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神化論 after  作者: ユズリ
もう一人の探求者
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もう一人の探求者 9

「うわぁ、可愛い! ミレイさんじゃなくて、これからはミレイちゃんって呼んでいいですか?!」

 

「……」

 

 アゲハがミレイに近づくと、ミレイはすかさずレイチェルの後ろに隠れる。隠れた彼女は、レイチェルの後ろで警戒心たっぷりに顔だけ見せて、アゲハをじっと睨むように観察した。

 

「あれ?」

 

 ミレイに逃げられたことにアゲハが首を傾げると、レイチェルが苦笑しながら「ごめんねアゲハさん」と口を開いた。

 

「ミレイ、基本的に初対面の人にはいつもこうなんだ。人見知り激しくて。慣れたら平気らしいんだけど……今のところ僕とアーリィさんと、あとユーリさんとエル兄くらいにしか懐いてなくて」

 

「はぁ~……そうなんだ。……そっか、私のことも忘れちゃったんだもんね」

 

 アゲハは寂しげな笑みを一瞬見せ、そしてそれをまた彼女らしい明るい笑顔で消す。彼女はしゃがみ込み、隠れるミレイに改めて自己紹介をした。

 

「初めまして、ミレイちゃん! 私はアゲハ、エルミラさんやレイチェルの昔からのお友達です!」

 

「……赤毛とおにいちゃんのおともだち?」

 

 アゲハが笑顔のまま「そうだよ!」と頷くと、ミレイは少し興味を持ったふうに彼女を見る。

 

「あとね、アーリィさんやユーリさんともお友達だよ! よく二人のお店に顔出すんだ!」

 

「おねえちゃんたちともおともだち……」

 

 ミレイはレイチェルの後ろに隠れるのを止めて、アゲハの前まで歩いていく。そして彼女に、まだ若干警戒したような無表情のまま「はじめまして」と言った。

 

「うん、初めまして!」

 

 アゲハに挨拶を返されると、ミレイは小走りにまたレイチェルの後ろに戻っていってしまう。しかしそれでもアゲハは満足そうな笑顔のままで、また立ち上がった。

 

「ミレイ、アゲハさんは優しいし良い人だよ。仲良くね」

 

「……うん」

 

 レイチェルの言葉にミレイは頷くも、恥ずかしいのか後ろに隠れたままだ。レイチェルは困った笑顔でアゲハに視線を移した。

 

「ところで、アゲハさんはどうしてここに?」

 

「あぁ、私は……」

 

 アゲハが説明しかけた時、エルミラが「まぁまぁ、取り合えず話は家の中で落ち着いてしよーよ」と口を挟む。

 

「た、確かにそうだね」

 

「だろ? とりあえずアゲハ、中入ってよ。お茶くらい用意するからさ、レイチェルが」

 

「……まぁいいけどね」

 

 相変わらず人使い荒いエルミラにレイチェルは溜息を吐くが、なんだかんだで無事にエルミラが帰ってきたことに彼は安堵しながら皆を家の中に入るよう促した。

 

 

 

 

「で、エル兄、どういうこと? なんで突然アゲハさん連れてきたの?」

 

 居間にアゲハを案内して彼女に温かいお茶を振舞った後に、レイチェルは早速彼女の隣でくつろいでビスケットをむしゃむしゃ食べているエルミラに問う。

 

「ん? それはあれだよ、レイチェルも久しぶりに彼女に会いたいって思ってるんじゃないかなーっと思って」

 

「確かに久々に会えたのは嬉しいけど、でもエル兄のことだし何か他に考えがあってアゲハさん連れてきたでしょ」

 

 レイチェルのその言葉に、エルミラは「さすがレイチェル、鋭いな」と苦笑を漏らす。エルミラは取り合えずビスケットをむしゃるのを中断して、レイチェルとミレイにこんなことを言った。

 

「突然ですがレイチェルにミレイ、君たちにはしばらくここを離れてもらいまーす」

 

「へ?」

 

「わけわかんない、赤毛」

 

 エルミラの突然の言葉に、レイチェルとミレイは揃って首を傾げる。エルミラは「まぁまぁ、最後まで話を聞いてくれ」と彼らに言った。

 

「ほら、ここ最近色んな所がオレの優秀さに気づいて色々美味しい条件付けてオレを釣ろうと必死だったじゃん? やっと時代がオレに追いついたって言うのかな。まぁ当然だよね、ガイアがもっと輝けって囁くような天才なオレを皆ほっとける訳ないよねー」

 

 何か得意げに意味不明発言をするエルミラを軽くスルーするように、レイチェルは「それで?」とさっさと話を先に進めるよう催促する。

 

「うん、でもどーも皆さんオレに超凄い兵器とか開発してもらいたいみたいでさー。オレそういうのには興味ないから、いつも色々言って丁重にお断りしてたんだよね。でもオレのファンの皆さんしつこくて、断っても断ってもオレのストーカー止めてくれなくてもうオレ困っちゃって」

 

 エルミラは笑いながらそう話すが、彼がボーダ大陸の多くの国にその頭脳の提供を求められていることはレイチェルも知っていたし、それが些か強引で脅迫まがいな場合さえあったことを彼は知っている。だからエルミラは最近は自分たちに脅迫まがいの勧誘での被害が行かないよう配慮し、家を長く留守にすることが多かったの だ。

 

「……それで?」

 

「うん、それでさすがにちょっと最近熱狂的なオレのファンの一部がやばくなってきたから、いきなりで悪いけど安全の為にお前たちにはこの家をしばらく離れてもらおうと思うのよ。アゲハはその移動の護衛兼案内役として来てもらったわけ」

 

 エルミラはそう説明をすると、再び暢気な顔でビスケットを食べ始める。こういう態度の彼を見ているとまるで危機迫った状況ではないように思えてしまうから困ると、レイチェルはエルミラを見てそう思いながらまた小さく溜息を吐いた。

 

「じゃあやっぱり今ユーリさんたちから届いた手紙も、エル兄の仕業だったんだね」

 

「お、手紙来てたの? そうそう、お前たちをしばらくそっちに預けていいかって手紙書いたんだよ! で、返事はどうだったの?」

 

「大丈夫って書いてあったけど……普通さぁ、アゲハさん連れてくる順序が逆じゃないかな? 返事を確認してから連れてくるべきでしょ」

 

「あはは、でも大丈夫って書いてあったならいいじゃん! そういうわけで、お前たちはほとぼり冷めるまでユーリたちのお店でお世話になってください。よろしくー」

 

 エルミラはアゲハに視線を向けて、「アゲハも、改めてよろしくね」と言う。アゲハはにっこり微笑み、「任せてください」と彼に頷いた。

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