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間違いのさらなる先
そろそろ秋になろうかというある日のこと。
オレは久しぶりにゆめちゃんと電話で話していた。
といっても、オレからかけたわけじゃない。家に帰ってきて、ソファに座ったと同時に向こうから電話がかかってきたのだ。
「久しぶり。どうしたの?」
化粧落としで顔を拭きながら、そうたずねる。
「実はさ、とも姉にお願いがあって……」
「ん?」
なんか珍しく、テンションが低いような。声もどこか暗い感じだし……
「とも姉はさ、冬コミって知ってる?」
「え、うん。名前くらいは。行ったことはないけど」
冬コミってあれだよな、夏コミと同じような同人誌即売会。
あ。ってことはなるほど。それに来てくれないか?ってお誘いかな。
「もしかして、サークルが出展するからそれにお誘い?コスプレしなくていいなら行くよ」
夏コミのことを思い出し、冗談混じりに言ってみる。
「話が早くて助かるよ。それとさ、もう一つお願いがあって……」
「ん?」
そこで聞かされたゆめちゃんからのお願いは、信じられないものだったが、絶対に放ってはおけないものだった。




