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神化論 after  作者: ユズリ
救済の方法
212/494

救済の方法 26

「久しぶり、エルミラ」


「あ、ホントだ! ウネだ、久しぶりー!」

 

 エルミラはウネも懐かしいようで、笑顔で彼女に近づく。が、さすがに今度は彼もベタベタ触るようなことは控えた。

 

「でもなんでウネがこっちに? それにどーしてローズたちと一緒なの?」

 

「色々疑問はあるだろうが、それはこの後にでも話すよ」

 

 疑問を聞いてくるエルミラにローズがそう言葉を返すと、イリスが再び口を開く。彼は今度はラプラを紹介した。

 

「で、この物騒な事言ってきた彼はウネの友人のラプラって言うんだ。彼には……ほら、ヴァイゼス時代に魔界に行った時に私たちも世話になって……」

 

 イリスがそこまで紹介をすると、ラプラは一歩前に出て自らの口でエルミラに自分を紹介し始める。間違った方向に。

 

「どうもはじめまして、私はラプラと申します。イリスと私はすでに愛を誓い合った仲なので、気安く私のイリスに触らないでくださいね」

 

「大嘘をつくな、大嘘を」

 

 大嘘を平然と述べるラプラに疲労を感じながら、イリスはエルミラに向き直った。そしてラプラの事情をよく知らないエルミラは、何か怖いものを見る目でイリスとラプラを交互に見つめる。

 

「え、その人レイリスの今カレ的な? やだ超怖い」

 

「違う、今も昔もそんなものは存在しないから」

 

「あぁ、じゃあ今現在の奴隷か何か? 今の様子から察するに、もうすっかり調教済みなんだね」

 

「……違う、友人だよ。調教も何もしてないってば」

 

「嘘だ、いつもみたいに裸で縛って吊るし上げて三日三晩ねっとりたっぷり責めてマゾ奴隷に調教した結果がこれなんでしょ?! 誤魔化したってオレにはわかるんだからね!」

 

「……」

 

 もう釈明するのも面倒になったイリスは、疲れた顔でエルミラに「もうそういうことでいいよ」と投げやりな返事を返す。それを聞き、エルミラは神妙な面持ちで「やっぱりね」と納得した。

 

「なんかレイリスがいなくなった後にヒスが、レイリスが憑き物が落ちたみたいに穏やかマイルド仕上げな性格になってたとか言ってたけどオレはそんな嘘に騙されないよ」

 

「なにそれ……」

 

「で、皆してなに? どーしたの?」

 

 エルミラが改めてそう問うと、ユーリが「お前こそなんでここにいるんだよ」と問い返す。エルミラはこう彼らに説明をした。

 

「いや、ちょっと今手を貸してる組織があってさ、それがここの近くだったからついでにレイチェルたちの様子を見に……あ、ほら、前に偶然会った時にオレと一緒にいたフェリードって彼ね。あいつのいる組織に今ちょっとお手伝いで色々やってんだ」

 

 フェリードに協力中のエルミラは、その合間にここへ来てレイチェルたちの様子を見に来たついでに、店のお手伝いもしていたらしい。そうエルミラが説明をすると、ユーリは怪訝な表情で彼を見た。

 

「で、その妙な面被って客引き? 止めろよ、逆にうちの店の悪い噂が立ちそうで不安になるだろ」

 

「だ、だってオレ今面倒な立場だから、あんまり顔曝して目立つわけにもいかないしー」

 

 色々面倒なところから目を付けられているエルミラなので、彼は目立つ行動が出来ないのだと言う。その結果の解決策が、今の”猫の覆面で顔を隠す”だったのだろう。

 だがジュラードたちは『そんな怪しい覆面してる方が余計に目立つんじゃないか』と、満場一致でそう思った。

 

「私たちもレイチェルたちの様子とか店の様子を見に一旦戻ってきたんだ」

 

 ローズがそうエルミラに話すと、彼は「一旦ってことは、まだ問題は解決してないんだね」と返す。ローズは苦笑しながら、「残念だけどそうなんだ」と頷いた。

 

「そっか……まぁとにかく中入りなよ。レイチェルとミレイもいるしさ」

 

 何故かそうエルミラが店の中に入る事を進め、ジュラードたちは彼の言うとおり店の中へと入ることにする。

 出入り口のドアを開けると直ぐに舌足らずな声で「いらっしゃいませー」と聞こえ、そしてその声は直ぐに驚きと喜びに変わった。

 

「あー、おねえちゃんだ! おねえちゃん、おかえりっ!」

 

 ミレイはジュラードたちの姿を見ると、アーリィ以外をまず無視してアーリィに飛びつく。ミレイは心底嬉しそうに、帰って来たアーリィにべったり引っ付いて甘えた。

 

「あれ、ユーリさんたちおかえりなさい。もう用事、済んだんだ?」

 

 レイチェルもジュラードたちに気づき、笑顔で彼らを迎える。ユーリは彼にまずは「ただいまー」と言った。

 

「店、大丈夫だったか?」


「あ、うん。とりあえずは大丈夫です。皆が色々手伝ってくれたし」

 

「そっか、ならよかったぜ」

 

 レイチェルの報告を聞いて、ユーリは安心したように笑う。レイチェルも彼らが帰ってくるまでしっかり店を管理できたことに安堵したように微笑んだ。

 

「あ、でも魔法薬の在庫がもうほぼ無いんだ」

 

「そっか、やっぱ一旦戻ってきておいて正解だったな」

 

 ユーリがそう返事をすると、レイチェルは「あれ、また何処か行くんですか?」と疑問を問う。ユーリは「まぁな」と返事をした。

 

「ところでレイチェル、外で変な被り物したエルミラが立ってたけど、あれ一体何なんだ?」

 

 ユーリのその問いにレイチェルは苦笑いを浮かべ、「あぁ、あれはえっと……」と説明に困ったように口ごもる。

 するとエルミラも店の中に入ってきて、彼は「レイチェル、オレ他に何か手伝う事あるー?」と聞いてきた。

 

「なんかオレが店の前に立ってると、逆にお客さん入らなくなってる気がするんだよねー。だから客引き以外になんか手伝える事をしたいんだけど……」

 

「……いいよ、エル兄が手伝うとロクなことにならないんだもん」

 

 エルミラの問いかけにそう返したレイチェルは、彼に「手伝いはいいから、店の隅で大人しくしててよ」と言い放つ。このレイチェルの一言に、エルミラは心底ショックを受けた表情で悲しんだ。

 

「何それ、ひどいっ! オレ、少しでもレイチェルたちの役に立てればいいと思って気合入れて手伝うって決めてたのに!」

 

 するとエルミラのこの発言に、レイチェルがこう反論した。

 

「だってエル兄の気合って空回りで逆に迷惑なんだもん。倉庫から全然違う商品運んできたり、魔法薬無いなーって言ったら工房で勝手に作ってこようとするし、レジ任せるとどっかいなくなってるし、真面目にレジ打ってもおつり間違えるし、お客さんと立ち話して大いに盛り上がって仕事さぼるし……って言うか本当に気合入れて手伝おうとしてくれてるの? 邪魔するなら何もしてくれない方が有り難いんだけど」

 

「ううぅ……」

 

 手伝う! と張り切っているエルミラだが、実際はレイチェルに迷惑ばかりかけていたらしく、ついに面倒見切れなくなったレイチェルは『客引きを頼む』と称して外にエルミラを追いやっていたらしい。

 レイチェルに『邪魔』宣言されたエルミラは、寂しそうな顔をしてとぼとぼと店の隅に行き、そこでレイチェルに言われたとおり膝を抱えて大人しくなった。

 エルミラの様子を見て『やっぱりあれはあれで邪魔だなぁ』と内心で密かに思いつつ、レイチェルは改めて帰って来たジュラードたちと向き合う。

 そして彼はジュラードたちと共にやって来たイリスやウネの存在に気づいて、「あれ?」と不思議そうな顔をした。

 

「えっと……」

 

 レイチェルはイリスの顔をじっと見つめ、彼はエルミラとは違って直ぐに見覚えのあるその顔を思い出す。

 

「も、もしかしてレイリスさん……?」

 

 驚き、半信半疑にそう問うレイチェルに、イリスは笑顔で「そう、当たり」と返事をした。そして彼は再会を喜ぶ笑顔でレイチェルに近づく。


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