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デビルズカード【赤】  作者: にがよもぎ
13/14

ハートQ スペード2

一気に3話投稿、その2

 朝6時、机の上のピンクの日記帳が黒く変わる。

ドキドキ。

読まねばならない使命感、そして男性の日記を読む好奇心、他人の秘密を覗き込む背徳心。

ドキドキ。

う~ん分厚い。

体調よくないし、今日は学校休もう。


 部屋に閉じこもって日記を開く。

1ページ目は3年前のお正月。

同じ中学校へ通ってた。

あいつのくせに几帳面なきれいな字。

結構見慣れていて……? 

やっぱりそうなんだっけ。

普通の日常に続いて練習での事故。

全国的にも知られる選手だったのに、あれはこの年の冬だったんだよね。

この時あいつに後ろから足を引っかけたのは片桐先輩!

そこまでは知らなかった。

書き綴られているのは苦悩の日々。

恨み言……あいつ荒んでたよね……思い出した、記憶にないはずなのに。

それがあるときに変わっていく。

読み進めていくと顔が赤くなる。

その~なんというか恥ずかしい。

別にいやらしいことが書いてあるのではない。

ものすごく純情というかなんというか、日常の様子が大部分だけど淡い恋心。

相手が私……こんないい子じゃないのに。

ちょっと読み飛ばそう。

あった、本田君とのゲーム。


”本田は土下座して謝った。片桐さんに脅されてカードゲームをした。意味不明……彼女が俺を無視する。なぜだ?”


 そうだったんだ。


”あいつから電話、美咲ちゃんを追い詰めて自殺させる”


 えっ? ええっ??


”ふりをする。死ぬのは僕だ。僕は片桐さんに脅されて人を殺した。だから責任を……”


 自殺させるふりをするってなに?


”公園にかけつけた俺は本田がわけのわからないことを言いながら灯油をかぶるのを見た。だけどあいつが火をつけた瞬間に表情がいつものあいつに……「今完璧に全部とりかえが終わった。僕は僕だ。美咲ちゃんをたのむ~」”


 完璧に全部取り替えた?

僕は僕? どういうことなんだろう。

……。

読み進んだらわかった。

全部完璧に取り替えたら、取り替えてないのと同じ、そっかぁ。


”本田も美咲ちゃんが好きだったらしい……”


 そなんだ……


”……本田からゲームのカードとルール、必勝法が届いた……”


 必勝法?


”先攻して8-6のときに【山札】を交換する”


 これって……。

震えが来た。


”片桐相手に完勝、【恋人】と【健康】を奪ってやった。それ以外あいつのものなんて欲しくない……予想と違って片桐の恋人は玲奈ちゃんのままだった。てっきり美咲……”


 ばか……。


”美咲ちゃんに挑まれる。敵意のこもった目、こいつ中身は誰なんだ?”


 それであんな目で私を見てたんだ。


”……おかしい、どう見ても美咲ちゃんは美咲ちゃん……”


 ふむふむ。


”理性が飛びそうだ……家族でお風呂だと!”

”……ごめん、不可抗力……”


 日記を閉じる。

ドキドキする心臓。

ほんとにもう……。

あいつはしっかりと男してた。

私の体にも……結衣にもそして……

どうしてくれよう……ふっふっっふ……。


”ジョーカーが報告に来た。「契約どおり、本田と片桐の魂はいただきました」 本田は知っていたらしいが片桐は知らなかったらしい。二人とも自殺せねばならなかったようだ。西洋では自殺そのものが神に対する……これで美咲ちゃんが岬ちゃんで有ることが確認……”



”なんてことしてくれたんだ。きちんとヒントは出してあったはず。何で俺にホモ疑惑なんか……俺は美咲ちゃんが好きだ~~~しかし体のほうが後なのか……”


 深刻なのは分かるけれども笑っちゃう。

私と本田君が恋人同士になっていたから【人間関係】を取り替えちゃうと……ぶぶぶ!

同情心は無い。

好きだ~~~にも何も感じない。

私ってクール。

それでいいんだろうか。

何かが違うような。


”……一度は恋人同士になれたなら、努力でもう一度必ずなれるはず。俺の愛は不…”


 ちと重い。

今はがんばってねとしか言えない。

どうしちゃったんだろう、私。



「ジョーカー!」

「はぃっ、なんでございましょう」

「本田君たちとあんた達がした契約ってなに?」

「それはでございますねぇ。知りたいですかぁ? やめておいたほうがいいと思いますよぅ?」


 寒気が走る、本能が危険信号を発する。


「質問替えるけど、ゲームで支払わないといけない何かはもうあの2人が支払っているのよね?」

「そのとおりでございます。ワタクシドモジョーカーが存在するに当たってのコストとゲームの運営コストはお支払い済みになっております。後はお気兼ねなくご利用ください」


 はっきり言わないけど、人を殺したというあれと、自殺したというあれね、おそらく。


「さようでございます」


 わっ! びっくりしたぁ。

こいつ私の心が読める。


「もちろんでございますとも」

 

 しゃべらないでいいのね、楽ちん。


「そういう問題ではありませんですよ、きちんと声に出していただかないと困ります」


 なんで?


「そこをそうつっこむのですかぁ?」

「まあぁいいわ、またね」

「はい、失礼いたします」


 ぶさいくなやつ。


「ぐはぁ」


 おもろぃ。



 

 あっ、電話。

あいつからだ。


「もしもし、俺だ」

「オレオレ詐欺はお年寄にどぞ」

「違うって、真田です」

「最初からそう言えば良いじゃない」

「それより俺の日記帳返せよ。このピンクの白紙の日記帳とお前が交換したんだろ?」

「お前ってなれなれしいけど、そうだよ」

「おまえなぁ、一方的に他人の日記を覗くってどうなんだよ」

「たまたまね、私がつけているのは秘密の日記、そのピンクのが日記帳って表紙に書いてあるでしょ?」

「卑怯者」

「ちがうも~ん。それより努力、努力」


 あ、切られた。

うふっ、かわいい。



 そして夜のゲーム。

ハートQ スペード2。

もちろん私が書くのは スペードA。

ハートKって書こうとしたらだめだったからね。


 さて、明日が最終日、気合入れなくっちゃ。

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