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神化論 after  作者: ユズリ
古代竜狩り
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古代竜狩り 30

 そんな報告をしながら捕獲したうさこを抱いたフェイリスが、窓の外から室内へと顔を覗かせる。そうして室内へと視線を向けた彼女は、先ほどのジュラードのように凍りついたように目を見開いて固まった。

 フェイリスの見開かれた目に映るのは、彼女に怯えて涙目で「ひぃやあぁあぁぁ」と情けない悲鳴を上げながらジュラードにしがみ付くローズの姿と、それに対してどうしていいのかわからずに狼狽するジュラードの姿だった。

 

「ば、ばかローズ、はなれ……っ!」

 

 なんだか自分たちを見るフェイリスの眼差しが氷点下に冷たいような気がして、ジュラードは恐怖の余り混乱しているローズに離れるように言う。だが今度はこっちが冷静じゃなくなり、ローズはまるで聞いて無い様子で「悪魔が攫いに……助けて……っ!」とよくわからないことを言いながら救いを求めるばかりだった。

 そしてベッドの上で抱き合う二人をしばらく観察するように眺めたフェイリスは、ひどく落ち着いた声でこう呟く。

 

「……これは、マヤ様にどう報告したらいいのでしょうか……」

 

「!?」

 

 フェイリスの世にも恐ろしい呟きを聞き、直後にまたジュラードの顔色は変わる。彼は蒼白な顔色でその後、やたら冷たい目で自分を見てくるフェイリスとうさこに、自分の命を守る為の説明を必死に行ったのだった。

 

 

 

 

 色々疲れた日の翌朝、ジュラードは前日の疲労を残しながらも起床する。

 主に精神的な疲労ではあるが、疲れているからと言って暢気に寝ているわけにもいかない。リリンを助ける為には何より自分が一番に行動しなくてはいけないので、彼はうさこを頭に乗せつつ一人静かに気合を入れて、宿泊所の外で待つ他の者たちの元へ向かった。

 

 

「あ、ジュラードおはよう」

 

「!? お、おは……よ、ぉ……」

 

 先に仕度を終えていた仲間の所へジュラードが向かうと、初っ端からいつも通りののほほんとした笑顔のローズに声をかけられてしまう。それにジュラードはややぎこちなく挨拶を返し、そして彼はビクビクと怯えながらローズと共にいつも通り一緒にいるマヤへ視線を向けた。

 マヤはジュラードの視線に気づくと、一応といった感じに「おはよー」と挨拶をする。それにジュラードはまたぎこちなく、「あぁ……」と返事を返した。

 

「……」

 

「? なに? アタシの顔に何か付いてる?」

 

 挨拶を返した後、ジュラードが怯えた表情のままじっとマヤを見つめていると、マヤは不可解そうな表情を彼に返しながらそう問いを向ける。

 ジュラードはとくにいつもと変わりない様子のマヤに気づき、慌てて「な、なんでもないっ」と首を横に振った。

 どうやら昨日の夕方頃のごたごたは、フェイリスたちが納得してくれたからなのか、マヤには伝わらずに済んだらしい。ジュラードは自分の命が繋がったことを確認し、朝から深く安堵の息を吐いた。

 

「きゅいぃーきゅぃっ!」

 

「ちょ、うさこ無駄に揺れるな……」

 

 だがうさこはまだ何かややご機嫌斜めらしく、時々頭の上でジュラードに何かを訴えるようにぶるぶると震えまくる。そんなうさこの嫉妬に苦い顔をしながら、ジュラードは今日の予定をローズへ問うた。

 

「そ、それで今日はどういう感じで進むんだ……?」

 

 するとローズは「あぁ、ジュラードにはまだ話していなかったな」と彼に向き合う。そしてこんなことを彼に説明した。

 

「実は昨日の夜にフェイリスが宿泊所の人から話を聞いたらしいんだけど、ここから北東に行った先に使われなくなった地下坑道があるらしいんだ。その坑道は途中で巨大地下洞窟に繋がっていて、そこにヴォ・ルシェの巣があるという話を聞いたことがあるそうなんだ」

 

「なに!?」

 

 目的とするドラゴンの巣があるという話は、それが本当なら ばかなり有力な手がかりだ。思わず「それ、本当なのか!?」と顔色を変えて聞き返したジュラードに、今度はフェイリスが口を開いた。

 

「その方は話を聞いただけらしいのですが、しかし坑道が閉鎖された理由が作業中にヴォ・ルシェに襲われて大きな被害が出たと言うことなので居る事は確実かと。しかし場所が場所なので、かなり危険を伴うようなのですが……」

 

「確かに地下洞窟ってのは迷いやすいし、落盤とかの危険要素が多いわよね。でもそういう場所だからこそ人もあまり立ち寄らないから、古代竜が生息していてもおかしくないわよ」

 

 マヤのその言葉を聞いて、ジュラードは「なら行こう」という言葉を思わず口にする。

 自分にはもうこの希望しか残されていないのだから、危険だろうとジュラードは何が何でも行く気持ちだった。

 しかしそう言ってから、彼はその危険にローズたちも巻き込んでしまうのだということに気づく。

 

「あ……でも、そうか……お前たちにも危険が……行くってそういうことだよな」

 

 ポツリとそう呟いたジュラードに、マヤがどこか呆れた顔で「今更何言ってんのよ」と声をかけた。

 

「そんな危険、こっちも重々承知よ。それでも行くって、今あんたが来る前に皆で話してたんだから。だからあんたはよけーな心配しなくていいの」


 マヤの素っ気無くも優しい言葉に、ジュラードはどう言葉を返していいのか迷う。

 そして迷う彼に、ローズも「マヤの言うとおりだよ」と笑って言った。

 

「それに危険なことなら、過去にもっといっぱい経験してきたし。だから大丈夫さ」

 

「……あぁ」

 

 仲間の優しい言葉に、自分はただ頷くとことしか出来ない。だけど素直に頷けるということは、自分は彼らを信用しているからだ。

 せめて自分に協力してくれる彼らの足手まといにはならないようにと、それを静かに決意しながらジュラードは「それじゃあ、そこへ向かおう」と言った。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 ユーリたちと別れたジューザスは一人クノーへと戻って会長へと報告を行い、その後は街の宿に滞在して逆に会長からのある報告を待っていた。

 そしてその報告を待って二日後、ロンゾヴェルから呼び出されたジューザスは学会へ赴き、待っていた報告を受ける。その報告と言うのは、禍憑きを治療する薬の材料として必要なものの一つである『フラメジュ』についてだった。

 

 

「そうですか! フラメジュ、譲っていただけると!」

 

「はい、フラメジュを保護する国の方から先ほどやっと許可を頂く返事を頂きましたので」

 

 ロンゾヴェルの執務室で彼と向かい合うジューザスは、その返事を聞いて思わず笑顔を漏らして「それはよかった」と呟く。それにロンゾヴェルも柔和な笑みで「えぇ」と頷いた。

 

「しかしあちらへ受け取りに来て欲しいとのことです。貴重な鉱物ですので、送るにしても事故などあっては困るし責任が取れないということで」

 

 ロンゾヴェルのその言葉に、ジューザスは「じゃあ私が取りに向かいます」と返事をした。

 

「そうですか……ボーダ大陸へ渡っていただく事になるので遠いのですがよろしいですか?」

 

「えぇ。大丈夫です」


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