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そっちも間違い

な、なんだ!?

そのざわめきにオレは慌てて辺りを見渡した。

すると、食堂にいたほとんどの生徒がこちらを見ていた。というか睨んでいた。


え、え?!

オレ、なんかマズイことした?!

だが、よく見ると睨まれていたのはオレではなく。


「うわ、口元を拭いただけなのにお姉さまの人気はすごいですね……」


そう隣にいた女の子がつぶやいた。


お、お姉さま!?

ってオレのこと!?

しかも人気って?

オレ、嫌われてるんじゃないの?

だが、その考えとは真逆のものが周りから聞こえてきた。


(抜け駆けされてしまいましたわ)


(うう…お姉さまとお近づきになるチャンスが……)


(善は急げとはこの事でしたのね……)


すっげー人気じゃん、オレ!

って喜んでる場合じゃない!

なんでこんなことになってるんだ?!

そんなオレの疑問を解決してくれるように隣にいる彼女はうっとりとした声を上げた。


「ああ、パスタを夢中で食べるお姉さま……小振りな口なのに目一杯頬張って…その上、子供のようにソースまで付けて…本当に可愛らしい……とても良いものを見せてもらいました……写真でも撮っておけばよかったわ……」


身体をクネクネさせながらそんなことを言う。


ああ、なるほどね…

お嬢様方の心にストライクだったわけね。

嫌われてなかったのは良かったけど、この先一週間…オレ、大丈夫かな。

主に貞操的なものが。


さて、そんなハプニングを交えつつ、昼食が終わって午後からはいよいよ取材の開始。

今の3年生は受験を控えている生徒もいるため、取材を行うのは1年生と2年生にすることにした。

学生にとって大切なことの一つは落ち着いて授業を受けられるか。ということだ。

授業中に私語などが多ければ、たってそれだけで授業を真面目に受けたい生徒のモチベーションを下げてしまう。


しかし、この学校はさすがというか、誰1人として私語を話さず、授業に集中していた。

これは良い宣伝になるな。

そう思いながら持ってきていたカメラのシャッターを押していく。

そして午後の授業が終わり、放課後。


お嬢様学校とはいえ、部活動もちゃんとあるらしく、所属している子は各々の部に、所属していない子は寮に帰るか先生方の許可を取って外に出かけるそうだ。


オレは取材のため、グラウンドにやってきた。

そこでは陸上部、ソフトボール部、テニス部、バトミントン部が部活動に励んでいた。

お嬢様の中にも運動が得意な子はいるんだな。

勝手な想像だが、オレの中でお嬢様は常にSPやガードマンに守られながら室内でソファに座りながら紅茶飲んでるイメージがある。


「パンが無ければお菓子を食べればいいじゃない!」とか言いながら……


ちなみにそんな名言を残した女王様の最期はギロチンらしいが、実は嘘らしい。そして名言も実は言っていないらしい。本当か知らないけど。


PM7:05

外に出かけていた子達も既に寮に戻っており、夕食の時間。

かくいうオレはそろそろ帰宅するため、学校を去ろうとしていた。

寮の前を横切ろうとした時、後ろからシスターに呼び止められた。

なんでも、案内し忘れた場所があるから着いてきてほしいと言われた。


どこに行くのかと疑問に思いながら寮の中へと案内される。


寮……?

そして辿り着いた先、そこは。

なんとオレのために用意された部屋だった。


え、え?

頭にハテナマークを浮かべながら、シスターに招かれるまま、とりあえず部屋の中へ入る。

そこには冷蔵庫、ソファにテーブル、イス、ベッドなど様々な家具、家電が置かれてあった。


「すいません。急であったため、このようなものしか用意できず……」


申し訳ないとばかりにシスターが頭を下げる。


「い、いえいえいえ!そんな!わざわざ、アタシのために用意してくださるなんて!」


というか財政難になりかけなんじゃなかったっけ?

こんなことにお金掛けていいのか?

などと、心の中で思ったのだが、その疑問はシスターの一言で解決した。


「きっと河野さんが良いパンフレットを作ってくださるから、これくらいの出費、安いものだと理事長は仰っておられました。来年度の入学希望者は今の2倍……いえ、3倍にはなっているだろうとも……」


うーわーーー。

プレッシャー半端ないな。

ただ、良い方向に考えると取材の時間が一気に増えたってことだよな。

多少の意図はありながらも、せっかく立派な家具なんかも揃えてくれたし、断るのは悪いよな。

という考えに至り、オレは1週間、生徒達と同じ寮で暮らすことになった。


PM9:04

オレは一度、家に着替えや必要なものを取りに戻った。

ちなみに学校を出る際、シスターがオレに特殊なICカードを渡してくれた。

外から入る場合として、これを門に備え付けてあるカードリーダーに通すと門が自動で開く。

関係者(女性限定)にしか渡していないものだそうだ。


学校に戻ってから、まず部屋に置いてあったクローゼットに服を収納してから、自宅と同じような位置に物を配置していく。

あらかた、終わったところで。


ぐぅ~~。

オレの腹の虫が盛大に鳴った。


そういや、家に帰るつもりだったから晩御飯食べてないや。

寮の食堂はまだ空いてればいいけど。

わずかな希望を抱きつつ、部屋に鍵を掛けてからオレは食堂へと向かった。

食堂には夕食時が過ぎたからか、飲み物を飲みながら雑談している生徒がちらほらいるだけだった。

この寮の夕食はブッフェ形式になっているらしく、幸いにも、ピザやパスタ、スープなどが少し残っていた。


助かった~。

心の中でホッとする。

オレは急いでトレーを持つと、載せられる分だけ料理を載せていき、適当な席へと着くのだった。

手を合わせて勢いよく食べようとした時、オレの脳内に昼食時の光景が蘇った。


そういや、あの時は料理が美味しすぎるあまり、勢いよく食べちゃったせいで周りがキャーキャーなっちゃったんだよな…

今は人が少ないとはいえ、気をつけるに越したことはない

オレは心を鎮めると静かにピザを口に運んだ。

ん、冷めてるけど美味しい!!


毎日こんな美味しいものが食えるなんてそれだけでも羨ましい。

やっぱ人間は美味しいもの食べてる時が1番幸せだよ……

オレはハニカミつつ、モグモグと味を噛み締めながら料理を平らげていく。

自分でも笑顔になっていくのが分かった。

周りの黄色い声にも気づかず……


PM10:48

オレは寮の部屋に備え付けてあるお風呂から出たところだった。

いや~、まさかお風呂まで完備とは。

しかも結構広かった。

おかげでついつい長風呂してしまった。

もしかしてオレが住んでるマンションより広かったんじゃないか…?


バスタオルで頭をゴシゴシ拭きながらそんなことを考える。

ちなみにウィッグは既に手入れ済みだ。

新しいヘアアイロン、使い心地最高で買ったかいがあったな…フフフ…


「ふぁ~……」


髪の毛をドライヤーで乾かしたところでアクビが出る。

明日も早いし、そろそろ寝ようかな。

ドライヤーを片付けると洗面台へ行き、しっかりと歯を磨いてからベッドに潜り込む。


うわっ……!

ベッド、めちゃくちゃ柔らかい。

こりゃ、すぐに寝れそうだな……

その予想はすぐに現実のものとなり、オレはあっという間に夢の中へと落ちていった。

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