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赤い日記帳  作者: 大和香織子
第一章 事件
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第一章 事件



『ニュース速報


 ##県##市##町2の河川敷で遺体の一部らしき者が見つかり、検視の結果、十二日の午前中に殺害されたと見ていることが捜査関係者の取材で分かった。


  ##県警は十二日から行方が分からなくなっている無職の藤崎靖子42歳との関連を調べている。


______その後の調べで、被害者の携帯の履歴から幼稚園関係者が捜査線状に上がり、取り調べを行う』


あずま 裕子ゆうこ26歳。


十二日は、朝からパート先にバイクで行きました。そうですねぇ、毎日7時半過ぎには家を出ますから、当時もそれくらいだったと思います。


____知り合った時ですか?


 藤崎さんとは、一年間かるた幼稚園の役員会を一緒にやっていましたから、連絡交換をしたのは、一昨年の四月頃だったと思いますよ。

 今回の事件は藤崎さんが被害者で間違いないですか?


 同姓同名とかではなくて?

 自分の身近にこういう痛ましい事件が起きるなんて、信じられないです。こんな悲惨な事件に巻き込まれるなんて…。


_____恨んでなかったか?


 結構単刀直入に聞くのですね。まぁいいですけどね。

 先に言っておきますけど、藤崎さんを殺したのは私じゃないですからね。

 好きではなかったですけど、恨みはなんてありませんし、ましてや殺害なんて絶対にしません。


____当時のメンバーについて知っていることですか?


 そうですねぇ、まず芦田さんから。


芦田さんとは、何度か食事もしましたが、本当に普通の主婦です。

芦田さんは上川さんとも、仲が良かったと思います。


 芦田さんは、藤崎さんとは馬が合わなかったようでした。


というか、正直言って、藤崎さんのことを好きっていう人は、はっきり言って一人もいませんでしたよ。


 役員会の中だけではなく、幼稚園の中でも、不満の声が上がっていましたから。


 私も、藤崎さんからは色々言われましたし。


 まぁ私は仕事で毎回は役員に出ることが出来ませんでしたから、それほど深い付き合いはしていませんが。


 それでも、たまに出席することが出来た時には、露骨に嫌な顔をされて掃除くらいしなさいよと、すごい剣幕で言われましたけどね。


 普段出れないので申し訳ないという思いもありましたが、あまりにも言い方がきつかったので家に帰って、泣いてしまいました。


 私や、芦田さんにはそういう態度でしたが、多分言いやすかったのだと思いますが、ある日幼稚園の行事にOBの方がいらしたんですけど、藤崎さんはその方が来ることが事前に分かっていた様で、高級なチョコレートのお菓子をその方にお渡ししているところを偶然見てしまったのです。


 そこへ藤崎さんは私の姿に気が付いたようで、その時は思い切り睨まれました。戦慄が走りましたよ。


 たまにしか出ない私にさえ、そんな態度なのですから、毎回きちんと出ていた芦田さんはもっと大変な思いをしたと思いますよ。

 特に、藤崎さんは芦田さんが気に入らなかった様子で、必要以上にキツイ口調で接していましたし、芦田さんが発言しようものなら、藤崎さんは思いっきり全否定していましたから。

 見ていても、気の毒になるほどでした。


同じ役員だった、上川さんも芦田さんのことを凄く心配していましたよ。


 私は、上川さんとは幼稚園内でしかお話したことがないのですが、上川さんはアッサリしているので、藤崎さんが何を言っても、それ以上に言い返していました。


 それも、藤崎さんの喧嘩腰な言い方に同調するんじゃなくて、笑顔でサラッと、藤崎さんの言うことを否定するんです。

 そんな上川さんを見ていて、清々しましたね。




芦田あしだ 修子しゅうこ 33歳。


 この度は、大変驚いていて、まだ気持ちの整理がついていません。

 藤崎さんの事を知り、具合が悪くなり、朝一で点滴を受けました。

 色々ありましたが、ショックです。


____十二日ですか?


 その日は上の子の参観日に行っていました。

 午前中は、すぐ近くに住んでいる母が、買い物に連れて行ってほしいというので一緒に行きました。


____藤崎さんと知り合った時ですか?


 二年前の四月頃、かるた幼稚園の役員になってから、連絡先を交換しました。それまでは、子供同士の学年も違うので、顔も知りませんでしたし、話したこともありませんでした。


 ただ、藤崎さんの方は事前に私の事を調べていた様でした。

 というのは、幼稚園の方から、事前に役員のお願いの連絡がありまして、役員決めの時には、私が役員になることは決まっていたのです。


 役員決めの日に、藤崎さんが私のところにわざわざ来たんです。


「あなたが芦田さん?」って聞いてくるので「はい」って返事をしたら「よろしく」と言われたので、まだ事情が呑み込めていない私は、なんで?と思っていたのですが、役員決めが終わってから、そのメンバーの中の一人が藤崎さんだったことを見て、私が役員になることを知っていてわざわざ来てくださったんだなと分かったのです。


____恨みはなかったか?


…。

そうですね、ない、といえば嘘になります。

今生きていたとして、また会いたいかって聞かれたら首を縦に振ることはできませんから。


 こんなことを言って疑われるのは嫌なのですが、藤崎さんと私は、意見が合わないことが多々ありました。


 意見が合わないだけならいいのですが、私が一言何か言うたびに「それはダメ」とか「5回はやり直しなさい」とか言ってくるのです。

 私の意見が嫌というよりも、私の存在自体が気に入らなかったのだと思います。

 役員会に行けば、私の座る椅子だけ無くしたりしていました。まるで無の様に扱われました。


 そんな感じが続き半年が過ぎたころには、食事が喉を通らなくなり、次第に家の事まで出来なくなってしまいました。

 そして、過呼吸を起こし、すぐに救急車で運ばれました。

 過呼吸になった時のあの恐ろしさ、死という恐怖が押し寄せて、呼吸ができない苦しさは生きた心地がしませんでした。


 あの時主人がたまたま在宅中でしたので、私一人だったらどうなっていたことだろと思うと、不幸中の幸いでした。


主人もかなりパニックに陥ってはいましたが。

 二度目からは、紙パックをもってきて息をゆっくりするように背中をさすってくれたりしますが、こういうのは周りも慣れないようです。


_____藤崎さんが原因か?


 すべて藤崎さんのせいにはできませんが、当時の私は藤崎さんの事でかなり悩んでいました。

 実は過呼吸が出る前から色々と異常が身体にまで現れていたんです。ダニのようなものに刺されたと思い放置していたのですが、あまりにもチクチクするので病院に行ったら、帯状疱疹だと診断を受けました。幸い発見が早かったので、飲み薬と塗り薬だけで一週間ほどで治りましたが、そのまま放置していたら後遺症が残ることがあったと聞いた時には、背筋が凍る思いでした。


 治ったと思った頃には、今度は中耳炎になったり、他にも体調不良で病院に行きCT撮ったりなど、その年は、病気が多い年でした。


 でも、役員の仕事から解放されてからは、これまでの体調不良が嘘のように消えました。


 最近、少しずつですが心に余裕も出てきたので、藤崎さんとのことも許そうと、それでもお世話になったこともあるのだから感謝しようと思っていた矢先に、こういう事になってしまい、まだ私の心の中で整理がつかず混乱しています。

 藤崎さんは、どこかでまだ生きているんじゃないかって思っています。


_____東さんですか?

 同じ役員のメンバーでした。何度か食事にも行きました。

 東さんは、役員にもですが幼稚園の行事にほとんど来ていませんでしたが、彼女とは割と仲良くしていて、今でも連絡を取り合っています。


_____東さんと藤崎さんの関係ですか?


 仲は良くなかったと思いますよ。

 東さんに藤崎さんが接している態度も見ていましたが、それを見てこちらまで気分が悪くなりました。

 藤崎さんは、東さんが仕事に来ない事を、毎回のように言っていました。

 東さんも、たまに愚痴をこぼしていましたし。


_____川上さんですか?


 今もとても仲良くさせて頂いています。

 川上さんは、すごくサッパリした方で、すごくハッキリ言う性格な分、表裏がなくて信頼できるんです。

 いつも園内では一緒に行動させていただいていましたよ。

 藤崎さんとの関係は、やはりいいとは言えない関係でした。

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