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デビルズカード【赤】  作者: にがよもぎ
11/14

ハート10 スペード4

 今日は土曜日、学校は休みになる。

だから特別な何かがない限りいつもはお昼近くまで寝ている。

しかし今日は夜明け前に目が覚める。

ドキドキ、布団にもぐりこんだままそのときを待つ。

そして交換が行われる6時になり、変化は一瞬で終わった。

上半身、うん、有る。

下半身、もちろん、無い。

私は音を立てないようにそっと起き上がり、パジャマを脱ぐ。

あいつがいたずらしていないかきちんと調べなくっちゃね。

姿見に映った私には異常は無い。

あいつ、もしも私の初めてを……殺す!

用意した手鏡で……あ!あいつがいる!!


「ジョーカー!」

「おはよう。ございます。お化粧でしたらワタクシメにはお構いなくどうぞお続けください」

「なによ、お化粧するのにあなた荷なんか遠慮するはず無いでしょ」


 にくったらしいやつ、わざとお化粧なんて……いきなり始まっちゃったんで対策で着なかったけど、昨日のあれも当然見られているだろうし、うん、開き直っちゃえ。


「あいつにいたずらされていないか調べるのよ、はずかしいから出て行ってくれる」

「そうですか……残念ですが……失礼します」


 ジョーカーはポンッと音を立てて消えた。

真正面から注文をつけると逆らえないらしい、勝った。


 絶対に誰にも見せられない格好でのひととおりの確認が終わり、安心したと同時にこんないい女に手を出さなかったあいつに……いけない、思考が昨日のあれを引きずって男化している。

気をつけなくっちゃ。

じっくり調べてみたもののはっきり言って分からない。

何もされなかったことにしておこう。

それより、私は何か大切なことを忘れている。

カードの力で世界が変えられていく。

そのときに出来た歪みか何かが……分からない、分からない。



 あっという間に時間が経って朝。


 「お姉ちゃん、明日玲奈さんと遊びに行くんでしょ。私も行きた~い」


 ?……!


 明日は玲奈とテーマパークでデート……遊びに行く約束してたんだ。

私じゃなくってあいつが。

あいつのした約束を思い出すってかなり変なことだけど、気になっていたなにかってこれかな?

ううん、もっと重要な何か……やっぱりこれでしょ。


「しかたないわね。連れてってあげるけど、入場券は自分のお小遣いで買いなさいよ」

「優しいお姉さまとしてはそのぐらい出してくれても」

「優しいお姉さまとしてはお昼代ぐらいしか出して上げられないのです。後はお父さんと交渉してね」


 あんなことがあって玲奈と2人っきりで会うのが怖い。

心の奥で別の意見を叫ぶ何かがあるんだけど無視した。


 私以外はどこかへ出かけてしまって一人のお昼はカップめん。

レトルトのチャーシューやいろいろと結構贅沢。

勉強も何もせずにベッドで寝転がって天井を見ている。

ふぅ、いろんなことがありすぎて考えがまとまらない……?

ものすごい違和感!

こんな風に何もしない休日って今までしたことあったっけ?

なにこれ、なんか怖い……。

勉強しよっと。


 落ち着かない。

もういっぺんゲームのルールを確認。

……。

……!


「ジョーカー!」

「は~ぃ、お呼びでございますかぁ?」


 すぐに赤いジョーカーが目の前に現われて慇懃に礼をする。


「ちょっと聞きたいんだけど」

「はぃ、なんでございましょう」

「カードを持っている場合だけカードで交換した変化を認識できるのよね? それでカードを手放したらゲームでのことも全て忘れちゃうのよね?」

「さようでございます」

「じゃぁ、

「カードをゲームの途中で手放したらどうなるの?」

「ただその時点でゲームが終了するのですが、それがなにかいたしましたか?」

「確か、ゲームの途中で手放さないと地獄行きだとか聞いた気がするけど」

「さようでございます。ジョーカーを受け取ってすぐにお捨てになられれば何事も無く最高でしたですよ」

「じゃぁ、先攻して5,5の時点で勝ち逃げとか」

「必勝法の一つではございますが、カードが手元に残りませんので一度しか使えない方法でございます」

「へぇ~、もしかして別の必勝法って……残りのカードも取り替えることが出来るの?」

「真田様の必殺技でございますが、それがなにか」


 ……あいつの必殺技?……それで片桐先輩に完勝したんだ。

しかし、それにしてもこのジョーカーは口が軽い。

何を交換されたか分からなかったあの日、交換されたのはハートのKかスペードのA、多分間違いない。

しかし交換されていないのなら最後の一枚で負けてしまう。

どうしたら……。


「ジョーカー!」

「はい、なんでございましょう?」

「ゲームで使うカードだけど、確認できるの?」

「前半部を終わりましたのでご自分の山札でしたら確認出来ますですよ。順序を入れ替えたりしても無駄ですので、お分かりですよね」


 ジョーカーはそこで意味ありげに笑った。

あいつはいつも先に来て先に帰る、よしっ。



 そして夜、またゲームが始まる。

ハート10 スペード4……。

勝った。

う~ん、カードを手に持ってうなる。

あいつは立ち去り際にちらっと私を見ただけですぐに帰ってしまった。

とりあえず【親戚】と書いてカードを処理してから自分の山札を見る。


「やっぱり」


ハートJ、ハートQ、そしてスペードA。

やっぱりやられてる。

赤いジョーカーは楽しそうだ。






 

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