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デビルズカード【赤】  作者: にがよもぎ
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ダイヤK~A クラブA~K

ダイヤとクラブです。

時間的には最初になります。

 確かに彼は不思議な魔法を見せてくれるといった。

トランプを出して、ダイヤのKから順にいわれるままに書いた。

右手、左手、右足、左足、頭、胴。

どんな手品を見せてくれるのだろう。

初めて男の人の部屋に入れてもらって私はうきうきしていた。

彼は私の親友の恋人。

私は別の人と付き合っていることになっている。

私の彼はサッカー部のキャプテン。

ここにいる彼は昔試合中の怪我でサッカーをやめた。


でも……。


「ちょっと目隠ししてね」

「うん」


 彼が用意したアイマスクを自分でつける。

今部屋の温度が変わったような。

真っ暗な中、私の唇にあったかくて柔らかいものが触れる。

私の心臓はずきんと跳ねる。

彼が何か呟いていたけど良く聞こえない。


「もう取っていいよ」


 先ほどから感じるように、息のかかる距離に彼の顔があり、私に近づく。

そして離れる。


 彼の指が私の服の上で踊り、私の肌は外気に触れることを望む。

彼の指は今度は自分の服へ。

いつも、あの子が私の前を歩いていた。

今日、初めて私が前へ出る。

かなり無理をして買った黒いレースの布切れが下に落ちる。


「もうそろそろ始まるよ」

「え?」

「魔法の時間。右手を見て」

「ぇ、これなに?」

「だから魔法だってば」


 これ私の手じゃない。

グー、チョキ、パー、でも私の手じゃないっ!


「これ見て、次は……そろそろ左手の時間だよ」


 彼が後ろに回していた細い手を見せる。

それ、私の手?

呆然としていると体が傾く。


「君って僕より足が長いんだね」


え?

君って、彼は私に一度もそんなことを言ったことが無い。

それに僕って……。


「あんた誰!」

「ジョーカーに強く念じなければ思い出せないと思うよ、いや、もう僕は君さ。素敵な先輩がいるのに浮気しちゃ駄目じゃないか」


 彼の顔が私の顔になる。


「しかしあいつになっただけで君がこの僕にほいほい付いてくるとは思わなかったよ。彼氏がいるのにちょっと尻が軽る過ぎないかい? 君とゲームする前ににね、彼とゲームして君みたいに全部交換してやったんだ」


 私の顔をした男が、次の瞬間に完全な女になって言った。

取り替えたって、私の顔が彼の顔になっているのか。


「ゲームに勝って希望のものをカードに書けば対戦相手とそれを取り換えることができるのさ。さっき自分で僕と交換してほしいものを書いただろ? 実は最初の6回、君が勝っていたんだよ」


 この変態に飛び掛ってやろうと思ったけど、体が動かない。


「さっき体が痺れる薬を飲んでおいたんだ。今は君のお中で溶けだしてるみたいだけどね。しかし君よくこんなのはいてたねぇ。はずかしくない?」


 私の勝負下着を摘み上げて倒れた私の鼻先にぶら下げた。


「僕もこれ好きだよ」


 自然な手つきで背中にまわしてブラを留め……ニカッと笑う。


「今交換したのは【経験】よ。確かに全部あなたをいただきました。まだジョーカー持ってるなら自分の意識はあるでしょ?」


 そのとき階段を上がってくる足音が聞こえた。

それがこの部屋のところで止まる。

助けて! と叫びたいのに声が出ない。

カチャリとドアノブが回ると音がして誰かが入ってくる。


「終わったみたいだな。完璧に入れ替わってるね、区別がつかないぞ。しかし何でこいつ裸で転がってるんだ?」

「服を脱がせないと、変わっていくところが見えないからつまらないじゃない。転がってるのは薬を飲んでいるから。もう意識はないわ。それより、先輩これあなたの彼女でしょ。もうちょっと別の言い方ないの?」

「俺をうらぎったそんな尻軽女どうでもいいのさ。次は俺の番だカード貸せよ」

「ちょっと待って、黒いジョーカ-が有るでしょう」

「あれはあいつのところに置いてきたんだ。自分の大切なものが全部取り替えられるところを見せてやら無いといけないからな。だからカードセット貸せよ」

「趣味悪いわねぇ。でも1試合開いたからあいつに挑戦権ができたわ。またゲームで取り返されたらどうするのよ」

「ジョーカーがうまく騙すさ。あいつらは召喚した俺たちの命令しか聞かないから大丈夫さ。今頃覆いっきり嘘八百並べてると思うぜ」

「やっぱり趣味悪い」

「まあそう言うなって。しかしお前、ホントに女になったんだな。ちょっと触らせろよ」

「だめよ、まだ私が楽しんでないんだから。とりあえず私のジョーカーは予定通りに美咲ちゃんに渡るようにしとくわね。あなた美咲ちゃんとゲームしたいんでしょ?」

「あの女もキャプテンの俺より怪我して辞めたあいつのほうが良いなんて言い出すからな」

「あいつなんて今はただのキモオタよ?」

「はは、キモオタだったのはお前じゃないか。万が一あいつが挑戦してきても、ルールも知らないやつに俺が負けるなんてありえないさ。じゃぁ行ってくらぁ」


 出て行く足音、そして私をまさぐる手。


「やっぱり意識は無いみたいだね。明日のお昼まで動けないから、自殺なんて出来ないよね。せっかく入れ替わったんだから戻ってくる元の魂に追い出されたりしたくないんだよね」


 あいつは何かごそごそとしている。


「自分が一番優秀なつもりで馬鹿だね。見てくれだけは良いから君なんかが引っかかるけど。あ、ごめん。引っかからなかったんだっけ。もう遅くなったから自分の家に帰る。じゃぁまたね」


 私を残して部屋から出て行った。

なに、なによこれ。

意識が遠のき、気が付いたら夜明直後。

急がなくっちゃ。

あいつが何かする前に戻らなくっちゃ。


 私はあいつが残して行った服を仕方なしに来て表に出る。

なにか、なにか……あった。

私は玄関にあったそれを引っつかんで表の公園に出る。

そして頭からかぶってパチン。


「キャアー! 燃えてる」

「救急車、いや消火器」

「あれ本田君じゃない?」

「とにかく水!」


「ホント馬鹿だねぇ。戻れるわけ無いのに」


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