剣と魔法に銃
俺は気付けば異世界に赤ん坊として転生していた。いや何を言って〜〜になるんだがこれはマジだ。
前世は日本人なのは確かだが名前や家族とかの記憶は全くと言っていいほど思い出せない。
記憶喪失かと思ったが二次元の嫁や漫画、アニメ、ミリタリー等の知識は知っていたから一部の記憶が欠けていると言った方が正しいと思う。
まぁそれは良い。そして赤ん坊となっていた俺だが此処――この世界は地球ではないみたいだ。
ユーラシア大陸やアフリカ大陸とかの大陸はあったが此処は大陸が三つしかない。大陸と言ってもユーラシア大陸級が一つ、マダガスカルのような島が二つしかない。マダガスカルのような島も此処では大陸らしい。
そして俺がいるのはユーラシア大陸級の西――フランスやドイツのようなところにいる。本当かどうか確かめたいが俺が知っている地図は適当な線を引いている地図が多い。ある店によってはマダガスカル級の島が一つ足りないとかな。
まぁ自分が住んでいるところなら他は構わないんだろう。
それはさておき、赤ん坊に転生した俺が衝撃を受けたのはこの世界には魔法や魔物がいるとの事だ。
この魔物は地球で描かれた魔物が多い。兎が魔物だったりするし。
魔法が存在するというのは俺も驚いたと同時に嬉しかった。もし俺が魔法を使えたら面白いと思った。
だが現実は甘くない。学校の適性検査で魔力は一切無いと言われた。まぁ確率があるし仕方ないと思った。学校は他にも冒険者を育てるために使われている。魔物がいるから人々を守るためなら冒険者もいるみたいだ。
そして俺の実力というのが……上中下で例えたら中の下に近い。つまり落ちこぼれなんだなこれが。
冒険者になるためにはギルドで登録してもらう。その時にランク付けされるのだがA〜FのFだからな俺のランク。
……まぁ某野球ゲームの初期ステだと思えばいい。ギルドに入ってから一年経つがランクが上がるには経験値が足りないみたいだ。
俺としては底辺でも満足している。二次元での「RPGィ!!」が本当になっているしな。
それと俺の名前はミカサだ。
「さて、説明は終わりだ。今日も薬草と兎を狩りに行くか」
俺はピッチ草原で拾った両刃剣と鎧を装備しギルドが所有するアパートを出てピッチ草原に向かった。
「ぶっちゃけ薬草と兎だけでもそれなりに収入はあるんだよな」
兎は一匹二セン、薬草一キール(此処で言うキログラム)五リンだから食費や武器整備等を一年して三エンを貯金出来てる。
底辺は底辺なりの考え方があるんですよ。
「まぁそれよりクエストしよっと」
そして俺は仕事を始めた。
「さて、帰るか」
夕方、俺は帰る準備をして一路、街へ戻っていた。ちなみに街はパーリィだ。何処かで聞いた事がある? 気にするな、作者は詳しく考えてない。
「……ん? あれは……」
木陰に誰か倒れていた。近くで確認するとそいつは――。
「……旧日本軍の軍人?」
そこにいたのは旧日本陸軍の軍服を身に纏った日本人だった。だが日本人は頭を魔物にやられていたのか既に息絶えていた。
「……日本人も迷い混むんだな」
もしかしたら他に仲間がいるかもしれないが、多分いないだろう。ピッチ草原の近くにはホルスト森がある。ホルスト森は獰猛な魔物が多いし、恐らくそこでやられて何とか此処まで来て息絶えたのだろう。
「今すぐ葬ってやりたいがもうすぐ門が閉じてしまう。明日葬ってやるしかないな」
街には魔物の侵入を阻止するために四方に門がある。夜になれば門は閉じてしまい、遅れたら野宿だ。しかも野宿は死を意味している。
「兎に角、また明日来るよ」
俺は遺体にそう言って街に戻った。そして翌朝、俺はいつもより早くにピッチ草原に来ていた。
遺体の場所に行くと遺体は夜の間に魔物に食われたのか腸が露出したり右腕が無かったりした。
「……五体満足で埋めてやれなくて済まない」
俺は遺体に敬礼をし(これでも一ヶ月間だけだが空自にいた。まぁ辞めたんだが)、持ってきたツルハシで穴を掘り遺体を埋葬した。
「……田中元、此処に眠る……と」
手懸かりを確認したらたまたま日記を付けていて名前は分かった。支那事変に従軍したらしいが詳しい事は字が滲んでいたりしてよく読めなかった。
「……これは使わしてもらいます」
田中さんは三八式歩兵銃と弾丸百二十発を装備していた。(当たり前だ)墓標代わりにするのはぶっちゃけ勿体なかったと思う。
弾丸は六.五ミリだが兎等の魔物は余裕で狩れると思うしな。
俺は簡易ではあるが田中さんの墓に手を合わせ、持ってきた御菓子を置き、カール(此処で言う酒)を木の墓にかけた。
そして草原に向かいクエストをするのであった。
「……狩れるかやってみようか」
ズシッと重く感じる三八式に弾丸を五発装填してボルトを戻す。そして草を食べていた兎に照準を合わせて引き金を引いた。
タァン!! と軽い音と共に飛来してきた弾丸に兎は反応出来ず、頭がグジャっとヘッドショットになった。
「……反動は少しだけだから撃ちやすいな」
俺はボルトを起こして後ろに引いて空薬莢を出させる。そしてボルトを戻して弾丸を薬室に装填させると兎の解体を始めた。
「……ん?」
解体してると兎の胃に弾丸があった。見る限りでは六.五ミリだが……。
「……三八式で倒すと弾丸が手に入るのか」
色々疑問に思ったが無理矢理納得した。そしてその日の兎は五十匹を狩る事が出来た。
「今日は調子が良かったのか?」
「かもしれません」
ギルドの受付の青年に俺はそう言っておいた。そして何時ものように翌朝もピッチ草原に赴くと少しおかしかった。
「ホルスト森の近くにシスターや盗賊らしき人物達が数名いるし……」
草原の木々に隠れたり匍匐前進をして近づく。シスターの周囲には血の池に倒れている冒険者達がいる。
「(動かないと見ると死んでるか。それにあのシスターは街でも有名なシスターエリカだな)」
ちなみにオッパイが大きかったり美人だったりするから街の冒険者達から人気がある。
「(……あの様子だと今から薄い本の展開になりそうだし助けるか)」
既に弾丸を装填していた三八式をゆっくりと構えて頭らしき人物に照準する。距離は約二百、草に隠れてるし兜には草を付けたりしてるから擬装は完璧だ……多分な。
そして何時も兎相手に狩りをするように引き金を引く。頭らしき人物は胸を押さえてるがそれを少しだけ再度引き金を引く。
今度は倒れた。倒れた頭に慌てる子分達だがそうは問屋が下ろさんぞ。
無我夢中でボルトを引いて空薬莢を外に排出し装填し撃つ。その繰り返しを続ける。
最後の一人が倒れたのは十発目を撃った時だ。
「(バレない内に退散しよう)」
状況が全く理解出来ていないシスターエリカを他所に俺は匍匐前進で離れた。泥濘のとこに入ったからパンツまでグジュグジュだよ。
「お、今日は少ないな?」
「まぁそういう日もあるよ」
受付の青年と話して俺はアパートに戻った。そして俺が戻った後、ギルドにシスターエリカが来た。
「今日ピッチ草原にいた奴?」
「はい」
「今日はミカサしか行ってないな」
「ミカサさん? 誰でしょうか?」
「Fランクで一年間兎と薬草のクエストをしているよ。同じクエストを長々としているから中々見込みがある奴と思っているがね」
「ミカサさん……」
「ヘックション!! ……風邪でも引いたかな?」
思えばあの時が悪い虫の報せだったかもしれない。そして街でただ一人、銃を持つ冒険者はクエストをこなしていくのであった。
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