巡りめぐる間違い
8月も過ぎ、そろそろ夏の暑さも秋の涼しさに変わろうかという頃。
「「「それじゃあかんぱーい!!」」」
とある居酒屋で妙に盛り上がる一向がいた。
「それじゃ皆、飲んで飲んで!」
向かい側に座る一人の男性が他のメンバーを促す。
「…………」
そんな中で浮かない顔でコップに口をつけるオレ。
はぁ……早く帰りたいなぁ。
心の中で思うが、まさに今始まったばかり。そう簡単に帰れるわけもなく、それどころか。
「どう?楽しんでる?」
オレの右隣に座る女性がそう声をかけてきた。
「楽しめるわけないじゃないですか……なんだって、この姿で合コンなんか……」
「はは、やっぱり……ごめんね、ほんと……」
苦笑いを浮かべたあと、香織さんはオレに向かって小さく頭を下げた。
何故、オレが女装して合コンに参加しているのか。
それは3日前に遡る。
「合コン?」
仕事が終わり、自宅でくつろいでいると香織さんから電話がかかってきた。
「そう。アタシより先輩の先生がさ、出合いがないから開いてくれってかなり前からお願いされててさ……夏休みに入って部活のある学生以外はほとんどこないし、今のうちにやってくれってせがまれちゃってさ……」
電話越しでも分かるくらい香織さんは落ち込んでいるようだった。
「それは大変ですね……あ、もしかしてオトコとして参加してってお願いですか?」
「それだったら楽なんだけどね……その逆よ、逆……」
「逆…………って!!!無理ですよ、無理!なに考えてんですか!!」
要は女装して参加してくれってことだろ!?大体、女装だって好きでやってるわけじゃないのに!!
「そうだよねぇ……はぁ、どうしよ……」
香織さんは思いっきり、ため息を吐く。
「ていうか普通に知り合いの女性とかに頼んでくださいよ……」
そっちの方がリスク少ないし、頼みやすいだろうに……
「いや、ほら、アタシ、転勤で今の学校にに来たからさ、先生以外の知り合いいなくて……」
「あ……」
そういえば、前にそんなこと言ってたな……
「こうなったら仕方ない……怒られるの覚悟で謝ってみるか……」
「う……」
そう言われると何故か罪悪感が……
「あの先生、怒るとものすごく怖いからなー。もしかしたらこれからの仕事にも支障出るかもなー。最悪、いじめられたりして、アタシ、どうなっちゃうんだろうなー」
「ぐっ……」
グサグサと言葉のナイフが心に刺さってくる。
絶対この人、わざと言ってるよ……
「あーあー、薄情な人だなー。そして可哀想なアタシ……」
なんてわざとらしい言い方なんだ!そしてものすごくめんどくさい!!!
どうせ、今、助けなかったらずっとネチネチと嫌味ったらしく言い続けるんだろうな……はぁ……
「あーあー!わかりましたよ!もー!!ちょっとだけですからね!!」
半ば、やけになって叫ぶ。
はぁ……全く結局、こっちが折れるハメになるんだよな……




