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ずっと間違ってる。その2

2時間ほど部屋で休めば、身体も元の調子に戻ってきたので、元に戻ったところでお腹が減ったので食堂に向かうことにした。

というわけで、食堂の入り口までやってきたわけなのだが……

右を見ても左を見ても女性。

従業員も、もちろん女性。


まぁ、ここが女性限定のスパリゾートなので当たり前といえば当たり前なのだが……

しかも、何故か若い女性しかいない気が……

なんか居心地悪い……

その上、お風呂上がりやエステ帰りの女性ばっかりなので、そこかしこで良い匂いが充満していて……


オトコだったら手放しで喜ぶ状況なんだろうが、あいにくオレにはそんな度胸はなく。

これは思った以上に辛い状況だぞ……

短時間で食事を済ませると、すぐさま部屋まで戻ってきた。


「はぁ……」


この日、何回目かわからないため息を吐きながらソファにぐったりともたれかかる。

このスパリゾートに泊まっている女性のほとんどは動きやすいという理由からかあらかじめ用意されていた部屋着に着替えていた。

おかげで胸元や太ももがそこかしこでチラチラ見えてくるからご飯をまともに食べることもできなかった。

ちなみにオレは正体がバレると非常にマズイので、普段着ている洋服を身につけている。


そして先ほど課長から連絡があった。

明日の夜7時ごろには迎えの車が来るそうだ。

つまりあと丸一日、このスパリゾートに閉じ込められたということだ。

何事もなく、過ごせればいいんだけど……

心の中でそう願わずには、いられなかった。


それから夜の9時を過ぎたころ。

オレは特にすることもないので、ダラダラしながら部屋にあるテレビを観ていた。


「ん~……」


リモコンを手にしながら唸る。

面白い番組なんもないなぁ。

かと言って寝るには早すぎるし。

どうしよ。


テレビの電源を消すとソファに横になり、天井を仰ぎ見る。

なんか時間を潰せるものでもあればなぁ。

そんなことを考えていた時、あることを思い出した。


あ、そういえば。

オレはそのことを思い出し、いそいそと部屋から出ていった。


「おー!こりゃ、すごい!!」


思わず、歓声の声が出てしまう。

オレはスパリゾートと同じ敷地内にある少し小さめのグラウンドにやってきていた。

エステのことですっかり忘れていたが、ここには健康のためにと運動できるグラウンドが用意されているのだ。


そしてその横にはテニスコートもある。

久々に身体、動かすのもいいかな。

と、いうことで動きやすい服装(受付で貸してくれた)に着替えてからまずは、辺りをランニングすることにした。


「はあはぁはぁ……」


も、もうダメ……

頬を伝う汗を手のひらで拭うとそのまま、崩れるように地面に腰を降ろした。

す、少し走っただけなのにすぐに脇腹が痛くなってしまった……

思った以上に体力が衰えてたんだな。ちょっとショック……


内心、心を痛めながら呼吸を整えつつ、周りを見渡す。

さすがに真冬ということもあり、オレと同じようにグラウンドで身体を動かしてる人はほとんどいなかった。

でも一つだけ気になることが。

誰もいないはずなのにどこからか見られている気がする。


まぁ、多分気のせいだろ。

あまり深く考えないようにしよう。


「ふぅ~……」


いやぁ~、それにしてもいい汗かいた。

小休憩を挟みながら、ランニングとストレッチを行い、気づけば1時間以上、経っていた。

借りていたジャージを返してから、タオルで汗を拭きながら、部屋に続く道を歩いていると。


そういえば、大浴場って入れるのかな。

そんな考えが頭をよぎった。

時刻はまもなく、夜の11時。

他のお客さんが入っている可能性も充分、あり得るが……

と、とりあえず覗くだけ覗いてみるか。

で、でもこの前のお嬢様学校の時みたいに誰かと、ばったり会っちゃったら……


!!


その時のことを思い出してオレの顔はボン!と音を立てた。

自分でも顔が真っ赤に染まっていくのが分かる。


い、いやいや!

あんなこと、そうそうあるわけないって……

そう自分に言い聞かせ、部屋に戻るとタオルと着替えを手に取り、すぐさま大浴場まで歩いていった。

お風呂場へ入るのれんをくぐり、そ~っと脱衣所を覗く。


よし、脱衣所には誰もいないな。

だが、問題は次だ。

大浴場の方は……

顔が入るくらい、少しだけ扉を開けて中をぐるっと見渡し、確かめる。


お!ラッキー!

誰もいないぞ!!

中には運良く誰もいなかった。


っていうか中が異様に広い!!

流石としか言いようがないな。

というか最近、異様に広いお風呂によく出くわすな。

そしてことごとく、あまり良い思い出がない……


今回こそは何事もなく、過ごしたい……

オレは服を脱ぐと万が一に備えて、ウィッグを付けたまま、バスタオルを身体に巻きつつ、大浴場に入っていった。


「よいしょ」


湯船にゆっくりと肩を浸からせる。


ああ~…

気持ちいい~……

広いお風呂ってなんでこんなに気持ちいいのかな。

そういや、汗をかいたせいで頭が少しムズムズするな。


ちょっとくらいなら大丈夫だよな……?

オレは耳を澄ませ、脱衣所に誰もいないことを確認するとウィッグを外すとそのままドボンと頭を湯船に沈めた。


「ぷは~!!」


数秒後、湯船から顔を出す。

あー!痒いところの汗が流れてスッキリした!

誰も来ないみたいだし、ついでだからこのまま洗っちゃおうかな。

オレは湯船から出て、ウィッグを洗面器の近くに置くと頭を洗い始めた。

念のために手早く頭を洗い終わると、ウィッグを装着する。


ん、やっぱり地毛を乾かしてないから変な感じだな。

ま、誰か来た時にかぶればいいし、今はつけるのやめとくか。

というわけで、オレはウィッグを外したまま、湯船に浸かることにした。


それから20分後。


「ふー……」


そろそろ出ようかな。

しかし、誰も来なかったなぁ。

おかげでのんびり湯船に浸かることができた。

願いがようやく神に通じたようだ。

オレはウィッグを付けると湯船から出て、脱衣所へと向かった。


と、その途中。

あれ……?

あそこの扉なんだろう?

入って来た時はわからなかったが、右側の壁の奥に扉があった。

見たところ、関係者専用という文字も書かれていない。

オレは気になったのでその扉を開けてみることにした。


「おお!」


グラウンドの時と同様に、またもや歓声の声を上げる。

扉を開けるとそこには、なんとミストルームが広がっていた。

どうやら、大浴場からミストルームへと入れるらしい。

しかも、これまた誰もいなかった。


誰もいないんだったら入っちゃおうかな。

それにお肌が綺麗になるのは、乙女として嬉しいことですわ……


ウフ、フフフフフ……

だが10分ほど、ミストルームに入っていたが、だんだん喉も渇いてきたので、そろそろ出ようかなと思い、扉に手をかけたその時。


ガラッと大浴場に入る扉が開いた音がした。


!!?


肩を震わせ、慌てて扉に手をかけていたのを引っ込める。

危なっ!

タイミングがもう少し早かったらうっかり鉢合わせするとこだった。


できることならそういうのは避けたいしな。

向こうは裸の女性なんだし。

そして、やはり大浴場に入ると一筋縄ではいかないんだな。


トホホ…

オレはガックリと、うなだれるしかなかった。

というわけで、入ってきた女性が大浴場を出るまでミストルームに残ることにしたわけだが…


「うう……」


たまらず、うめき声が出てしまう。


な、長い……ってそりゃ、当たり前だよな。

女性のお風呂は基本的に長いし、それにここが大浴場なら、普段より長く入るよな。

しかし、オレの身体もそろそろ限界に近い。

こうなっては仕方ない。

できるだけ大浴場の方は見ずにササッと脱衣所に行こう。

扉に手をかけて、グッと引っ張り、外に出ようとした。

その時、話し声が聞こえてきた。


「それで今日の収穫は?」


「はい。今日は大量でした」


「そうか、そうか。やはり、大規模に宣伝したかいがあったな。ハハハ!」


「しかし、残念ながらオーナーのお気に入りの彼女だけ写真が撮れず…」


「まぁ、倒れてしまった以上、無理強いはできないからな。しかし、実に惜しい。あれだけの逸材、必ずや写真を撮ってみせる」


「はい。さて、そろそろ出ましょう。湯あたりしてしまいます」


その言葉を最後に大浴場にいた人物たちは出ていったようで、声は聞こえてこなかった。

ようやく大浴場から解放され、脱衣所で頭をゴシゴシ拭きながら先ほどの会話を思い出す。


声の主はオーナーと従業員さんだよな?

写真を撮ったとか、お気に入りとか一体どういうことなんだろう?


それに倒れた彼女……って、まさかオレのことじゃないよな……?

ゆ、湯あたりとかで倒れてしまったお客さんなんて他にもいるさ。きっと。


ハハハ……

それにしてもミストルームでもどこからか見られている感覚があったがグラウンドにいた時といい、この違和感は一体、なんなんだ……?


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