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神化論 after  作者: ユズリ
古代竜狩り
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古代竜狩り 16




「ローズさん、本日はそのようなルートでヴォ・ルシェを探しに向かいますか?」

 

 出発直前、荷物の整理をしていたフェイリスにローズが近づくと、彼女にそう声をかけられる。

 

「あぁ、そうか。それを確認しておかないとな」

 

「えぇ。メリア・モリは広いので、計画的に移動しないと無駄に体力を消耗してしまいます」

 

 フェイリスはにっこりと微笑んで、「もしルートの検討がまだでしたら、よろしければ私の考えた案を参考になさってください」と地図を取り出して言った。

 

「フェイリスが考えてくれたのか……相変わらず準備がいいというか、頼りになるよな」

 

「いえ、そんな……ローズさんのお役に立てますなら私は何でも致します」

 

 頬を赤らめてよう返事を返すフェイリスに、ローズはちょっと後ずさりしつつも「えぇと、是非ルートを聞かせてくれないか?」と聞く。それにフェイリスは「はい」と喜んだ笑顔を見せて、地図を広げた。




 ローズがフェイリスと今日のルートを確認している頃、ジュラードはうさこを頭に乗せてウネが行っていた野宿の後片付けの手伝いをする。

 

「きゅうぅ~きゅぅ~」

 

「ちょ、うさこ、頭に座ってるのはいいけど顔の方にずり落ちてくるな。邪魔で前が見えない」

 

「きゅ、きゅい~きゅいぃー」

 

「……言う事聞かないと落とすぞ」

 

「きゅうぅーっ! きゅううぅーっ!」

 

「全く……」

 

 うさこの妨害を受けながらも、ジュラードは後片付けを進める。そんな彼にふと手を止めたウネが声をかけた。

 

「……ジュラード、何か悩み事でもあるの?」

 

「へ?」

 

 唐突にそんなことを聞かれ、ジュラードは目を丸くしながらウネを見返す。

 盲目の瞳はアーリィとは違う意味で相変わらず感情が読みにくかったが、何となく自分を心配しているように見えた。

 

「えぇと……突然どうしてだ?」

 

 ジュラードも片付けの手を止めてウネにそう問い返す。するとウネは「雰囲気で」と答えた。

 

「ふ、雰囲気?」

 

「そう」

 

「……雰囲気で俺が悩んでいると?」

 

「そういう空気を感じたの。だから聞いたのだけど……」

 

 雰囲気とか空気でそんなことがわかっちゃうのか……と、ウネの鋭さに感心しつつ、ジュラードは「別になんでもない」と返す。その返事にウネは一瞬黙り、そしてこう無表情に呟いた。

 

「……遠慮しないで……そ、相談……してもいい。そう、私に」

 

「……ウネ、何かお前無理してないか?」

 

 何か異国語を機械翻訳したみたいなどこかぎこちないウネの台詞に、ジュラードは訝しげな顔をして「お前こそどうしたんだ?」と心配した眼差しを向けた。そんなジュラードの返事に、ウネは小さく溜息を吐いてからこう返す。

 

「やっぱり変だったか……その、私ももう少し皆と自然に打ち解けられればと……そう思って」

 

 何か意外な返事を聞いた気がして、ジュラードは思わず「打ち解ける?」と聞き返す。するとウネは珍しく困ったような照れたような、そんな複雑な表情をしながら「そう」と頷いた。

 

「以前あなたにもアドバイスもらったし……もっと積極的に人と関わるべきかと思ったから」

 

「あ、あぁ……そうか」

 

 つまりジュラードに『悩みがあるのか』と聞いたのは、ウネなりに考えて積極的に人と関わろうとした結果らしい。

 しかしウネは自嘲気味に笑い、「だけど今の私の言葉はダメだった」と言った。

 

「私、相談とかされても上手くアドバイスできるタイプではないから……だから自分で言っておいて、実際に相談されたらどうしたらいいのかと不安にもなったの。それが態度に出てしまったみたい」

 

「……何となくわかるな、それ」

 

 ジュラードが思わずそう返すと、ウネは小さく笑って「でしょう?」と言った。

 

「あ、あぁ……いや、だけど、その、お前の努力した気持ちは凄いと思うし、俺もその……えぇと、アレだ……嬉しかった」

 

 何気に失礼な事を返事してしまったことを取り繕うように、ジュラードはウネへとそう照れながら言葉を返す。それを聞き、ウネはまた少し微笑んだ。

 

「それで……結局あなたは悩んでいた?」

 

「え? あ、それか……えっと……」

 

 ジュラードが返事に困っていると、ウネは「アドバイスは難しくても、話を聞くくらいなら出来るけど」と言う。


 正直人と接するのが得意じゃなさそうなウネが気遣って自分と関わろうとしてくれているのは嬉しいが、しかし悩みの原因を口に出すのはなんだか恥ずかしくて躊躇ってしまう。だってきっと自分が今もやもやして悩んでいる理由は、アレだし。


 そうしてジュラードが言おうか言うまいか悩んでいると、ウネはまたジュラードの心情を察してか「あ、言えないことなら言わなくてもいいと思う」と言った。

 

「あ、いや……その、なんと言うか……」

 

 ジュラードはどうしようかと迷い、一瞬ローズの方に視線を向ける。彼女はフェイリスと地図を確認中で、どうやらこっちには完全に意識が向いていない。それを確認した後、ジュラードはふと気になったようにウネにこう聞いた。

 

「……そういえば、あの時……」

 

「? なに?」


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