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神化論 after  作者: ユズリ
古代竜狩り
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古代竜狩り 2

「それに……私も禍憑きなの」

 

「え!?」

 

 リリンの告白に、レインの眼差しがまた一層大きくなる。彼はそうして驚いた後に、悲しそうな眼差しで「ごめん」と呟いた。だがリリンは笑顔で首を横に振り、「ううん、いいの」と彼に返事をする。

 

「今は私も……もしかしたら死んじゃうかもしれない。だけどね、私はお兄ちゃんが絶対に病気を治してくれるって信じてるの」

 

 リリンはレインと、そして自分自身を励ますように「大丈夫」ともう一度口にする。

 

「お兄ちゃんと……それにたくさんの人がお兄ちゃんに協力してくれてるの。皆すごい人ばっかりだから、きっと病気を治せるようにしてくれるよ!」

 

 リリンのその言葉と笑顔に、レインは励まされたのか、初めて彼女に笑顔を見せる。そうして彼も「うん」と小さく頷いた。

 

「お母さんと……リリンちゃんの病気、治るといいな……」

 

「うん、治るよ! 治る! だから……」

 

 だから早くお兄ちゃん、帰ってきて……と、そう願う言葉は飲み込んで、リリンは代わりに「泣いちゃだめだよ」とレインに告げた。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「きゅっきゅい~、きゅい~」

 

「あ、こらうさこ、危ないから勝手に店のものに触っちゃダメだ」

 

 商品棚をよじ登り、そこにある木箱の中の火薬弾に触ろうとしていたうさこを、ローズが慌てて止める。彼女はうさこを抱き上げて、「今は大人しくしていてくれ」と言って胸に抱えて抱きしめた。途端にいつもの定位置にいるマヤが、「ちょっと、うさこが近くて窮屈だわ……」と顔を顰めて呟く。

 

「あぁ、悪いマヤ。でもここでうさこを野放しにしとくと危険だから、フェイリスの買い物が終わるまで我慢してくれ」

 

「うぅ、仕方ないわね……しかし甘ったるい匂いするわよね、うさこって。妙に湿ってるし……一体なんの湿り気なのかしら」

 

「きゅいいぃ~」

 

「きゃああぁやめてようさこ! あんまこっち来ないで、アタシが圧死しちゃうわ!」

 

 

「……ローズたちは何を騒いでるんだろう」

 

 何やら騒がしいローズたちの様子を横目で気にして、ジュラードはそう独り言を呟く。しかし彼は直ぐにローズたちから視線を外し、正面に立つフェイリスの背中に視線を戻した。

 

 今ジュラードたちがいるのは、メリア・モリに近い町・セージリンという場所の武器屋だ。

 フェイリスの武器に必要な榴弾を購入するために、彼らは今ここにいるのだった。

 そしてジュラードの前では、そのフェイリスが厳つい風貌の店主の男と随分と熱心に話をしている。その店主というのが腕や肩や首などに様々な古傷を持つ筋肉質の大男で、浅黒い肌に鋭利な目付きのその風貌は、ある意味物凄く武器屋という場所がしっくりくる人物なようにジュラードには思えた。

 フェイリスはそんな店主の男とにこやかに言葉を交わしあい、やがて購入するものを決めて清算を行う。そうして彼女はまた重そうな木箱を抱えながら、「お待たせしました」とジュラードたちに向き直った。

 

「い、いや……そんなに待ってないが……」

 

「……それが購入したもの?」

 

 ジュラードが木箱を抱えるフェイリスを心配した様子で見ると、その隣でウネが興味深そうに木箱を指差して問う。直接見れるわけではない彼女だが、匂いか何かでフェイリスが買ったものを判断しているのだろうかと、ジュラードは彼女を横目で見ながら考えた。

 そしてウネに問われたフェイリスは、笑顔で「はい」と頷く。

 

「これで私の準備はばっちりです。ギガドラゴンは手ごわい相手ですけれども、戦力になれるかと思います」

 

 にっこりと妖艶に微笑んでそう答えるフェイリスに、ジュラードは一応「それ、俺が持つか?」と木箱を指指して聞く。しかしやはりフェイリスは「いいえ、大丈夫です」と笑顔で首を横に振った。

 

「あぁ、だろうな……」

 

 結局ここまで一人一番重い荷物を運びながらも、しかし全く疲れた様子は見せずにけろっとしているフェイリスなので、ジュラードは一応気を使いながらもそういう返事が返ってくるだろうなとは予想していた。

 

「フェイリスはローズみたいな不思議な力があるわけでもないのに、力持ちだと思う」

 

 ウネもフェイリスの異常な体力に驚いているのか、ジュラードの返事に続けてそうフェイリスに呟くように言う。それを聞き、フェイリスは「そうでしょうか?」と可笑しそうに笑った。

 

「でも、それならウネさんも……」

 

「私は魔族だし、その中でも体力と力はそこそこある種族だから。でもあなたは普通の人でしょう?」

 

 ウネが珍しく本気で不思議といった顔をすると、フェイリスは彼女に見つめられているのが理由なのか何なのかわからないが、少し顔を赤らめて「鍛えていましたから」と言った。

 

「おそらくそれが理由では無いかと」

 

「鍛えるって、具体的にはどういうふうに鍛えていたの?」

 

 ウネが興味をもったふうにそう問い、彼女はいつものクールな無表情のままこう続ける。

 

「岩を持って走ったり、あるいは岩をロープで体と繋げて川に潜ったりしたの?」

 

「おい、なんで岩がそんなに活躍するんだ……」

 

 体を鍛えるアイテムにやたら”岩”を押すウネに、ジュラードが思わず苦い顔で突っ込む。彼は「もっと鉄アレイとかあるだろう……」と続けたが、ぶっちゃけ彼のフォローも微妙ではあった。

 そんな二人の様子を控えめに笑って見ていたフェイリスは、少し考えてからウネの疑問にこう答える。

 

「でも、近い訓練はよくありましたね。重いものをもって何キロも走ったりしましたから」

 

「大変なんだな……」

 

「ふふ、でも私は鍛える事は苦じゃなかったのでそうは思いませんでしたけども」

 

 そう答えるフェイリスは無理してそんなことを言っているふうでもないので、ジュラードは『やっぱりこの人、なんか変わってるよな』としみじみ思った。

 

「ねぇ、買い物終わったの? なら早く行きましょうよ……冷たっ! もう、うさこ止めてって言ってるでしょー」

 

 ジュラードたちが話しているのを見てか、騒いでいたマヤがそちらに声をかける。彼女は悪戯するうさこに耳(?)で突付かれている最中のようで、さっさと店の外に出てローズにうさこを解放してもらいたいようだった。

 やがてマヤの要求に従い、一行は店を出る。そうして彼らはいよいよ、本来この場所へ来た目的へと向かうことにした。

 

 

 メリア・モリまではセージリンの町から列車を使い、短時間で行く事が出来る。ジュラードたちは町の駅から二駅ほど通過して、メリア・モリの荒野へ続く峡谷の前の駅で彼らは列車を下りた。

 

「えぇと……地図ではこの峡谷を越えた先に荒野が広がっているらしいな」

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