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神化論 after  作者: ユズリ
救済の方法
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救済の方法 28

「あ、じゃあジュラードにはエル兄の面倒みててもらっていいかな?」

 

「え?」

 

 レイチェルのまさかの提案にジュラードは驚き、そしてエルミラは「ちょっと何それ!」とまた騒ぎ出す。

 

「オレの面倒って何?! オレ、何か皆に面倒かける存在?!」

 

「うん。っていうか自覚なかったの? まさかそんなわけないよね?」

 

 レイチェルに厳しくそう指摘され、エルミラは数秒の沈黙の後「と、時々しか迷惑かけないじゃん」と言い訳した。

 

「時々、ねぇ……」

 

「なんだよー、レイチェルの意地悪! お前、オレにだけ厳しすぎだぞ!」

 

 こうして騒いでる時点でもうすでに店的に迷惑なのだが、エルミラはそんなことに気づかないまま涙目でそう叫ぶ。レイチェルは小さく溜息を吐き、ジュラードに向き直った。

 

「とにかくお願いね、ジュラード」

 

「え? あ、あぁ……」

 

 頼まれてしまったら断る事は出来ず、ジュラードは頷く。だがぶっちゃけジュラードにとってエルミラはそんなに親しい相手でも無いので、内心で彼は『どう接すればいいんだ』と悩んだ。

 

「……」

 

 恐る恐るジュラードがまた後ろを振り返ると、悲しそうな顔でこちらを見つめるエルミラと目が合う。エルミラはジュラードと目が合った瞬間、また笑顔になって今度は手を振ってきた。

 

「!?」

 

「きゅいいぃ~」

 

 どう反応したらいいのかわからずに硬直するジュラードの代わりに、頭の上のうさこがエルミラに手を振り返す。それを見たエルミラは、「あ、かわいいー」とうさこの反応に喜んでいた。

 

「それじゃ決まりだな。ジュラードはエルミラの面倒みるってことで」

 

 ユーリはそう言うと、ローズとマヤに向き直る。

 

「んじゃ早速俺、仕事したいんだけどいいよな?」

 

「そうね。じゃあアタシたちもアーリィの手伝いをしましょう」

 

 ユーリの言葉を聞いて、マヤがそう返事をする。そうしてその後は各々の行動の時間となった。

 

 

 

 

 

 これからの行動が決まったあと、レイチェルにエルミラの面倒を見るように頼まれてしまったジュラードは、とりあえずエルミラの元へと向かうことにする。

 最近は人付き合いもそれなりにこなせるようになってきたと自分では思うジュラードだが、色々と自由奔放で何を考えてるのかよくわからないエルミラとどう今度の時間を過ごせばいいのか……と、彼は内心で悩みながらエルミラの傍に立った。

 

「あの……」

 

「あー、ジュラード、なんかごめんね。オレの面倒みろとかさ、レイチェルに妙なこと頼まれちゃって」

 

 エルミラはそう苦笑しながらジュラードに言い、ジュラードはどう反応していいのか迷う様子で曖昧に頷く。エルミラはそんな彼の反応に笑いながら立ち上がった。

 エルミラは立ち上がりながら、ジュラードにこんなことを言う。

 

「あ、そーだ。ここに居てもレイチェルに『邪魔』って言われるだけだろうからさ、家ん中にいようぜ」

 

「勝手に入ってていい のか?」

 

「え、いいんじゃないかな? とりあえず行こう! 中にビスケットも置いてきちゃったし」

 

「……いいのかな」

 

 不安になるジュラードだったが、エルミラの押しに負けて結局家の中に入ることとなった。

 

 

 ユーリたちの店は店舗から繋がって建物の奥へ進むと、居住スペースとなる。その居住のスペースにジュラードがエルミラと共に向かうと、中にはいつの間にといった様子ですでにイリスとラプラがくつろいでいた。

 

「あれ、結局あなたたちも休んでることにしたの?」

 

 勝手にお茶を用意しながら居間でくつろいでいるイリスにそう声をかけられ、ジュラードはどう答えたらいいのかわからない様子でエルミラを見る。エルミラは「というか、レイチェルに怒られないように邪魔にならないとこに避難してきた」と答えた。

 

「それは賢明な判断だね。あ、お茶いる?」

 

 イリスがそう自然に問いかけると、エルミラもエルミラでナチュラルに「お茶よりコーヒーがいい、オレ」と答える。ジュラードは『と言うか、二人とも他人の家だということ忘れてないか?』と心配になったが、それを口に出して言う勇気はなかった。

 

「コーヒー? あったかな? 探すの面倒だな……」

 

 エルミラの我侭なリクエストに文句を言いながら台所へとイリスが向かうと、部屋にはジュラードとエルミラとうさこ、それとラプラが残される。そしてジュラードは気づいた。

 

(この二人、すごく面倒を発生させそうな二人じゃないか!)

 

 エルミラも面倒な人物だと先ほど理解したジュラードだが、ラプラも同じくらい面倒発生装置になりうる存在だという事を彼は知っている。よりによってそんな二人とうさこと共に取り残されたジュラードは、自分の今の状況の最悪具合に今更気がついた。

 

「きゅううぅ~きゅうぅ~きゅ~♪」

 

 ジュラードがさり気なくピンチに陥っていると言うのに、うさこはそんなのお構いなしに彼の頭の上でご機嫌に歌なんて歌っている。うさこには頼れないことを確信したジュラードは、早くイリスがコーヒーを見つけ出してここに戻ってくることを願った。

 

「ジュラードも座れば?」

 

 いつの間にか床に座って自由にビスケットを食べ始めたエルミラに、ジュラードはそう声をかけられる。ジュラードは不安で若干上の空になりながら、「あ、あぁ……」と返事をした。

 そうしてジュラードはエルミラの傍に腰を下ろし、物凄く居心地の悪い空間でしばらく胃の痛くなる時間を過ごす事となる。

 

「ところでラプラだっけ?」

 

「はい、なんでしょう?」

 

 静かにお茶を啜っていたラプラに、エルミラがそう声をかける。何か余計な事を喋って二人で面倒を巻き起こしたらどうしようと心配するジュラードの傍で、エルミラはラプラにこう問いかけた。

 

「あんたはどうしてローズたちと一緒に行動してるの?」

 

「それは、イリスがそうしているからです。それと協力してくれと頼まれましたので。イリスの為に、ですよ」

 

「レイリスの為? お兄さんはあの人に何か弱みでも握られてるの? 大丈夫? そういうときは弁護士に相談した方がいいよ」

 

「違いますよ。愛の証明の為に、私の意思で行動しているのです」

 

「……お兄さん、レイリスにすごい徹底的に調教ってか、洗脳されちゃったみたいだね。マジこえぇレイリス」

 

 本当に怯えたように顔色悪くさせてそう呟くエルミラに、ラプラは「失礼な」と不機嫌そうに言う。それだけでジュラードは胃が痛くなる思いだった。

 エルミラがこれ以上余計な事を言ってラプラの機嫌を損ねませんようにと祈りながら、彼らの会話に耳を傾けた。

 

「でも協力って、ラプラは具体的に何するの?」

 

「”禍憑き”を治療する薬の材料の一つに、アトラメノクのマナ水が必要らしいのです。私とウネはこの店での用事が済んだ後にでも、それをエレへ調達しに行く予定です」

 

「へぇ、なるほどね~」


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