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神化論 after  作者: ユズリ
救済の方法
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救済の方法 37

「それで、どうですか? 私に手伝えることは?」

 

 アゲハにキラキラと期待に満ちた眼差しを向けられたマヤは、こちらも困惑した様子で「そ、そうね……」と呟く。

 

「とりあえず考えとくわ。多分、手伝ってくれるなら何かしら頼むことにはなると思う」

 

「そうですか! はい、じゃあお待ちしてますね」

 

 こうして本人の希望により、アゲハもまたジュラードたちを手伝う事となった。

 

「しかしこんなに大勢の人が手伝ってくれるなら、やっぱり材料集めは役割分担を決めてそれぞれに行った方が効率がいいよな」

 

「それは勿論、そうよね」

 

 ローズの発言にマヤは頷き、「でも役割分担の前に、ジューザスたちが手がかりを探してくれてる他の材料の情報を待たないとね」と言う。それを聞き、エルミラやレイチェルたちが驚いた顔をした。

 

「え、なに? ジューザス? あの人まで関わってんの?」

 

「ジューザスさんとも連携してたんだね、ローズさんたち」

 

 そう言って驚くエルミラたち同様にアゲハも驚いている様子で、ローズはそんな彼らに「偶然会って、そういうことになったんだ」と答えた。

 

「本当に彼に会ったのは偶然なんだが、その……協力してもらってるんだ」

 

「巻き込んだとも言うよな」

 

 ユーリの正しいツッコみにローズは苦笑いし、ジュラードはエルミラたちの様子から「あの人とお前たちは知り合いなんだな」とエルミラたちに問う。エルミラは「そーだよ」と頷いた。

 

「前一緒に働いてたとこのトップがジューザスなんだよ。で、オレやレイチェルやアゲハはそこに所属してたわけ」

 

 答え、エルミラはイリスに視線を向ける。

 

「あ、あとレイリスもね。だよねー」

 

「ユーリもだよ」

 

 エルミラに声をかけられたイリスは、どこか不機嫌そうにそう返事を返す。そんな彼はユーリに言われたとおり、おたまを駆使して頑張ってお鍋を食べようとしていた。

 

「あぁ、そういえば先生とユーリはそうだって聞いたな……それで、エルミラたちも同じとこで働いていたのか」

 

 ユーリはあまり話したがらなかった話だが、それを話すエルミラたちはとくにそんな素振りを見せないので、ジュラードは軽い気持ちで「どういうことをしてたんだ?」と聞く。するとそれぞれから不可解な返答が返ってきた。

 

「困った人を助ける、人助けのお仕事をするところだったよ!」

 

「んとねー……週に一回真面目に働けばいいから、あとは自由にやってかまわないっていう適当な組織だったね」

 

「僕は基本的にエル兄のお手伝いがお仕事だったけど、他の人は魔物退治からよくわかんないことまで色々やってたみたい」

 

 アゲハ、エルミラ、レイチェルがそれぞれにそう答え、ジュラードは不可解そうな表情を浮かべる。そしてさらにユーリとイリスがこう言い、ますますジュラードを困惑させた。

 

「胡散臭い組織だろ、あんなん。人助けとかありえねーし」

 

「いや、まぁアゲハの言う事もユーリの言う事もどっちも間違ってないんだよね。近年は本当に人助けも多くしてたし。胡散臭い事は私も否定しないけど」

 

 一体どんなとこで彼らは働いていたのか……謎は深まるばかりだったが、しかし雰囲気的にジュラードはそれ以上は深くは追求出来なかった。

 

「とにかく、今は一旦ジューザスたちの情報を待ちましょう。あるいはそっちに時間がかかりそうだったら、アタシたちで動けるところから動いて材料入手していくか、ね」

 

 マヤの言葉にジュラードたちは各々に頷く。そうして彼らの賑やかな食事は続いた。

 

 

 

 

 食事が終わって片付けもひと段落すると、またこの問題が勃発する。

 

 

「嫌だからな!」

 

「いやローズ、落ち着いてよ」

 

 珍しく物凄く不機嫌そうな顔で叫ぶローズと、苦笑を浮かべたマヤがなにやら揉めている。一体何事だろうと、食事の片付けを手伝い終えたジュラードが、彼女らに近づいて声をかけた。

 

「どうしたんだ? お前たちが喧嘩なんて珍しい」

 

 そう言いながらジュラードが近づくと、ローズが不機嫌そうな表情のままで「喧嘩じゃない」と返す。そのローズの態度に、ジュラードは思わず「す、すまん……」と謝った。

 

「あ、いや……こっちこそ悪かった。別にお前に怒ってるわけじゃないんだ」

  

 ローズは少し冷静になった様子でそう言い、そして彼女は溜息を吐きながらこう続けた。

 

「だってマヤが『また皆で風呂屋に行くのかしら』とか言うから……」

 

「『かしら?』としか言ってないじゃない。聞いただけでしょ。行くとは言ってないし」

 

 呆れた様子でそう返すマヤだが、ローズにはもう『皆でお風呂』という単語は完全にトラウマとなっているのだ。その一言を聞くだけで、彼女は恐怖のあまり表情を引きつらせた。

 

「皆でお風呂行くって決まったわけじゃないのに、ローズってば怯えすぎよ」

 

「うわああぁぁ! だって、前回も前々回も……う、うわあぁぁっ!」

 

「ろ、ローズ! どうした、落ち着け!」

 

 発狂しそうなくらい怯えて震えだしたローズの様子に、ジュラードは本気で彼女を心配する。何か風呂に関して前回、前々回と相当恐ろしい目にあったらしい。

 

「と、とにかくジュラード、助けてくれ! 今日は『皆で風呂』なんて恐ろしいことにならないよう、何とかしてくれないか?!」

 

「えええぇ?」

 

 ローズに真剣な表情でわけのわからないことを頼まれ、ジュラードはひどく困惑する。だが本当に真剣な表情で頼み込むローズの姿を見ると、彼女を無視は出来ないし……。

 

「頼む、ジュラード!」

 

「と、言われても……」

 

 どうしようかと悩んだジュラードは、とりあえずマヤに「皆で風呂入るの止めたらどうだ?」と言ってみる。だがマヤは「アタシに言われてもね」と返した。

 

「ユーリに言ってみれば? ユーリが家の風呂沸かしてくれたら、ローズの心配は解決するはずだし」

 

「あぁ、なるほど。そうだな」

 

 マヤのアドバイスを受け、ジュラードは納得したように頷く。そして彼は頼まれてしまった手前何とかしないといけないと思い、マヤのアドバイスどおりユーリに交渉しに向かった。

 

 

 

 ジュラードがユーリを探していると、彼は工房で見つかる。

 なにやら工房に寝るスペースを作成中の彼に、ジュラードは「ユーリ、ちょっといいか?」と声をかけた。ちなみにジュラードの後ろには、ローズとマヤもついてきている。それならローズ本人が交渉すればいいものだが、あいにくジュラードはそこには気づかなかった。

 

「ん? なんだ? お前もこの大改装、手伝ってくれんのか?」

 

「あ、いや……そうじゃなくてだな……」

 

 ジュラードはどう言えばいいかと数秒悩み、だが結局単刀直入に聞くしかないなと気づいて、 ユーリにこう聞いた。

 

「今日、風呂はどうするんだ?」

 

「え? 風呂屋行けばいいんじゃね?」


 ユーリのさも当然のような返答に、ジュラードの背後でローズが「それはダメだ!」と叫ぶ。

 『もう自分が聞く必要無いじゃないか』と思いながら、ジュラードは背後を振り返ってローズを見た。そしてユーリも怪訝そうな顔で、ローズの方を見る。

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