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神化論 after  作者: ユズリ
君を助けたいから
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君を助けたいから 12

「あのさ……なんと言うか……あなたも大変そうだし、そういう時はその……」

 

「?」

 

 何かはっきりとしない口ぶりのイリスに、エルミラは不思議そうな眼差しを向ける。イリスはどこか照れくささに言葉を迷っているようで、彼は言葉を続ける代わりにエルミラから視線を逸らした。

 

「誰かに頼ってもいいんじゃないかな? ほら、例えば……ジューザスとかさ」

 

 イリスのその言葉を聞いて、エルミラはしばらく考えるように疑問の眼差しをイリスに向けていたが、やがて彼ははっとした様子でイリスを見返す。そして彼は楽しそうな笑みでイリスにこう言葉を返した。

 

「レイリス、オレのこと心配してくれてるの~?」

 

「……今の私の言葉が、心配以外の言葉に聞える?」

 

 エルミラの問いを素直に肯定するのが何か気恥ずかしくて、イリスはそんな返事を不機嫌そうな表情と共に返す。そんなイリスの様子を見て、エルミラはなにか楽しそうにニヤニヤといやらしい笑みを浮かべた。

 

「……なにそのムカツクアホ面。蹴り倒したいんだけど」

 

「アホ面ってひでぇ。でも意外、レイリスが心配してくれてんだ~へ~」

 

「……」

 

 嬉しい気持ちとからかいが混じった様子のエルミラを見て、イリスは不機嫌そうな様子のまま顔を背ける。そうして一瞬でもエルミラを心配した自分を後悔したイリスに、エルミラは少し真面目な顔になってこう声をかけた。

 

「……うん、ありがと。真面目な話、心配してくれてんのは素直にうれしーよ、オレ」

 

 本人の言うとおりの素直な感謝の言葉を背中に聞いて、イリスは背中を向けたまま僅かに顔を上げる。

 

「そだね。ほんとーに困った時はさ、皆んとこ頼るよ。って、今もユーリとかに迷惑かけちゃってる状況だけどね」

 

 普段はすぐに人に頼る癖に、本当に困った時に限って彼は自分でどうにかしようとするのだと、そうイリスはエルミラの性格を理解している。

 あの場所にいた者たちは皆、それぞれに違うようで本質がよく似ている者たちが集まっていた。だから本当に困った時にこそ他人に頼れないエルミラのこともわかっているのだ。

 

「嘘つき」

 

 理解しているから、そうイリスはエルミラに言葉を返す。その言葉にエルミラはただ苦笑を返した。

 そうしてエルミラは直ぐに表情を変え、いつもの能天気に見える笑顔となってイリスの後姿に明るく声をかける。

 

「あ、でもさぁ、ホントだね~。ヒスが言ってたこと、あながち嘘ってわけでもなかったんだね~。だってあのレイリスが人の心配してくれてんだも~ん」

 

「はぁ? 私は今も昔も他人の心配する優しい心の持ち主なんだけど」

 

「えー、そうだっけ? っていうかなんでオレの顔見てくれないの? 照れてる? ねぇ、照れてるの~?」

 

「うっざ! 近づかないでくれる!?」

 

「あ、やっぱ照れてるんだ~へえぇ~」

 

「……やっぱ助けなきゃよかった。ホントうざいっ」

 

 そんな会話をしながらぎゃいぎゃい騒ぐエルミラとイリスの姿を、ラプラは若干嫉妬の眼差しで見つめ、しかし彼は何か羨ましそうな感情も覗かせながら静かに彼らを見守っていた。

 

「あぁもう、ホントに引っ付かないでくれる?! 服伸びる! っていうか、あんたのせいで列車乗り遅れたんだからね!」

 

「え、そうなの!」

 

「そう! ニヤニヤ馬鹿みたいに笑ってないで反省してほしいんだけど」

 

「えー……だって仕方ないじゃん。ってかオレのせいっていうより、あの男のせいじゃん~」

 

「まぁ反省はともかくとして、早く次の列車に乗れるように戻った方がいいことは確かですよ」

 

 ラプラのその冷静な意見に、エルミラとイリスが揃って「そうだね」と返事をする。そうして彼らは改めてフェリードの所属する研究所へ向かう為に、次の列車に乗り遅れないよう駅へと足早に向かった。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 光の先に見た光景は、また見知らぬものだった。

 ずっと、長く山の中の孤児院という閉鎖的な場所で暮らしていた自分にとって、こうして今見る世界の光景の多くが新しく新鮮に思える。

 見知らぬ土地に自分の足で立ち、改めて彼はこの世界は広いのだということを感じていた。

 

 

「着いたわ。キエラ荒野はこの辺りのはず」

 

 乾いた風景が延々と続く荒野に立ちながら、ジュラードたちをここまで転送したウネがそう言葉を発する。彼女の紫に輝く瞳には、本人には見えぬ赤茶色の大地の景色が映っていた。

 

「本当に荒野って感じだな……緑が見えない」

 

 ジュラードの隣に立っていたローズが、やはり目の前の景色をその瞳に映しながらそう呟く。その彼女の言葉に、ジュラードも地平線まで続く赤い大地を見つめながら「あぁ」と返事を返した。

 

「さて、どうしましょうか。早速ドラゴン探しに行く?」

 

 ローズの胸元でそうマヤが皆に問うように発言し、ローズの頭の上でうさこが怯えた様子で「きゅうぅ」と鳴く。ジュラードは「出来れば今すぐ捜しに行きたい」と、マヤの問いかけに答えるように言った。

 

「そうだな……ここにいるかどうかもわからないのだから、のんびりと行動してられないもんな」

 

「じゃ、とりあえずその辺歩いて捜してみましょうか」

 

 ローズがジュラードの言葉に同意し、マヤも異論は無いようでそう言う。そしてマヤは「ウネもそれでいい?」と、ウネに問いを向けた。

 

「私はかまわない。あなたたちの行動に従うわ」

 

 ウネがそう返事をすると、マヤは「決まりね」と呟く。そうしてジュラードたちは目の前に続く乾いた凹凸の続く大地を、古代竜を求めて歩き始めた。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 一方ジュラードたちとは別行動となったユーリたちは、今現在もう既にアサド大陸からボーダ大陸に場所を移動していた。

 ジュラードたちが移動する前にウネの転送術でボーダ大陸のユーリたちが店を構えるアル・アジフに送ってもらった彼らは、ここから大陸中央に連なる山脈の付近に移動してグラスドールを捜しに行く予定となっていた。

 


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