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ダーツの横に置いてあるスロットマシーンが懐かしい。
俺はこのスロットマシーンで目押しを覚えたのだった。カウンターに横並びで座りまずバーボンを頼んだ。
「藤崎さん今日来たのは奥さんのことでしょう?」唐突に言う広田を見て、俺は覚悟を決めた。
バーボンを一気に飲んでから「広田、お前靖子に何をした?」と聞いた。
「僕の会社に奥さんが来たんです、助けてくれって」
「お前やっぱり靖子のことを…」俺は広田の胸ぐらを掴み殴りかかった。
「お客様…」という店員の声で我に返り広田の事を離した。
「広田お前がそそのかしたんだろう」
「いいえそれは絶対違うと断言できます奥さんの連絡先も知りませんでしたし」
「家は…家は知っているだろうが、お前の物件なんだから」
「それは勿論。藤崎さん奥さんの話を聞いてあげていませんでしたよね。だから僕の所に来たんですよ」
「結婚もしてないお前に何が分かる」
「フッ夫婦揃って同じことを言うんですね。分かりますよ。少なくとも藤崎さんよりは靖子の事分かっているつもりです」
「靖子だと、俺の妻を呼び捨てにするなんてお前…」
「藤崎さん、靖子いえ靖子さんのこと本気で愛していました?」
「お前に何の権利があってそんな事を聞かれなくてはならんのだ」
「大切にしていたなら簡単に答えられるはずです」
「愛していたに決まっているだろう」そういって俺は右手をぐっと力強く握りしめた。
「愛しているなら、痣を作るんですか。それも何個も」
痣の事を知っているという事はやはり…いや認めたくない、認めるもんか。
広田の所で倒れて、たまたま身体の痣が見えたのかもしれない。
俺の脳裏に想像したくない映像が浮かびそうになるのだが、車庫のシャッターを閉める様にして俺は必死にその映像をかき消した。




