救済の方法 45
翌日、ジュラードとローズはウネの転送で再びジューザスたちの元へ戻る事にする。
そしてここから”禍憑き”という病を治す為に協力することとなった者たちは、それぞれに出来ることをする為に行動することとなった。
「それじゃオレはフェリードんたちのとこに戻って交渉してみるねー」
エルミラはそうローズたちに言い、ラプラも彼と共にマナ水入手の為に研究所へ向かうこととなる。それともう一人。
「……なんで私まで……」
急遽エルミラたちと共に研究所に行くこととなり、イリスがげっそりとした顔でそう呟く。ちなみに彼が共に行く理由はただ一つ、ラプラが『イリスも一緒じゃないとヤダ』と駄々をこねた為だ。そりゃ彼もげっそりするというものである。
「いいじゃありませんか、イリス。二人で頑張りましょう!」
朝から疲れた顔をしているイリスに、反対に元気な笑顔のラプラがそう声をかける。だがイリスは首を立てには振れなかった。
「ちょっとラプラ、頑張るならオレと一緒に頑張ってよ。このエルミラさんとさぁ」
「そうだよラプラ、エルミラと頑張りなよ。私は何もお手伝い出来なさそうだし。むしろいないほうが邪魔にならなくていいとも思うけど……」
エルミラとイリスの言葉に、ラプラは「イリスは傍にいてくれるだけでいいんですっ」と強く主張する。そしてイリスはもう抵抗するのを諦めた。
「はぁ……いいやもう。さっさとナントカ水作って終わりにしよう……リリンのことも早く助けたいし」
「ちょっとレイリス、そのなにか胡散臭い水っぽい呼び方やめてよ。その呼び方だと一気に何か胡散臭いアレな品物っぽく聞えてヤダよ」
そういうわけでエルミラとラプラとイリスは、アトラメノクのマナ水を作り手に入れる為にジュラードたちと別行動となった。
そしてレイチェルたちはというと、もうしばらくユーリたちの不在の間に店番を行うということで話が決まる。
「おみせはまかせてよ、おねえちゃん!」
「うん。ミレイ、レイチェル、お願い」
「はい。僕ももうすっかり馴れたので大丈夫ですよ」
「頼むぜ、二人とも」
ユーリとアーリィも、まだしばらくジュラードの為にローズたちと行動すると決めた。その為、その間の店の事はまたレイチェルたちに任せることにしたのだ。
ユーリたちはこの後ジュラードたちと共に、やはりジューザスの方の状況を確認する為に戻る予定となっている。
そして残り一人の今後の予定はと言うと。
「私もジュラード君たちについてきます!」
お手伝いを張り切るアゲハは、そう元気に手を上げながら宣言する。
彼女のこの主張に、特に断る理由もないジュラードたちは了解の意を示した。
「それじゃ確認すると、私たちはジューザスの元に戻って材料の手がかりは見つかったかを確認しに行って」
これからの行動の予定を確認し、ローズが皆を見渡しながらそう口を開く。
「オレはラプラとレイリスと研究所へ! あ、研究所はここからそう遠くない場所だからね。何かあったらこれ連絡先だから、どこか電話あるとこから電話してみてね」
エルミラはそう言うと、事前にメモしていたらしい紙をローズに手渡す。そこには研究所の名前と住所、そして最近は一般にも徐々に普及が始まってきた電話の番号が書かれていた。
「電話か……」
ボーダ大陸を中心に大きい公共施設にならば普及は進んでいる電話だが、正直一般にはまだまだ普及が進んでいない代物なので、ローズは少し迷う表情でメモをエルミラから受け取った。
「でも電話って確か同じ国間じゃなきゃ連絡できないじゃない。アタシたち、今からアサド大陸行っちゃうんだけど」
国どころか大陸を移動してしまうので、あまり電話の番号は意味を成さないような……そんなことをマヤに指摘され、エルミラは笑いながら「一応だよ、一応」と返事した。
「無いよりはあった方がいいでしょ? この店戻ってきた時とかにでも使ってよ」
「……そうだな、ありがとう」
エルミラの言葉にローズは頷き、彼女はエルミラたちを見ながら「それじゃ、よろしく頼むな」と言った。
「うん、オレらも頑張るよ。出来る限りね。まぁこのオレのことだから問題ないと思うけどね」
本気なのか場を和ませようと冗談を言ってるのか微妙だが、エルミラは胸を張りながらそうローズに返事を返す。
普段はおちゃらけていてやや頼りない感じのする青年ではあるが、しかし今は願望も含まれているかもしれないが、彼の言葉は信じれるものだとジュラードは感じた。
「……頼む。信じてる、からな……」
自然とそんな言葉をエルミラに対して呟いていたジュラードに、エルミラは少し驚いた顔を見せてから笑顔で頷く。
「うん。ジュラードたちも頑張れよー」
「あぁ」
エルミラに励まされ、ジュラードは「勿論」と頼もしい返事を自然に彼に返した。
「それじゃそういうことだな。レイチェルたちはまた店のことを頼んで……」
確認が終わり、ローズはウネへ視線を向ける。彼女は先ほどまでは店の工房の一角で転送の準備を行っていたが、今はそれが終わったようで彼女の視線に同じく眼差しを返した。
「ウネ、そっちの準備はいいだろうか?」
ローズがそう問うと、ウネは頷く。
「大丈夫。いつでも転送できる」
「そうか。……じゃあ皆、戻るか」
ローズがそう呼びかけ、ジュラードたちも各々頷き了解の意思を示す。
そうして彼らはイリスやエルミラ、レイチェルたちと別れて、ミレイの元気な「いってらっしゃい」と言う声を聞きながら再び転送して店を離れた。
【救済の方法・了】