君を助けたいから 48
「もー腰痛くてダルいし、ベッドで休みたいもの……」
「……やっぱりレイリスって年寄りだね……ぎゃんっ!」
ボソッと後ろで呟いたエルミラに回し蹴りを叩き込み、犬のような悲鳴を上げて地面に転がった彼を無視して、イリスは皆に「早く宿探しに行こう」と言った。
エルミラたちがやって来た町は小規模な都市と同程度の賑わいと大きさの宿場町で、宿は何軒もある為に彼らは簡単に宿をとることが出来た。
そして宿が確保できると、それぞれに明日出発の準備と休息の時間となる。
「じゃあレイリス、ラプラと一緒の部屋なんだし、その問題人物……じゃないや、ラプラの面倒見るのお願いね!」
「……私は彼の保護者じゃないんだけど」
宿屋の廊下にてエルミラに最高の笑顔でラプラを押し付けられ、イリスは先ほどよりもなおぐったりした表情で彼を見返す。
しかしエルミラは気にしない笑顔で、「まぁまぁ、いいじゃない」とイリスの肩を叩きながら言った。
「ラプラもレイリスに面倒見てもらった方がいいよね?」
「はい!」
エルミラの問いに、ラプラが最高の笑顔で返事をする。そしてエルミラは「ほら見ろよ、ラプラのあの良い笑顔」とイリスに言った。
「やだ見たくない」
「まぁとにかくラプラはよろしく。あ、オレはマチルダと一緒に町行って買い物とかしとくからさ! オレってホント、気が利くいい奴ぅ!」
「自分で言うな」
イリスのツッコみは軽く無視して、エルミラは「レイリスは疲れてるなら、ゆっくり部屋でラプラの面倒見てて!」と言う。それにイリスは「そっちの方が絶対疲れるじゃん……嫌だ」と力無く言葉を返した。
「……嫌、だなんて……本当に、あなたは嘘つきな人だ」
白いシーツの上で組み敷かれ、そう呟きながら彼は静かに笑う。
無抵抗に、ただされるがままになる彼の言葉に、口に含んでいたものから口を離して顔を上げたもう一人が、淫らな笑みを浮かべながら「そうだよ」と言葉を返した。
「私は嘘つき。平気な顔で、穢れたこの口は嘘を吐く。でも……皆それを知ってるはずなのに騙される」
紅い唇に付いた白濁を舌で舐め取りながら、「なんでだろう、本当に不思議」と彼は呟く。そして彼は組み敷く男の顔に、妖艶な笑みを近づけた。
「あなたもだよ……ラプラ」
「えぇ……私は美しいあなたに騙される愚かな一人ですよ」
吐息が触れ合うほどに間近に迫った妖しき魔物の笑みに、ラプラも微笑んだままそう言葉を返した。
「本当に馬鹿な人。どうして抵抗しないの? そんなに私に殺されたい?」
「あなたになら……食らい尽くされて死んでしまいたいと思っています」
ラプラの言葉に、魔物は可笑しそうに静かに笑う。
「救いようの無い馬鹿だね、あなたって」
顔を離し、ラプラを冷めた色の眼差しで見下ろしながら彼は「いいよ」と言った。
「望みどおりに全部食べて……殺してあげる」
……本当に、それが望みなのだろうか。
「……っ……んんっ……」
熱い口の中で、もっと熱い熱が弾ける。それを恍惚とした表情で受け止め、彼は唇を離した。
目を細め、魔物はひどく卑猥に満足そうな笑みを向ける。
そして口の中に吐き出された欲を見せるように、今度は子どものような笑顔と共に口を開けた。
舌の上に乗せた白い濁りが唇の端から僅かに零れ落ち、それ以上零すまいとするように直ぐに口を閉ざしてそれを飲み込む。
「……っ……凄い……魔族が性欲強いのは知ってたけど……まだこんなに濃いの出るんだ」
無抵抗に横になるラプラの上に跨り、魔性の魔物は楽しげに笑いながら「美味し」と呟いた。
そんな淫魔を見つめながら、ラプラは口を開く。
「満足して……いただけました?」
「満足? 私が満足すると思う? ……知ってるでしょう、今の私は満足なんて出来ない」
そういうふうに変わっちゃったんだから……と、そう囁きながら彼に手を伸ばす。
「あはっ……ねぇ、また硬くなってきた。あなたこそ満足してないんじゃない?」
人としての理性より魔の本能を強く宿している蒼い瞳を細め、貪欲に性を貪る魔物はラプラに語りかけた。
「そうだよね、本当はこんなんじゃ満足出来ないんでしょう? だってあなたは私の中に入れたいんだもんね」
指先を絡め、静かな室内で暗示のように言葉を囁く。
「入れて、ぐちゃぐちゃに私を犯したいんでしょ? 穿たれ、乱暴な快楽に狂いながら悶える私を見たいんでしょう? 無抵抗に襲われてるふりしてるけど、本当は私を組強いて汚したいって思ってる……これだって本当は、私の中に出したいんだよね。あなたの支配欲が満たされるくらいに、溢れるほどたくさんナカに出したいって思ってる……そうでしょ?」
「……えぇ」
「正直だね。……あぁ、もしかして想像してる? これが私を犯す想像して、だからこんなにだらしなく溢しちゃってるんだ?」
「そうですよ……想像の中で何度私はあなたを汚したか……今だって、あなたを目の前にして私は……」
「……また大きくなってる」
新たな白濁に汚れた指先を口に含みながら、魔物は卑猥な言葉を重ねる。その眼差しは魔性であり、狂気だった。
「でも、ダ~メ。入れさせてはあげない。……あなたは私には逆らえないから、ずっとこのまま……私の下で可愛い声で喘いでればいいよ」
「……リ、ス」
「大丈夫、最後まで気持ちよくしてあげるよ……それでいいでしょう?」
「……レ、イリス……」
「キスだってたくさんしてあげる。あなたが望む事の半分を叶えてあげるよ……」
「愛してます、レイリス」
「……」
淫らな言葉が止まり、部屋は静寂に包まれる。その静寂の中でラプラはもう一度、愛を呟いた。