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「上川さん、安易にそういう事聞くもんではないよ」と上川さんが東さんに注意した。
「いえ、いいんです。お気になさらないで下さい。いえ特に幼稚園の事を詳しく書いてあるというとでもないのですが、少々気になりまして」
俺は三人の名前が日記に記してあるという事は伝えなかった。
ガチャン____。
その時、テーブルの上の芦田さんの目の前にあるグラスが何かしらの危機を感じ取ったかのように床転がり落ちて大きな音を立てて割れたのだった。
ハァハァと苦しそうに大きく息を吸い始める芦田さん。
「芦田さん大丈夫、大変…紙袋を早く…」肩を激しく揺らしながら大きく息を吸い込もうとしている芦田さんの鞄の中から紙袋を取り出し芦田さんの口元に持っていき、ゆっくりと息をするように言った。
騒然とする店内。
その数分後芦田さんは救急車で運ばれていった。
後の事は上川さんに任せて俺は店を出た。
これから広田の会社に寄ることにした。広田の会社の前までついて看板を眺めた。
広田不動産と書いてある大きな看板は元は白かったのであろうが、年月を経て真っ黒になっている。
扉をガラガラと横に開き店内に入ると「いらしゃいませ」と言いながら俺を迎えてくれたのは、カッチリと髪を固め、グレーのネクタイを締めたスーツ姿の広田だった。
「そろそろ来る頃だと思っていましたよ。ここではなんなので」と言って広田は店の事は従業員に任せて、昔二人でよく行ったバーへと向かった。
久しぶりに入ったバーの中は、俺と広田の気まずい雰囲気以外は何も変わってはいなかった。




