

 

 そんなアゲハの元気な声で迎えられたジューザスがやってきたのは、エルミラやイリスが現在滞在中の場所であるルルイエの研究 所だった。

 研究所のドアを開けてすぐに出迎えてくれたのが、アゲハの元気な声と笑顔だったのだ。

 

「あぁ、アゲハ。君もここに来てたんだっけ」

 

「はいー!」

 

 いつもどおりニコニコ笑顔のアゲハにつられて、ジューザスも微笑んで彼女に挨拶をする。アゲハはにっこり笑顔のまま、ジューザスに「奥に皆さんいますよー」と言って研究所の奥へ行く事を進めた。

 ジューザスは職員に承諾を得てから、「それじゃあお邪魔するよ」とアゲハの案内で研究所の奥へと向かう。その手には旅の荷物と、銀色に輝く正方形の金属製の箱があった。

 

「……ジューザスさんはええぇと、どうしてここに来たんでしたっけ?」

 

「ん? あぁ、こっちの用事が済んだからだよ。近くに来てたから、様子を見にね」

 

「あぁ、そうでしたっけね。なるほどですー」

 

 返事をしながら、アゲハの視線はジューザスの持つ気になる銀色の箱に注がれる。その視線に気づき、ジューザスは小さく笑ってこう答えた。

 

「これ、気になる? フラメジュだよ」

 

「え?! あ、ここに入ってるんですかー!」

 

 アゲハの言葉にジューザスは笑んだまま頷く。アゲハは「手に入ってよかったですねー」と、嬉しそうに言った。

 その時丁度エルミラたちのいる部屋の前に到着し、アゲハが立ち止まるとほぼ同時に部屋のドアが開く。ドアを開けたのはイリスで、彼はジューザスと目が合うと挨拶より先に「うわっ」と嫌そうな顔をした。

 

「ちょ、レイリスいきなりひどい反応……」

 

 イリスのひどすぎる対応にジューザスも挨拶より先にそう言葉を向ける。するとイリスは「え、だって……」と相変わらずジューザスを嫌そうな目でじろじろ見ながら言った。

 

「だってドア開けたらいきなりジューザスがいるから……ねぇエルミラ、塩持ってきて塩! 撒くから!」

 

「なんで私がいるからって塩撒くの! 止めて!」

 

 必死に訴えるジューザスにイリスは目も合わさずに「じょーだんデスヨ」と呟く。その全く冗談じゃなさそうな彼の態度にジューザスは溜息を吐きながら、「やぁ」とやっと挨拶の言葉を告げた。

 

「あぁ、うん……何しにきたかは知らないけど、中入ってれば? エルミラいるし……あ、あいつ本気で塩探してる……」

 

「ちょっと止めてくれよ……私は近くに寄ったから様子見に来ただけだよ。えっと、レイリスはどこか行くのかい?」

 

 ジューザスが聞くと、イリスは「ちょっと気分転換に、外の空気吸いに」と答える。そして彼はジューザスたちのわきを抜けて、背を向けどこかへと行ってしまった。

 

「……」

 

 ジューザスがイリスの後姿をなんとなく目で追っていると、アゲハが「ジューザスさん、どうしたんですか? 入らないんですか?」と不思議そうな表情で声をかけてくる。それにジューザスは微笑み、「ううん、なんでもないよ」と返して部屋の中へと入った。

 

「あ、ジューザス! やほう」

 

 ヴァイゼスがなくなったので、随分とジューザスに対してフランクな態度になったエルミラは、かつての上司の姿を見てそう片手を上げて挨拶する。ジューザスも微笑んで、「あぁ」と手を振った。

 

「相変わらず元気そうで安心したよ、エルミラ」

 

「オレはいつでもわりかし元気だよー。あ、レイチェルたちも元気」

 

「そうか……なら安心だけど」

 

「うんうん、安心しといてよ」

 

 ジューザスにそう返事を返し、エルミラは「ところでこの塩どうすればいいの?」と持っていた塩をジューザスに見せた。

 

「いや、塩は……どっかその辺にでも置いとけばいいと思うよ。うん、ソレ必要としてたレイリスどっかいっちゃったしさ」

 

「あ、そうなの? なんだよ、せっかく探したのにー。もーなんなのレイリスのやつー!」

 

「ははは……」

 

 ぶーっと子どものように頬を膨らませるエルミラを苦笑しながら見て、その後ジューザスの視線は何となく見ちゃいけない気がして避けていたものへと移る。

 いや、正確には関わるとまずいものな気がして見ないふりをしとこうかと思ったのだが、しかしやはり”それ”の存在感は無視できるレベルじゃなかったのだ。

 ジューザスは苦い顔をしながら、恐る恐るといったふうにエルミラたちへこう聞いた。

 

「え? で、なに? どうしてこれ、床に人が倒れてるの?」

 

 ジューザスの視線の先には、床に突っ伏して倒れている男の姿。


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