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間違いの意外な結末。その2

その夜。

なんとか家に帰り、靴を無造作に脱いだあと、ふらふらと寝室まで行き、ぼふっとベッドにダイブする。


「あー……」


とんでもない一日だったな……

結局、あの後、コーヒーショップを出てから再び車に乗り込み、会社まで戻った。

社内ではオレが連れ去られたことは、特に噂になっておらず、誰にもいなくなった理由は聞かれなかった。

今日はもう帰っていいよ。と課長に言われ、帰り支度をしているとどこからか視線を感じ、後ろを振り返るとそこには加藤さんがいた。


やばい……と心の中で思ったが、何やら様子が変だった。

というのも何故か、両手を握りしめてプルプル震えているのである。


「あの……?」


とりあえず声をかけて見た。

すると。


ガシッと片手を掴まれた。


「ひぃ!!」


たまらず、小さく悲鳴が出てしまう。


「ごめんなさい!あなたの身体のことも知らずに勝手なことを言って!」


オレの悲鳴など構わずに、加藤さんは今にも泣きそうな様子だった。


「えっ……あの、アタシの身体のことって?」


何を聞いたんだ、この人……?


「そ、それは私の口から……言えませーん!」


口元を抑え、軽く涙を流しながら加藤さんは全速力で走り去っていった。


…………えええー!!!

すっごい気になる!!

なんだ、オレの身体について何を聞いたんだー!?


「って思い出してる場合じゃない……」


オレは鞄の中から携帯を取りだし、とある人物へ電話をかけた。

数回コールしたのち、電話が繋がった。


「急にどうしたの?電話かけてくるなんて珍しいじゃない」


「母さん……今日父さんに会ったんだけどさ……」


そう。オレが電話をかけたのは母さんだった。


「あら?会ったの?どうだった?」


「どうだったって言うか……」


どこから聞けばいいのか……とりあえず、今日のことから話すか……


はぁ……とため息をひとつ吐いたあと、オレは話し始めた。

それから母さんに電話をかけてから1時間以上、父さんのことについて色々と聞いた。

オレが大学に入った頃に部長に出世し、それからほとんど帰れない日々が続いたこと。


そしてオレが今の会社に就職する少し前に、父さんが勤めていた会社と合併したこと。だが、会社自体が小さいので新聞にも、対した記事にもならなかったそうだ。

そして2年ほどで父さんは社長にまで出世したらしい。

母さんは、父さんと頻繁に連絡をとっていたらしく、オレが就職した会社の社長が父さんに代わったことに、すぐに気づいたらしい。


しかし……

電話を切ってから手元を見つめる。

なんで、今まで言ってくれなかったんだ……

ま、どうせ母さんのことだから慌てふためく、ムスコの姿でも想像してたんだろうな……ほんと、たちの悪い……


けどまぁ、なんとかなって本当に良かった……

身体のことは、すっごく気になるけど……

翌日もいつも通り、出勤したが、何やら社内が盛り上がっていた。

何かあったのかと思い、課長に尋ねると本社から是非やってもらいたいといくつかの企画を任されたらしい。

課長は社内監査をしたおかげだと言っていたが、恐らくそれは父さんの仕業だとオレは確信していた。

健康診断のことといい、何だかんだで自分の子供は可愛いってことかなと、少し自惚れる自分がいた。

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