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神化論 after  作者: ユズリ
君を助けたいから
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君を助けたいから 22

「しかしジューザスの癖に美味しいとこもってきやがって……つーか凄いのはあいつ本人じゃなくて、あの武器だよな」

 

 ジューザスが聞いたら泣いてしまいそうな正論をユーリは呟きながら、武器を仕舞いつつそのジューザスの元へと向かう。その後ろからアーリィも小走りに、彼の元へと駆け寄った。

 

「はぁ……終わったかな。お疲れ様、メルキオール」

 

 魔物が動かなくなったのを確認し、ジューザスは疲労したような息を吐きつつ、そうメルキオールに声をかける。するとメルキオールはまた一瞬発光し、その姿をいつもと同じ白い片手剣の形状へと変えた。

 

「カスパールもね……ありがとう」

 

 天高く飛翔した際に、ほんの一瞬だけ力を貸してくれた『もう一つの武器』にも小さく礼を言い、ジューザスはメルキオールを鞘に仕舞う。すると彼の元に他の皆が集まってきた。

 

「すごいですね、ジューザスさん! かっこよかったですよ!」

 

「あ、ありがとう」

 

 アゲハの素直な賛辞に照れたようにそう言葉を返すジューザスに、ユーリが笑顔で「すげぇのは武器だけどな」と余計なことを言う。途端にジューザスの顔は苦いものに変わった。

 

「わ、わかってるよ……所詮私なんて大して強く無いんだよ……」

 

 しょんぼりする可哀想なジューザスをそのまま無視して、ユーリは倒れた魔物の方へ視線を向ける。

 

「しかしこいつ、なんだかんだでけっこー強かったなぁ」

 

 ユーリは「もうマジで動かないよな?」と呟きながら、魔物の亡骸へと近づいた。

 

「こいつ、やっぱマナの異変で最近出てきたっていう魔物なんかな……」

 

 そう問うようにユーリが言うと、いつの間にか彼の傍に立っていたアーリィが「かも」と頷く。

 

「でけぇし魔法効かねぇし……これから段々妙な魔物が増えてくのかなぁ」

 

「うん、かもね……それにこの魔物、私の魔法を一部だけどコピーして使ってきた。そういう能力もあったんだと思うよ」

 

 アーリィが神妙な面持ちで呟くと、ユーリは「え、あの魔法そういう理由のだったのか?!」と驚いたように返事をする。ジューザスたちも驚いたように目を丸くしていた。

 

「おそらくそう。だって魔法陣が私のと同じだったもの。……あ、魔法使うときに出る魔法陣って、魔法の種類によって違うけど、それを発動させる人毎にもちょっとずつ違うんだよ」

 

「へぇ……そうだったんか」

 

「うん。まぁ本当にちょっとしか違わないし、あれって一瞬で消えるから気づきにくいと思うけど。あ、でも例外で私とローズは全く同じだよ。元々私は”アリア”の持ってる魔法能力を継承しているから、ローズとは全く同じになるんだ」

 

「あぁ、なるほどね。君とローズ君は、同一人物が魔法を使用しているという扱いになるんだね」

 

 ジューザスの理解した声に、アーリィは「そうらしい」と頷く。そうして彼女は「とにかく、だからさっきの魔法陣が私のってわかったの」と言った。

 

「そうか……厄介な魔物だね。今後もあんな魔物と遭遇する可能性は高いから、ますます気をつけて行かないといけないね」

 

 ジューザスのその言葉に、彼らは各々に頷く。どうやらこの場所は彼らが思っていた以上に危険で厄介な場所のようだと、彼らはそれを認識した。

 

「うえー、めんどくせーなぁ。妙な魔物とか、いちいち相手してらんねぇっつの。俺らの目的はナントカって植物なんだしよぉ」

 

 思わずそう本音をぶっちゃけたユーリに、アーリィがこう声をかける。

 

「でも考え方によっては、ここがそういう異常な魔物が出没する場所ってとこは、異質なマナが濃い場所ってことだよね? 異質な部分が怪しいけど、でもマナが濃いことにはかわりないから、グラスドールが手に入る可能性はあるってことだよ」

 

「ま、彼女の言うとおりかもね。そういう考え方も出来る」

 

 前向きに考えようとする発言に、ユーリもそういう考えた方でいた方がいいことは確かなので頷く。

 そして彼らは「それじゃ、先に進みましょう!」と言うアゲハの元気な声を合図に、グラスドールを求めて先へと進むことを再開させた。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「ダメ。ぜんっぜんいない!」

 

 広い荒野に虚しく響き渡る、そんな叫びの声。

 

「マヤ、大きい声出すと疲れるぞ。無駄に体力消耗するのはよくない」

 

 だいぶ疲れた様子のローズが、たった今叫んだ声の主に対してそう指摘する。するとマヤは「だって」と、頬を膨らませながらこう言った。

 

「叫びたくもなるわよ。どこにも古代竜なんていないんだもん」

 

「……そう簡単に見つかるものじゃないだろう」

 

 そうジュラードに冷静に突っ込まれ、マヤはますます不機嫌そうな顔をした。

 

 今ジュラードたちは、相変わらず旧時代から生きるヴォ・ルシェを求めて荒野をさ迷っていた。

 捜索から数日経過したが、一向に目的の長命なドラゴンを見かける事は無い。途中何度か周辺の村や町に休息を兼ねて情報収集を行いに言ったりもしたが、しかし有力な情報は手に入らなかった。

 そんな現状にいい加減痺れを切らしたのか、マヤがこんな提案を皆に言う。

 

「もうここは居ないわよ。他のとこ探しに行かない?」

 

 そのマヤのあっさりとした決断に、皆はそれぞれの反応を返した。

 

「いや……まだ東の方とか行ってないし、私はそっちを見に行くまでくらいはここの辺りを探した方がいいと思うが……」

 

「俺もそう思う。いざ移動して、実はここに居たなんてことにはなりたくないし……」

 

「きゅいいぃーきゅうぅ、きゅうっ」

 

「私はあなたたちの判断に従ってついて行く」

 

 そんなわけでうさこを含めた皆の意見を総合すると、多数決で『もう少しこの辺を探してみる』ということになる。

 マヤは不満そうな顔をしたが、しかしローズやジュラードの言う事にも一理あるので、彼女は「そんじゃ東の方探しに行ったらもうここは諦めましょ」と言った。

 

「もう、なによ。うさこまでローズたちの味方しちゃってー」

 

「きゅいいぃ~」

 

 もはや誰もうさこと会話出来る事実について突っ込む者はいない。そんな彼らはその後の会話で、今日ももうそろそろ日が暮れそうだと言う事で、近くの宿場町で体を休めるということになった。


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