巡りめぐる間違い。その2
「もう少ししたら帰ります……とてもじゃないが、やってられん……」
言って、コップの中の飲み物を全て飲み干す。
「うん。他の人には上手く言っとくから……ごめんね、ほんと」
「……」
そんなしおらしくされると、なんか調子狂うな……いつも騒がしいくらいなのに。
と、そんなことを思っていると。
「あなた達も一緒に話しましょうよ」
目の前の席にいたオトコが話しかけてきた。
「あ、すいません……」
謝りながらさりげなく一瞥。
見た目は普通だな……そういえばさっき自己紹介したけど、確か銀行に勤めてるんだっけ……成瀬とか言ったっけ。
「あーごめんなさい!この子、こういうのあんまり慣れてなくて!」
香織さんが慌ててフォローに回る。
「あ、そうなんですね……実は僕も慣れてなくて……」
恥ずかしそうに頬をぽりぽりとかく。
それから約2時間後。
相も変わらず、騒ぎ続ける一行がいた。
「あー!」
ビールを飲み干し、ダンと勢いよくテーブルに叩きつける。
「すげー!これで10杯目!!?」
周りがざわざわと盛り上がる。
「あ、アタヒも負けてられませんね……」
呂律も回らない状態になりながらも、ジョッキを上げ、必死になって強がる。
こんなところでオトコが負けるわけには……
と、心の中で思いながらも既に身体はフラフラ。とうに限界だった。
「もうこの辺にしといて、どっかで休みましょ……」
崩れ落ちそうになるオレの身体を銀行マンの成瀬君が支えてくれる。
「あ……」
ダメだ……今にも意識がなくなりそう……
なんか……妙に眠い?
オレってこんなにお酒弱かったっけ?
そんなことを思いながら、オレの意識はあっという間になくなっていった。
「ん、んん……」
目が覚める。
天井を見つめながら何度かまばたきをする。
あー……どこだ、ここ……
少なくとも居酒屋ではないよな。全然うるさくないし……
それに何だか地面が柔らかい?
ゆっくりと右手の方に視線を向ける。
ベッドの上にいるのか……って……!!!?何でベッドに!?
慌てて飛び起き、周りを見渡してみる。
綺麗な内装に柔らかいベッド……ここはホテルか?
じゃあなんでホテルに?
そういえば、香織さんと飲み比べしてたときにやたら眠かったような……
あれ?そういえば、香織さんは?
キョロキョロと辺りを見渡すが、人の気配なし。その代わりに何かの音がした。
何かが噴き出していて地面に打ちつけるような音……
これは……シャワーの音?
ま、まさか香織さん!!
酔っ払って動けなくなったオレを介抱するために、わざわざホテルに!!?
って……そんわけないよな。
あるとしてもタクシーで家まで送るとかだろうし。
じゃあ誰がシャワーしてるんだろ……
オレは不安と期待を入り交じりつつ、そろりそろりとお風呂場へと向かった。
そこには。
「ぶっ!!」
飛び込んできた光景にたまらず、吹き出す。
シャワーを浴びているのは合コンで知り合ったオトコの人だった。
何故シャワーを浴びているのか、この際、それは置いておこう。
問題はお風呂場自体。
通常なら外から見えないように窓はボカシしてあるはずなのに、何故か窓は綺麗なガラス張りだった。
丸見えじゃん……!
慌てて覗いてることがバレないように隠れる。
というか、ここ……
綺麗な内装に柔らかいベッド……
それに、あのガラス張りのお風呂……
もしかして……ここ……ラブホ!!!?




