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間違いは、いずれバレる

春の暖かい日差しが射し込み始めたある日のこと。


「というわけで本日から我々の担当になってくださった加藤さんだ」


課長の隣にいる人物は名前を呼ばれたと同時に礼儀正しくお辞儀をした。


「加藤です。よろしくお願いいたします」


目の前に並んでいるオレ達をぐるりと見渡し、そう口を開く。

綺麗だな。見た感じ、歳はオレと同じか少し上くらいかな。

にしても、若い人が本社から来たもんだ。

先程の課長の説明によるとオレ達が働いている会社が元に戻ってから、ある程度時間が経ち、以前と変わらない業績を上げているにも関わらず、請求される費用がほんのわずがだが、増しているらしい。


いわゆる使途不明金というわけだ。

その原因を調査するため、本社から経理の担当が来たわけなのだが。

メガネかけてるからかもしれないけだ、なんか雰囲気がキツいな……

それにあの加藤さんって人、どっかで見た気がするんだが、気のせいかな……


どこかもやっとした頭を抱えたまま、恒例の朝の会議が始まる。

課長達がぞろぞろと会議室に移動していくので、お茶汲み担当のオレもそれに続こうとしたとき。


「河野さん」


後ろから加藤さんに呼び止められる。


「はい?」


な、なんだろ……?

ほんの少し、ドキドキしながら後ろを振り向く。


「皆さんが会議をしている間、あなたに経費についてお話を聞きたいのだけれど。課長さんに尋ねたら、全部あなたに任せてるって言われたから」


はぁとため息を吐き、こちらを見る。


む……その仕草に少しカチンとくる。

お前みたいな小娘には任せてるのか。って呆れてため息を吐いたのか?

だが、残念だったな!ふっふっふ!オレはオトコなのさ!!

って何を威張ってんだ、オレは……

そんな自分に呆れつつ、オレは言われた通りに領収書のファイルを取りに行った。


「えーっと、これで全部です」


空いているデスクに面と向かって座り、ここ1ヶ月の領収書の束をファイルから取りだし、加藤さんに見せていく。


「……」


それを受け取りながら、無言で目を通していく。


「備品の発注は全部あなたが?」


次々と領収書に目を通していきながら、加藤さんは口を開いた。


「あ、はい、大体は私が。他の方もたまにやっているみたいですけど……」


「そう」


オレの返事に対して素っ気なく答える。

なんか尋問されてるみたいだな……

悪いことしてないのについ謝りそうになる。

これが日本人の性なのか!

なんてわけのわからないことを考えていると。


「まず」


沈黙を破るように加藤さんが再び、口を開いた。


「は、はい……!」


慌てて背筋を伸ばす。


「この領収書、これと被っているのだけれど」


言いながら、2つの領収書をオレの前に出してくる。

それを受け取って印字されている内容に目を通す。


「……」


た、確かに被っている。

オレが発注を依頼したものより、領収書を見る限り、1時間ほど前に別の人が発注を頼んでいたらしい。


「すいません……きちんとチェックしていませんでした……」


領収書を加藤さんに返しながら頭を下げる。


「どうやら経費が増えたのはこの人のせいのようですね」


加藤さんは、再びはぁ。と呆れていると言わんばかりの大きなため息を吐いた。


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