斜め上の間違い
6時間後。
辺りの景色もすっかり暗くなって来た頃。
「お腹すいた~……とも姉、ご飯つくって~……」
力なくそう叫びながら、ふらふらとした足取りでゆめちゃんがリビングのドアを開け、入ってきた。
「あ、終わったんだ……でもちょっと待って。いいところだから……」
「いいところ?って!!」
ゆめちゃんはソファの上にちょこんと座りながら、オレが先程からずっと熱中しているものに気づき、慌ててそばに駆け寄ってきた。
「これ、やっちゃったの!?まだアタシもクリアしてないのに~!」
悔しげにオレの肩をどんどんと叩きながら、ゆめちゃんはそう言った。
ちなみに今、テレビの画面には主人公がかねてからの夢を叶えるため、2年間留学し、ヒロインと涙ながらに空港で別れるシーンが写し出されていた。
「いいシーンだよねぇ……」
しみじみとそんな感想が出てくる。号泣とはいかないが、ホロリと泣けるシーンだと思う。たまらず、ハンカチを取り出し、涙をぬぐう。
「いやさ、アタシ、この二人がどうやって出会って、付き合って、それでこの別れのシーンになったか知らないから、これだけ見てもよくわかんないだけど……」
頬を伝う涙を拭っているオレの横でゆめちゃんはただただ、困った様子でつっこむ。
「はぁ、まぁいいや。それよりなんか食べるもの作ろ……お腹すいて倒れそう……」
ゆめちゃんはオレを横目に見つつ、台所へと向かった。
結局、晩御飯はゆめちゃんが作ってくれたものを食べ、オレはこのあとも一日中ゲームに熱中しているのだった。
「よし、帰ったらこれ買おう……」
ティッシュで鼻をかみながら、そんな感想を漏らすのだった。




