ハートJ スペード3、クラブA~K スペードK~A
今日も早くから目が冴える。
別にテーマパークに行くのが楽しみで、ではない。
人生をかけたゲーム中なんだ。
とりあえず昨日まで出必要なものは全て取り戻したはず。
とりあえず今日の予定。
前日の内に玲奈にはメールを打っておいた。
”妹がどうしても行きたいんだって”
”了解です”
実際にはこんなに短くは無かったけど、返事はそっけなかった。
私と玲奈の関係ってこの先どうなるのだろう。
想像するのが怖……?
どうしたんだろう、なんか変だ。
「ジョーカー!」
「はぁい、お呼びでございますですかぁ」
「ねぇ、もしかして……私って以前に誰かがしたこのゲームで記憶を書き換えられたりしていない?」
「世の中全てが変わってしまいますので、そのようなことが有るかもしれませんですねぇ。でも全てを知ることが出来るのはカードの持ち主であるマスターだけでございますよ。ワタクシメが復活することが出来るのは赤いジョーカーで行われたゲームだけですし、黒のはちょっと無理でございます」
「半分は何をされたのか分かるのね」
「私のカードを持って強く念じれば可能でございます」
確か、ジョーカーを持って強く念じると、なんて書いてあった。
だけど……。
「何か代償が要るとか無いわよね」
「無料サービスでございます、もちろん。しかしそんなものお知りになられてもよいことは何もございませんですよ?」
「いいから教えて」
「では」
ジョーカーがいなくなった真っ白なカードを持って念じた。
私の前にゲームが一つ、クラブA~K スペードK~A。
あいつVS本田君。
あいつは目隠ししてあの世界のテーブルについている。
あいつが先攻で始まる。
最初に取り替えたもの……えっ、なにこれ。
箱の中のビー玉、消しゴム……あいつのターンでガラクタばかり……あいつは手で触って笑っている。
そうか手品ってごまかしてるんだ。
それから本田君のターン。
取り替えられたものはやっぱり、えっちょっとまって、最後の二つはジョーカーが勝手に書いて【友達】【恋人】!
本田君の恋人って私、ちょっと待って。
本田君ってキモオタだけど私の……。
……思い出した。
私の恋人はサッカー好きだったけど事故で……真田君。
そうだったんだ。
「お姉ちゃんどうしの?」
「顔色悪いよ?」
テーマパークで食べるお昼。
結衣と玲奈、2人が心配して私の顔を覗き込む。
「えっと来週の予定だったんだけどちょっと早く来ちゃった」
女同士、それで通じる。
でも玲奈と私の距離は友達というにはやっぱり近かった。
「もう大丈夫。ちょっと激しいのは無理だけど」
実際のところストレスが溜まったからか本当に来ちゃった。
しかし悩んでいても仕方が無い、せっかく忌憚だもの遊ぼう。
激しく揺れるのは無理だけど。
それで絶叫マシンは私ひとりでお留守番。
下から見ているだけで結構楽しい。
来て良かった、本当に。
結局閉園の花火まで見て帰った。
でもごめんね、心配させて。
帰りは駅から近い玲奈の家に寄って……。
「ただいま~」
「お帰りなさい。楽しかった?」
「うん、お土産買ってきた」
「それじゃ、ここで失礼します。またね」
「ちょっと待って」
「……」
「じゃぁね」
「玲奈ったら玄関先でキスなんて美咲ちゃんが困っちゃうでしょ。今度から中でしなさい」
「だって~」
ははは、私たちの仲って親公認だったのか。
結衣も認めているらしい。
なんか困った。
「お姉ちゃん、私も入る~」
「え?私もう出るよ」
帰ってお風呂に入っていたら結衣が突入してきた。
うちのお風呂は洗い場込みで広いけれど、浴槽だけだと二人はきついのに簡単にかかり湯だけして入ってこようとする。
私はすり抜けてお湯から上がった。
なんか変。
そのまま脱衣場に出る。
もしかして、あいつ結衣に何かしたのか。
湯上りなのに血の気が引いた。
大急ぎで髪を乾かして自室へ。
久しぶりにかぎを掛けた。
結衣のあの目、あの顔、まるで恋人を見るような……もっと原始的なメスの……やだ。
原因はあいつしか……。
あいつが原因だとして、何をしたのだろう。
どうしたら元の結衣に戻るのだろう。
ベッドに倒れ込んで考える。
最近こればっかり……くすっ……ちょっと余裕出たかも。
それにしても今日はJの日。
明日のQではカードを交換しなければならない。
だとすると今日の交換がすごく重要。
う~考えがまとまらない。
がんばれ私!
う~。
何気なく机を見る。
取り換えられた愛読書がそのままあるけど、そんなもの交換しなおすはずがないよね。
!
そうだこれ!
これを交換すればいいんだ。
あいつは絶対これを持ってる。
だって小学校の3年生の時に先生に褒められてそれからずっと続いてるはずだもの。
私もだけど……これがあった。
夜、またジョーカーが迎えに来る。
当然ハートJ スペード3。
いつものようにゲームが終わり、あいつは帰って行った。
私がカードに書いたのは【日記帳】。
絶対にあいつは正直に書いてるはず。
だってそれが先生と私たちの約束なんだもん。