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都市童話

砂漠都市デゼルト

作者: 滅天使

 あるところに、デゼルトという街がありました。


 デゼルトは広大な砂漠にある、石でできた街です。


 砂ばかりに囲まれた街ですから、家畜を飼うことは難しく、水も他の街から運んできてもらっているため、畑や田んぼも満足に作れません。


 そんなデゼルトの街ですが、珍しい動物や宝石が採掘されるため、他の街は嫌がることなく食料や水を運んできてくれました。


 雨も他所から移住してくる人も滅多にありませんでしたが、デゼルトの人々は特に不自由しませんでした。




 ところが、そんな生活に辟易している若者がおりました。


 若者はデゼルトの街でも裕福な家庭で生まれ、勉強もできたので、不自由なことも不得手なこともありませんでした。


 そのあまり、何かを頑張ったり挑戦したいと思うようなことがありませんでした。


 そんな男でしたが、砂漠のどこかにあるというオアシスの話にとても興味を持ちました。


 オアシスは砂漠の中にあるにもかかわらず、水や果物で豊かな場所です。


 まだ誰も見つけたことはありませんでしたが、デゼルトの人々は水や果物に不自由していなかったため、誰もオアシスを探しだそうとはしませんでした。


 そんな街の人々に若者は愛想が尽きて、荷物をまとめて一人オアシスを探す旅に出ました。




 デゼルトの街を出て一人、砂漠をさまようこと数日。


 あまりにも広い砂漠にいよいよ膝を着きそうになる若者でしたが、ここでおめおめ帰ってしまっては街の人々になんと言われてしまうか。


 若者はせめて自分の荷物の食料が尽きるまではと歩き続けました。


 そして数週間。


 数ヶ月。


 砂漠の地平線に、緑色の何かが見えてきました。


 若者は期待に胸をふくらませながら、ずんずん歩いて行きました。


 そしてとうとう、緑の正体が木々と草花であることが分かり、その中心に泉を発見しました。


 若者はとうとうオアシスを見つけたのです。


 本に書かれていたとおり、綺麗な泉、豊かな緑と果物。


 とてもここの周りが砂漠とは思えないほどでした。


 若者は早速果物をかき集め、街に帰ってデゼルトの人々に見せてやろうと思いました。


 しかし、いざオアシスを出ようとして気付きました。


 オアシスの中をあちこち歩きまわったせいで、若者は自分がどの方角から来たかわからなくなってしまったのです。


 砂漠の中には目印になるようなものは何もありません。


 またあの砂漠の中を何日も歩き続けるのかと思うと、若者はオアシスを出たくなくなってしまいました。


 もしかしたら、自分のようにこのオアシスを目指して訪れるものがいることを期待して、若者はオアシスに留まることにしました。


 しばらく留まるために寝床を作ろうと木々の中を進むと、そこには既に枝葉で作られた簡易な寝床がありました。


 もしかしたら既に誰かがいるのか、あるいは戻ってくるのか、それともいつか他の誰かがここにやってくるだろうと信じて、その夜、若者はそこで一晩過ごしました。




 しかしいくつの夜が過ぎても、誰も来ることがありませんでした。


 若者が、寝床の下に人の骨が転がっていることに気づくことはありませんでした。

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