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神化論 after  作者: ユズリ
救済の方法
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救済の方法 18

 

 翌日、ジュラードたちはロンゾヴェルに約束したグラスドールやフラメジュ以外のその他の材料の入手方法について考えることにする。

 フェイリスの家の居間で、ジュラードたちはいつも通りマヤを中心に話し合いを始めた。

 

 

「古代竜、つまり今で言うギガドラゴン級のヴォ・ルシェを探すのと、アトラメノクのマナ水を取ってくる方法を考えるのが今回のテーマよ」

 

 最近はローズも魔法を使ってないので、ちょっと彼女の魔力を無駄遣いして女教師風のスーツ姿に衣装を(無駄に)変えたマヤが、大きなテーブルの中央に立ってそう皆に言う。

 テーブルを囲んでソファーや椅子に座るジュラードたちは、マヤの無駄なお色直しを疑問に思いつつも彼女の話に耳を傾けた。

 

「で、ドラゴンはヴォ・ルシェが多く生息する地域に行って探して狩ってくるのがやっぱり一番ベターな方法かしらね」

 

「まぁ、確かにそれが一番だよな」

 

 マヤの言葉にユーリが頷き、彼はこうも続ける。

 

「素材屋に行けば魔物から取った体の一部とか色々売ってるけど、竜関係は大体馬鹿みたいな値段だし、そもそも古代竜の素材なんて貴重すぎて店で探すのは大変だろうしな」

 

 ジュラードたちのような冒険者が倒した魔物の体の一部などは、買い取ってくれる専門の店で売ると、やがてその店から素材屋と言われる様々な素材を扱う店に商品として流れる。

 そういう店に行けばもしかしたらヴォ・ルシェの瞳も売っている可能性もゼロではないかもしれないが、ユーリが言うようにドラゴンから取れる素材は高額な取引が基本だから、たとえ運良く見つけたとしても値段的な意味で手に入れられないかもしれない。

 ならば自分たちで目的のドラゴンを見つけて入手するのが、確かに確実な方法であろうと皆は納得した。

 

「でもギガドラゴンを倒すんだろう? ……大丈夫なんだろうか」

 

 不安げな表情でそう呟いたジュラードに、マヤは逞しいのか投げやりなのか「やってみるしかないわよ」と返す。

 確かにそれはその通りなのだが、この旅でやっとまともに魔物を倒せるようになったジュラードは、巨大なドラゴンを相手にするという話に心の不安を消すことは出来なかった。

 

「……」

 

「なんだジュラード、辛気臭ぇ顔して。大丈夫だって、こんだけ人数いりゃなんとかなるって」

 

 不安げな顔をしたジュラードを励ますように、彼にそうユーリが声をかける。続けてイリスも笑いながら、「そうだよ」と言った。

 

「先生……」

 

「だってね、昔ジューザスから聞いた話なんだけど、彼若い頃にギガドラゴンを倒したことがあるんだって」

 

 イリスがそう言うと、マヤが驚いたように「へぇ、彼が?」と聞く。イリスは「らしいよ」と頷いた。

 

「胡散臭い話だと思ったけど、その時はマギも一緒で彼と倒したって言ってたから多分本当なんだと思う。でさ、あのジューザスが倒せるくらいなんだから、多分私たちでも倒せるよ」

 

 イリスの何気なく失礼な言葉に、ユーリも便乗して「そうだな」と言う。

 

「あのジューザスが倒せるんなら大丈夫だろ」

 

「だよね。あのジューザス程度でも倒せるならねー」

 

 本人がいないからって笑いながら失礼を言いまくるユーリとイリスに、ローズは苦笑しながら「ジューザス、ひどい言われようだな」と小さく呟いた。

 

「そうね、ジューザスが倒せるなら希望は十分にあるわね」

 

「ま、マヤまで……」

 

 マヤまでジューザスを過小評価する事に苦い顔をしながら、ローズは彼女の言葉に続けてこう言った。

 

「倒せるかどうかも不安だけど、まずは見つけられるかだよな。幸いアサドの大陸になら、このドラゴンは多く出没するってジューザスが言ってたけど……運良く見つけられるといいんだが」

 

「そうだな」

 

 倒せるかそうでないかの不安の前に、まず見つけられるかどうかが不明な事実に、ジュラードは『そのとおりだ』と思い頷いた。

 

「で、具体的にはアサドのどこに出るんだ? その、なんとかって言うドラゴンは」

 

 ユーリがそう発言し、イリスが口を開く。

 

「ヴォ・ルシェね。そのドラゴンなら確かにアサド大陸では、色んな場所でよく出るみたいだよ」

 

「あらイリス、詳しく知ってるの?」

 

 マヤに問われ、イリスは「一応ね」と頷いた。

 

「昔……あの、”あそこ”にいた時に本業の他に魔物の討伐の仕事なんかもしてたんだよね。それでそういう仕事してくと自然にさ、どこでどういうドラゴンが出るとか出たとかって話をよく耳にしたんだ。ほら、やっぱりドラゴンってのは魔物の中でも特別な存在だから、やっぱ話題によく上がるらしくて」

 

 ヴァイゼスにいた頃、ヴァイゼスは魔物の討伐の仕事も請け負っていたので、その頃の話をイリスはしているのだろう。彼は「それでその種類のドラゴンの話も時々聞いた事があって」と言った。

 

「えっと、確かね……この近くだとキエラ荒野の辺に出るって話だったかな?」

 

 イリスがそう言い、ローズがアサド大陸地図を取り出す。そして地図を広げ、彼女は「キエラ荒野、ここだな」と地図を指差した。

 

「……近いって言っても、国一つ挟んでる距離ね」

 

 ローズが広げた地図を覗き込みながら、マヤがそう呟く。彼女のその言葉に対し、「でもそこまでの移動に砂漠は挟まないから、そんなに難しい移動にはならないはずだよ」とイリスが告げた。

 

「他にはヴァーナ砂漠とかマリン・サリ山脈とかにも出るってのは聞いたけど、砂漠や山脈は土地自体が過酷な環境だからそこで古代竜を探すのは大変だと思う。その点キエラ荒野は近いし、ただの広い荒野地帯だから移動も楽だろうしさ」

 

「そうか……ならその場所でヴォ・ルシェを探してみるか」

 

 ローズがそう言い、ジュラードも頷く。そこに古代竜がいるのかはわからないが、いる事を願うしかなかった。

 

「それじゃあマナ水はどうする……?」

 

 ドラゴンについて話が一通り纏まると、アーリィがそう次の話題を口にする。

 

「やっぱりエレに行って取って来るの?」

 

 アーリィのその問いに、マヤは腕を組みながら「今のところ、それが一番確実な方法だからねぇ」と難しい顔で答えた。

 

「でも行くのが楽じゃねぇんだろ?」

 

 ユーリがそう言いながらウネを見ると、ウネは彼の視線に気づき、少し困ったような表情を返す。

 

「あちらの世界に行って戻ってくることは可能だし、それで目的のものを手に入れてくることも出来るけど、私一人では時間がかかるわ。やっぱりそれはラプラにも相談をしないと」

 

 ウネのその返事に、マヤは「そうね、彼にもまた協力してもらわないとダメみたいね」と頷く。そしてラプラの名を聞いて、イリスの表情が疲れたように変わった。

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