光の裏側 24
「イリス!」
再び辺りが闇に包まれると、堰を切ったようにユエが倒れたイリスへ向けて駆け出す。ウネもイリスやラプラを心配してそちらに向かい、ジュラードもうさこを抱きかかえたまま彼らの元に走った。
「イリス! 大丈夫?!」
姿は夢魔のまま気を失って倒れたイリスを抱き起こし、ユエは彼に何度も声をかける。彼女に続いて駆けつけたウネは、ラプラの頬を軽く叩きながら彼に声をかけた。
「ラプラ、ラプラっ」
「……っ……う……うぅ……」
呻くがなかなか目を覚まさないラプラに対し、ウネは心配するどころか、ついに遠慮せずに無表情で彼の頬を引っぱたく。この強烈な一撃に、ラプラは「はっ!」と言いながら目を覚ました。
「わ、私は……っ?!」
「やっと気がついたのね、この超絶馬鹿」
「な、なんですかその下品な物言いは……突然何なんですか、ウネ……」
「なんですか、じゃないわよ……もう、本当に馬鹿なんだから」
色々大変だったのにそれを理解してない様子のラプラに、ウネは普段より厳しい口調で彼を責める。
目を開けたラプラの瞳はいつも通りの蒼いもので、とりあえず夢魔に操られていた状態から正気に戻れたようだ。
ラプラは何か凄い怒っている様子のウネを見て困惑した後、直ぐに何かに気づいた様子で「い、イリスは!?」と叫んだ。
「そういえば、イリスは……イリスはどうなったのですか?!」
蒼白な顔色になって心配するラプラに、彼を抱きかかえたユエが焦燥した様子でこう答える。
「生きてはいるよ……でも、どうなったのかは……」
夢魔の姿のままのイリスは、固く目を閉じてまだ意識を失っている。彼が正気に戻ったのかどうかは、今の時点では判断が難しかった。
「だけどラプラが正気に戻ったのだし、彼から感じていた異常なマナは今は消えている。成功したと思いたいが……姿は戻っていないのが怖いな……」
地面に座り込んでいる姿勢で、ローズがそう言葉を呟く。今もまだ彼女の傍にマヤの姿は無い。ウネも判断に困った様子で沈黙し、ラプラは不安げな眼差しでイリスを見つめた。
「お、おい……どうなったんだ?」
皆が悩んでいるところにうさこを抱えたジュラードも到着し、その後からアーリィを抱きかかえたユーリもやって来る。
「大丈夫なのか……?」
「つかマヤは?」
ジュラードの疑問に続いてユーリがマヤの存在を問うと、突如ローズの体から白い光が溢れ出す。そしてローズも含めて皆が驚く中で、光は徐々に輪郭を成して人型へ変わった。
そして完全に人型となると、皆がその人物を見て驚きの声を上げる。
「ま、マヤ!?」
ローズの体から溢れた光の正体はマヤだったのだが、何故今更それをローズも含めて皆が驚いたかといえば、再び皆の前に登場した彼女のその大きさが理由だった。
「う~ん、やっぱりね! 成功よ、うふふふふふふふっ! あは、あははははははっ!」
物凄いご機嫌な様子で高笑いするマヤは、普段の手のひらサイズより若干大きい赤ん坊サイズほどになって皆の前に姿を現したのだ。
「大きい……な」
「あぁ、少しだけな」
驚くジュラードの呟きに、ユーリが同意したように返事する。ローズは微妙に大きくなった彼女に、「どういうことだ?」と聞いた。しかしマヤは、「説明はまた明日にでもしましょう」と答える。
「それよりアーリィとかイリスを休ませるのが先よ。ユーリやウネも怪我してるし、手当てしないと」
「あの~、私も怪我していますよ。なんか腕とか血が出てるし、足凍ってるんですけど……いや、それより何より頬が痛いです」
ラプラが手を上げてそうマヤに訴えると、マヤは「あんたは自業自得な部分があるから勝手にどうにかしなさいよ」と冷たく答える。ラプラはしょんぼりしながら凍傷してそうな自分の足と、赤くはれて痛む頬を摩った。
「イリスはあたしが運ぶよ……」
そう言ってイリスを抱えたまま立ち上がったユエに、ユーリは何処か不安げな顔を向ける。彼はユエが抱きかかえる、意識の無いイリスに視線を向けてこう言った。
「でもよぉ、こいついきなり目ぇ覚まして襲い掛かったりしてこねぇか?」
そう心配を口にするユーリに、マヤは少しイリスの様子を観察してからこう答える。
「まぁ凶暴な気配も無くなったし、大丈夫なんじゃない?」
「そんな適当な……」
適当なマヤの言葉に、ユーリはますます不安そうな顔をした。しかしユエもマヤの意見に同意なようで、「あたしも大丈夫な気がするよ」と呟いた。
「こいつが意識を失う前、最後に目が合った時のこいつは……人の目をしてた気がしたから」
愛しげな眼差しでイリスを見つめながら、ユエはそう答える。そして直後に何かに気づいたように「あっ!」と声を上げた。




