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神化論 after  作者: ユズリ
救済の方法
211/494

救済の方法 25

「今はユーリよりほんの少し背が低いくらいだよな」

 

「そんなに?」

 

 ローズの言葉に、イリスは驚いたように目を丸くする。さらにユーリがこう続けた。

 

「しかも本人の話を聞くと、まだ今も進行形で伸びてるらしいし。俺もそのうち抜かれそうだな、これは」

 

「えー……あの小さかったレイチェルがねー……」

 

 一応レイチェルがヴァイゼスに預けられた直後から彼を知っているイリスなので、その当時はまだ幼く小さかった少年がそんな成長をしていた事が若干信じられないらしい。

 

「この三年で急に伸びたらしいからな。まぁお前があいつに見下ろされるのは確実だ」

 

 ユーリの意地悪い言葉に、イリスは「それはもう覚悟出来てる」と苦い顔で返事した。

 

「ミレイは逆に小さくなった」

 

 アーリィがそう発言すると、ローズが苦笑しながら「まぁ、そうだな」と頷く。

 イリスもミレイの事情は知っているし、それにその後どうなったのかはユーリたちに話を聞いたので理解した表情で頷いた。

 

「えっと……子どもの姿で生まれ変わったんだよね? ま、いいんじゃないかな? エルミラらしい発想というかさ……」

 

「……そうだな」

 

 そう語るイリスを眺め、ローズは頷く。そうして変わったのはレイチェルたちだけじゃなく、ミレイに対して『生まれ変わった』と表現を口にしたイリスも同じだなと彼女は密かに思った。

 

 そんな話をしているうちに、ラプラに協力してもらって転送補助の魔法陣を準備していたウネが彼らの元へとやって来る。

 

「お待たせ。アル・アジフの近くまで転送する準備が出来たわ」

 

 ウネのその言葉を聞き、マヤが「それじゃ皆、行きましょう」と言う。ジュラードたちはその言葉に各々頷き、アル・アジフへ転送するための魔法陣へと向かった。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 無事にアル・アジフへと転送を終えたジュラードたちは、真っ直ぐユーリたちの店を目指して歩く。

 ほんの数週間いなかっただけなのに、何か懐かしいと感じる街の中をユーリやアーリィが先導して進み、目的の店の前に彼らはたどり着く。するとそこで彼らは意外な人物と顔をあわせることとなった。

 

 ユーリたちの店が見えてくると、その店の前にかなり怪しい格好をした人物が立っているのにジュラードたちは気づく。どこが怪しいかと言えば、服装や体格などの背格好は普通の青年なのに、何故か顔には黒い猫のキャラクターを模した大きな被り物を被って顔を隠しているのだ。これはもう怪しい以外の何ものでもない。

 さらにジュラードたちが店に近づくと、怪しさ満点の猫青年はジュラードたちにこう声をかけてきた。


「いらっしゃーい、お客さんたち、いいもの揃ってるから見てってよー」

 

 どこかで聞いた事のある声でそう言った怪しい猫青年は、つまり客引きらしい。こんな変な客引き雇った覚えが無いユーリとアーリィは困惑し切った顔をした。

 一方で客引きをしていた猫青年は、よくよくジュラードたちの姿を確認すると、「あっ!」と驚いた声を上げた。

 

「あれー、ローズたちじゃん! やほー! おかえりー!」

 

「!?」

 

 妙な変人に親しげに改めて声をかけられ、ローズはひどく警戒した様子で猫青年をガン見する。

 

「わ、私には猫の知り合いはいませんっ」

 

 怯えながらそう返事をするローズに、猫青年は「え、オレだよ、オレ!」と自分を指差しながら言った。

 

「……誰? 変態?」

 

「違うっ!」

 

 アーリィが胡散臭そうな顔で猫青年を変態呼ばわりすると、猫青年は「これ被ってたらやっぱりわかんないかー」と言いながら、怪しい猫の被り物を取る。すると被り物を取った下から出てきたのは、ローズたちがよく知る赤毛の青年の顔だった。

 

「あ、お前エルミラじゃねーか!」

 

 猫の被り物の下から出てきた顔を見て、ユーリがそう驚いた様子で声をあげる。そう、妙な被り物を被って店の前に立っていた人物の正体はエルミラだったのだ。

 

「なんでお前がここに! ってか、何なの、その妙な格好……」

 

 ユーリがそうエルミラに問うと、彼は苦笑しながら「レイチェルのお手伝いしてて……」と答える。手伝いはいいとして、何故そんな妙な格好をしていたのかと続けてユーリが問おうとすると、それより先にエルミラがまた口を開いた。

 

「ってゆーか皆してどうしたの? なんか病気治す為にどっか行ってたんでしょ?」

 

 問い、エルミラはジュラードの後ろに立つ人物に視線を向ける。その人物が何となく気になり、目に止まったからだ。そして何か考える表情となり、彼はその人を凝視した。

 

「ん? なんかその人、どっかで見たことあるよーな……」

 

 エルミラが凝視するのは、気まずい表情を浮かべて立つイリスだ。レイチェルの様子を見に来ただけなのに、予想外なおまけでエルミラとも顔を合わす羽目になり、イリスは小さく溜息を吐いた。

 

「……エルミラ、久しぶりだね」

 

 ジューザスにはしらを切ったイリスだが、エルミラ相手にはさすがにそんなことはする気はないようで、彼は溜息の後にそう言葉を続ける。しかしそう声をかけられても、直ぐにはエルミラもイリスが誰なのか思い出せなかった。

 

「えーっと……やっぱどっかで会ってるんだ、オレたち……でもどこで会った人だっけ?」

 

「……」

 

 思い出せないエルミラの態度にイリスは不満げな表情を浮かべつつ、彼は「ほら、レイリスだよ」と彼に言う。そしてエルミラは「あああぁぁぁっ!」と、予想以上に驚いた反応を示した。

 

「うそ、ホントにレイリス?! そういえばこの顔……うわっ、触れる! 実在してるよ! 実在する人物じゃん! すげー!」

 

「ちょ……人をユーレイみたいに……」

 

 ヴァイゼスを勝手にいなくなったレイリスなので、やっぱりエルミラも彼の所在は全く不明で連絡は取っていなかったのだ。その為彼は突然再会したイリスにひどく驚き、若干感動すらしている様子を見せた。

 

「わー、でもホント久しぶりだねレイリスー。元気にしてたー? 」

 

「まぁ、それなりに……あなたは相変わらずそうだね」

 

 相変わらず明るい態度が変わらないエルミラに少し安心している自分に苦笑し、イリスは彼にそう返事を返す。その間もエルミラは余程珍しい人物との再会が嬉しいのか、ベタベタとイリスに触りまくっていた。そしてこの行動が、面倒な人物の面倒なスイッチを入れる結果となる。

 

「イリス、なんですかこの赤毛は。あなたにベタベタと触ってどういうつもりでしょう……殺したいんですけどいいですよね?」

 

「ダメ」

 

 静かな声で物騒な事を囁くラプラに、イリスも静かな表情でそう返事を返す。するとラプラの物騒発言をしっかり聞いてしまっていたエルミラは、途端に顔色悪くなって怯えた。

 

「何、何なのこの人! 顔隠してるし殺したいとか言うし怖いんだけど !」

 

 エルミラはイリスから離れて、何故かローズの後ろに隠れて怯える。そんなエルミラにイリスはこう説明した。


「そういえばエルミラは彼のこと知らないんだよね」

 

 イリスはラプラを紹介する前に、彼の後ろであくびをかみ殺していたウネを彼に紹介する。

 

「ほら、彼女はウネだよ。こっちも懐かしいでしょ」

 

「え、ウネ!?」

 

 ウネとは面識あるエルミラは、イリスの言葉にまた驚きの反応を見せる。ウネもラプラ同様に顔を隠していたが、イリスに紹介されると少し頭に被っていた頭巾を持ち上げて、顔を見せながらエルミラに挨拶した。

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