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神化論 after  作者: ユズリ
光の裏側
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光の裏側 4

「カナリティア、誰か来たのか?」

 

 奥の部屋で調べものをしていたヒスが、玄関の声に気づいてそちらへとやって来る。そして彼もカナリティアと対面して立つジューザスに気づいて驚いたように目を丸くした。

 

「え、ジューザスか……?」

 

「あぁ、ヒス元気そうだね」

 

 突然何の連絡も無しにやって来たジューザスに、ヒスとカナリティアはただただ驚く。そんな二人を前に、ジューザスは「よければ中に入れてもらえないかな?」と言った。

 

 

 

「で、なんでまたお前一人で突然ここに来たんだ?」

 

 休憩室にジューザスを案内して、ヒスはカナリティアの淹れたお茶を飲みつつそう口を開く。ジューザスは困ったような笑顔で、「もしかして迷惑だった?」とヒスに返した。

 

「いや、全然迷惑じゃないが……ただお前、たしか奥さん妊娠中だったじゃないか。あと子どもも小さいし」

 

「うん。でも彼女は今、彼女の実家に帰ってるから大丈夫。心配ないよ」

 

 一人息子も今はそちらの実家に預かってもらっているらしく、ヒスは「父親がそんなんでいいのか」と呆れた視線をジューザスに向けた。

 

「いや、私だってそりゃあ大事な時期だからエレと息子の傍にいたかったけどね。緊急の仕事でどうしても離れなきゃ行けなくなって。それで、こっち来たついでに君たちに会いに……ね」

 

「俺たちはついでかよ」

 

「あ、なに、ヒス怒った?」

 

「いんや」

 

 微妙に不満そうに返事をするヒスに、ジューザスは苦笑を漏らす。苦笑しながら、彼はヒスに「ついで以外にも会いに来た理由はあるよ」と言った。

 

「ん? なんだ?」

 

「それは……」

 

 ジューザスが口を開こうとした時、たった今ジューザスから貰ったお菓子をお盆に乗せて、カナリティアが部屋に入ってくる。

 

「なんだか楽しそうにお話していましたね。私も仲間に入れてくださいよ」

 

 カナリティアはそう言うとお菓子の乗った盆をテーブルに置き、ヒスの隣の席に腰を下ろした。

 

「何の話をしていたんですか? 二人目の赤ちゃんの名前の相談?」

 

「はは、違うよ」

 

「こいつ、お前んとこの子どもに興味津々なんだ。会ったら抱っこしてみたいらしいぞ」

 

「だって赤ちゃんってあまり見たことないんですよ! 抱っこしたいって思いますよ、普通!」

 

 身を乗り出してそう訴えるカナリティアがなんだかおかしくて、ヒスとジューザスは揃って笑う。そんな二人を、カナリティアは不満げな様子で見た。

 

「な、なんですか二人して……私のこと何か馬鹿にしているんですか?」

 

「そ、そんなことないよ! それより以前手紙でも書いたけど、今度は是非エレと子どもたちとここに来るよ。その時には抱っこしてあげてくれないか?」

 

 ジューザスのその言葉に、カナリティアは嬉しそうに「是非!」と返事をする。ジューザスも同じ表情で「頼むよ」と言った。

 

「で、ジューザス。お前何か用があってここに来たんだろう?」

 

 先ほど中断してしまったジューザスの話を、ヒスはそう言って再開させる。ジューザスは「あぁ、そうだね」とヒスに向き直った。

 

「なんだ、用事って」

 

「うん……君って今、珍しい病気について調べてるだろう?」

 

 ジューザスのその問いに、ヒスは表情を変える。

 

「禍憑きか?」

 

 真剣な顔でそうヒスが言葉を返すと、ジューザスは頷く。そして彼は持参したもう一方の荷物から、紙の資料を取り出してテーブルの上に置いた。

 ジューザスがテーブルの上に置いた資料を見ながら、ヒスは「なんだ?」と首を傾げる。カナリティアも興味深そうに、資料を見つめた。

 

「この前も君に資料は送ったけど、追加でね。ちょっと”禍憑き”関係で興味深いことがわかったから、君に知らせとこうと思って」

 

 ジューザスはそう説明すると、ヒスに資料の数枚を手渡して見せる。ヒスは資料を受け取って、そこに目を通した。

 

「これは……」

 

「ここ数年で増えた異常植物の発生と新種の魔物の出没情報をまとめた資料さ。もう一枚は中央医学研究学会の調べた、”禍憑き”の患者が出た場所のリスト」

 

 この資料からは以前にヒスへ似たようなものを送ったので、目新しい情報は得られない。しかしもう一枚、その下の資料へ視線を移すと、それはまだヒスの見たことの無い情報の記された資料のようだった。

 

「こっちの資料は……」

 

「そう。今回君に見せたかったのはそっちの方だよ」

 

 ジューザスは資料に目を通すヒスに、「それは異常植物の解析結果なんだ」と説明する。

 

「もう一つ、新種と思われていた魔物の解析の結果も最近手に入ってね。それも君に見せたくて持ってきたよ」

 

「思われていた?」

 

 ジューザスの言い方に何か引っかかりを感じ、顔を上げたヒスが問う眼差しを彼に向ける。ジューザスは「魔物の方の解析結果を見ればわかるよ」と、ヒスに言葉を返した。

 言われたとおり、ヒスは先に魔物の解析結果を見てみる。しかしそこには専門的な用語などが並んでいて、その分野に詳しくはない者にはよくわからないことだらけだった。

 

「……で、つまりどういうことだ?」

 

 結局結果を見ただけではよくわからないので、ヒスは単刀直入にジューザスに聞いてみる。ジューザスは「つまり、新種じゃなかったってことがそこの結果に出てるんだよ」とヒスの疑問に答えた。

 

「そうなのか?」

 

「あぁ。新種と思われてた魔物のほとんどが、新種ではなかったってことがわかったんだ。勿論新種も何匹か見つかったけど、多くはそうじゃなかった。何匹かの魔物を調査した結果、その多くが元ある魔物から変異した個体だということがわかった。だたどれも見た目が元の魔物から大きくかけ離れていたから、見た目ではそれがわからなかったんだけどね」

 

 そう説明し、ジューザスはまた別の資料をヒスに見せる。

 

「そしてこれを見てもらうとわかるんだけど、面白いことがわかったんだよ。この資料にある魔物は旧時代に存在してたとされる魔物で、理由があって現代では絶滅したとされるものなんだけど……」

 

 差し出された資料と、今自分の手に持っている資料の添付写真を見比べ、ヒスは驚いたように目を見開く。

 

「これは……同じじゃないか。新種と思われていた魔物と、こっちの絶滅したとされる魔物と、この二匹は……」

 

「そうなんだよ、見た目はほぼ同じ。つまり復活したんだろうね」

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