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神化論 after  作者: ユズリ
君を助けたいから
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君を助けたいから 4

 ジューザスと約束の時間まで暇を潰さなきゃいけなくなったジュラードたちは、とりあえずそれぞれに自由時間ということにして行動することにする。

 だが自由と言っても時間をただ無駄に使うわけにはいかないので、彼らはこの時間を利用してまたこれから始まる旅に備えることにしていた。

 

 

「じゃ、私とマヤとユーリで資金調達の為の素材換金と、みんなの武器のメンテの為に武器屋へ行って」

 

 ローズがそう笑顔で言い。

 

「私とウネさんは皆さんの食料を購入へ!」

 

 アゲハが元気よくローズの言葉に続けてそう発言する。そして。

 

「……俺は彼女と一緒なのか?」

 

 不安げな表情で隣に立っているアーリィを見ながら、ジュラードがそう呟く。ちなみに彼とアーリィとうさこは、今回の自由行動内で道具を調達する係となっていた。

 

「あぁ。だってジュラードやユーリはあまりこの街、詳しくないだろ? アーリィに道案内してもらって、道具の調達を頼むな」

 

「……」

 

 ジュラードたちが以前に学会建物に不法侵入した時に、この街を散策していたローズやウネやアーリィはそれぞれに道案内役として行動することと決まった。それでジュラードの道案内役のパートナーはアーリィなのだが……。

 

「……」

 

「……」

 

 無言で隣を見れば、マイペースにあくびをするアーリィの姿。

 そう言えば自分は今まで、彼女ともまともな会話をあまりしていないように思える。というか、この人物が何を考えて行動しているのかジュラードにはさっぱり予想がつかない。だからどう接したらいいのか……ウネより難易度が高そうだと、そう彼は真面目に思った。

 

「……大丈夫かな」

 

 思わずそう不安を呟くと、ローズと共にメンテナンスの為に皆の武器を持ったユーリが彼に声をかけた。

 

「おぉジュラード、アーリィのことよろしく頼むな」

 

「え、あ、あぁ……」

 

 よろしくと笑顔で言われても、正直どうよろしくすればいいのか彼にはよくわからない。わからないままジュラードは頷き、そして再び不安げな表情でアーリィを見た。そして彼の視線を受けたアーリィは、顔をあげて彼を見返す。

 

「ねぇジュラード……なんか今私、モロに会いたい気分」

 

「……そう、か」

 

 突拍子も無いアーリィの自由な発言に、ジュラードの心はますます不安に陥った。

 

 

 

 

 

 そんなわけでアーリィと二人きり……いや、うさこも含めれば二人と一匹にされてしまったジュラードは、妙に緊張しながら街の中を彼女と共に歩いていた。

 

(……どういう会話をすればいいんだろう)

 

 ローズやマヤ、ユーリなどとはすっかり自然に会話出来るようになったジュラードだが、アーリィは普段皆といる時は無口なせいかどういう会話をすればいいのか検討もつかない。

 そしてジュラードが無言で悩みながら困っている隣で、アーリィはうさこを胸に抱えながらきょろきょろと周囲を見渡していた。

 

「モロ……モロ……いない……」

 

 明らかに二人の目的である”道具屋”を探していないだろう独り言を呟くアーリィに気づき、ジュラードは不安を通り越して何か怖くさえ感じるようになる。

 自分は彼女と時間まで上手くやっていけるのだろうか……。

 

「……そういえばジュラード」

 

「は、はい!」

 

 急に話し掛けられて、ジュラードは緊張してか妙な返事をアーリィに返す。しかしアーリィは特にそれを疑問には思わず、こんなことを彼に聞いた。

 

「お金はもらったの?」

 

「え? あ、あぁ……それは、一応……」

 

 アーリィに問われ、ジュラードは服のポケットから財布を取り出す。それを確認し、アーリィは「そう」と呟いてまた視線を周囲へ移した。

 ローズからお金を受け取って いたことも認識していなかったアーリィにますます不安を感じつつ、ジュラードは彼女と歩きながら道具屋を探すことにする。


「道具屋……どこだろうな……」

 

 そう独り言のように呟きながら、ジュラードは辺りを見渡す。だが周囲には様々な店や建物が並べど、彼らが目的とする店らしきものはなかなか見当たらなかった。

 

「……そうだアーリィ、街の中について俺より詳しいんだろう?」

 

 ジュラードがそうアーリィに声をかけると、アーリィは頼りにならなそうな顔で彼を見返す。

 

「道具屋、どこにあるか知らないか?」

 

「……知らない」

 

 案の定というかなんと言うか、予想通りの返事をアーリィから受けて、ジュラードは小さく溜息を吐いた。

 『知らない』という返事は別にいいのだが、しかし明らかにアーリィは道案内として頼れ無さそうだし、捜す気もあまり無さそうな様子だ。彼女とコンビを組んで店を捜す羽目になった自分は明らかに”ハズレ”を引いたと、ジュラードは密かにそんなことを心の中で思った。

 

(仕方ない……自力で捜そう……)

 

 ジュラードはそう思い、何処か重い足取りで街の中を進む。そうして彼がとりあえず勘で人ごみの中を進み始めると、しばらくして「待って」と言うアーリィの声と共に上着の裾を後ろから引っ張られた。

 

「っ……な、なんだ?」

 

 驚いたジュラードが後ろを振り向くと、相変わらず表情の変化に乏しいアーリィがじっと自分を見上げている。

 

「?」

 

 アーリィの謎の視線にジュラードが困惑した視線を返すと、やがてアーリィが無表情のままこう口を開いた。

 

「子どもが勝手に一人で行くと危ない」

 

「……へ?」

 

 一瞬何を言われたかわけがわからず、ジュラードは怪訝な眼差しでアーリィを見返す。するとアーリィはやはり同じ意味の言葉を彼に繰り返した。

 

「子どもがよく知らない場所を勝手に歩くと危険だと思う」

 

「……その子どもっていうのは俺のことなのか?」

 

 ジュラードがそう問うと、アーリィは真顔で頷く。どうにもふざけている様子では無いとわかったジュラードだが、しかし彼女のこの発言の意味が彼にはさっぱりわからなかった。

 

「いや、勝手に何処か行こうとしたわけじゃないし……そもそも俺は子どもじゃないし」

 

「ローズたちがジュラードは未成年だって言ってた。それって子どもってことでしょ? 」

 

「う……いや、それは……ど、どうなんだろ……」

 

 確かにジュラードは世間一般の多くの国ではまだ未成年とされる歳だが、だからって”子ども”と称されるほどに幼いわけでもないと思っている。いや、確実にそうだろう。

 だが大真面目に自分を心配してくるアーリィを見ると、ジュラードも思わず反応に困ってしまう。子どもではないと思うが、大人と主張するのも違うわけだし……。

 

「えーっと……」

 

「とにかく一緒に行かないとダメだから。私はもう大人だから大丈夫、ちゃんと保護者やれるから」

 

「ほ、保護者?」

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