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神化論 after  作者: ユズリ
君を助けたいから
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君を助けたいから 29

 いつの間にかエルミラの銃を奪っていたらしいイリスが、黒い笑顔のままその銃口をエルミラに突きつけて脅す。

 

「ねぇ、一緒に行くよね? それとも一人であの世へ逝くのがお望み?」

 

「何その理不尽な二択! わかったよ、オレも行くよ! 行けばいいんでしょ!」

 

 エルミラが涙目でそう返事をすると、イリスはにっこりと満足そうに笑って「ありがと」と言う。だがエルミラはそんな礼より何より、自分の命を狙う銃を彼にさっさと下ろしてもらいたかった。

 

「もういいでしょ! 銃、それ、ヤメテ!」

 

「あぁ、はいはい」

 

「ってなんで自分の懐に仕舞うの! オレに返してよ!」

 

 さり気なく武器を奪ったままでいようとしたイリスにちゃんと武器を返してもらい、エルミラは不満げな様子で溜息を吐く。

 

「はぁ……オレってどうせ行っても荷物運びとかそんな役目でしょ? だから行きたくなかったのに……なんかホラー展開が予想されるしさぁ……」

 

「まぁあなたが雑用なのはその通りだけど……でも捕獲用の箱運ぶ雑用係が確保されたとしても、やっぱり何か乗り物が必要だね。エルミラ一人に罰ゲーム的なノリで箱持たせて歩かせるのも個人的には面白いけど……」

 

「オレは面白くない!」

 

 エルミラの叫びは無視して、イリスは「乗り物、何か無いのかな?」とフェリードたちに聞いた。

 

「乗り物ですか……そうだなぁ……大型のものじゃないとダメですよね……」

 

 フェリードがそう呟いて考えると、若い女性研究者が「あ、アレはどうです?」と声を上げた。

 

「あれ?」

 

「ほら、この前見たヒューメーン社のあの鉄の乗り物! なんて言ったかな……自走車でしたっけ?」

 

 女性が首を傾げながらそう言うと、別の中年研究者も「あぁ、あれか」と言った。

 

「ヒューメーンの息子が宣伝に来たアレだよな。なんか燃料で動くってやつ」

 

「そうそう。なんかパンフレットに大きいバージョンもあったし、あれ借りれば箱運ぶのも簡単じゃないですか?」

 

「でも借りれるのか?」

 

「うちのスポンサーだし、頼めば貸してくれるんじゃないかと思ったんですけど……」

 

 研究員たちの話から察するに、どうやらこの研究所は機械技術の最先端を行くヒューメーン機械技術総合研究社と何か繋がりがあるらしい。

 マナの研究を主にしているこの研究所と、機械技術を中心に製品を製造するヒューメーンとどう繋がるのかはエルミラたちにはよくわからなかったが、ヒューメーンもマナを動力に機械を動かすことも視野に入れてこの研究所に協力援助をしているのだろうか。

 

「へぇ、何? なんかいい乗り物あるの?」

 

 エルミラがそう問うと、フェリードがこう答えた。

 

「個人で運転できる乗り物を、うちの研究所のスポンサー会社が作ってるんですよ。まだ多くが試作段階のようですけど、でも荷物を運ぶ用とかも作っているらしくて、それを借りれたらいいんじゃないかって話をしているんです」

 

「おぉ、いいじゃん。ならそれ貸してもらおうよ」

 

 簡単に『借りよう』と言うエルミラに苦笑しつつ、フェリードは「じゃあ後で一応頼んでみます」と答える。

 

「正直どう運転するのかとか僕らはよく知らないんですけどね」

 

「だいじょーぶ、オレそういうのの運転得意だから。運転した事ないものでも大体わかる自信ある」

 

「……その自信の根拠は一体どこに……まぁいいや……」

 

 エルミラの返事を聞いたフェリードは、「とりあえずヒューメーンに問い合わせはしてみますね」と言った。

 

「じゃあ話は大体これで終わりかな?」

 

「そだね……後はそれぞれに準備とか、私はラプラと対象の魔物がどこら辺にならいるのか調べるよ」

 

 エルミラの言葉にイリスがそう返し、エルミラも「了解」と返事をする。そして彼らもジュラードの妹や、その他の”禍憑き”で苦しむ人々を治療する薬を作るために行動を始めた。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 グラスドールを探すこととなっているユーリたちが、山の中を探し歩いて早二日目。

 ドラゴン探しに難航するジュラードたちと同じく、彼らもまたとくに成果無く二日目も日暮れを迎えようとしていた。

 

 

「おいジューザス、これグラスドールじゃねぇか!?」

 

 そう言ってユーリがその辺で引っこ抜いてきた草をジューザスに見せる。そしてジューザスは普通に「ううん、それはただの雑草だね」と答えた。

 

「チッ……んなことわかってるよ。ったく、もっと気の利いた返ししろよな」

 

「え、君は私に一体何を求めてるんだい?」

 

 困惑するジューザスを無視して、ユーリは雑草をその辺に投げ捨てる。その後ろではアーリィとアゲハがこんな会話を繰り広げていた。

 

「すごいですよアーリィさん、これ山菜ですよ」

 

「さんさい? なにそれ」

 

「この草は食べれるんですよ、てんぷらにしたりとかで。美味しいんですよね~」

 

「なるほど、食材……じゃあこれは引き抜いておこう……」

 

「うん、それがいいですよ。さっきのきのことあわせて、またまた食材ゲットですよ!」

 

 すでにグラスドール探しに飽きたようで、二人は自由に食材を調達し始めている。そんな二人の会話を後ろで聞きながら、ユーリは日が落ち始めようとしている空を見上げて「あぁ、そろそろ日が暮れるな」と呟いた。

 

「そうだね。今日はもう山を下りて、町に戻った方がいいね」

 

「だな」

 

 ジューザスの言葉にユーリは頷き、彼は後ろを振り返る。そして山菜取りに夢中になるアーリィとアゲハにこう声をかけた。

 

「おい、二人とも、今日はもう戻るぜ。食いモン集めもほどほどにな」

 

「え? あ、うん……」

 

「わわっ、そうですか! すみません、うっかり山菜に夢中になってました……」

 

 ユーリに声をかけられ、アーリィたちは山菜集めを止めて彼らの元へと駆け寄る。そうして四人は今日も成果の無いまま、一旦山の麓の町に戻って体を休めることにした。

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