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-修学旅行-

「ん~、やっとついた京都!疲れたね、優紀君!」


「あぁ、そうだね。楓さん」



そう。今日から修学旅行。


今は全員で団体行動であたしと楓は同じ班。さらに、智と蓮も一緒。

だから、智と蓮にお願いして楓と2人で見て回ってたんだけど…


「おっ!副会長と楓ちゃんラブラブだね~!」


「副会長羨ましいぜ!」



「みんな、もうやめてよ!!ね、優紀君。」


「う、うん!」



いつのまにかあたしたちの事はほとんどの人が知っててよく声をかけられる。

恥ずかしいけど…ちょっと嬉しかったりする。


だって…

学校モードだけど、こんな会話する日が来るなんて夢にも思わなかったから…



キャッ!

いきなり楓が立ち止まってそれにぶつかってしまった。



「どうしたの?楓さん?」



立ち止まった楓の指の刺す方には…



「おみくじ…引いてみない?」


「…えっ!?いいけど…」



おみくじかぁ…



「あれ、優紀君おみくじ嫌いなの?」



嫌いってか…


あたしはおみくじを引いて今まで『凶』か『大凶』しか引いたことがないのだ…

だからって悪いことが必ず起こるって訳じゃないんだけど、

やっぱ出来れば『大吉』とかがいいじゃん?



「あんまり、気が進まないならやめとこっか?」



せっかく楓が引こうって言ってくれたんだし、

それにそろそろ運が巡ってきてるかもしれないしね…



「ううん!大丈夫!引こう!」


「うん!」



それに楓と一緒ならいい気がする!!

よっし!コレだ!!



「…あっ!うっそ…」


「ん?優紀君どうしたの?…凶とか?」


「楓さん…これ…」



なんとあたしの引いたおみくじは…



『大吉!!』



生まれて初めて自分が引いたおみくじで大吉を見た…



「う、うれしい…」


「優紀君、すごいじゃん!じゃぁ、あたしは…あっ!」


「えっ?なになに?」


「あたしも『大吉』だ!なんか、あたしたちいいことがありそうだね。」


「うん。そうだね!」



初めて出来た彼氏と一緒に引いた、おみくじ。

『大吉』だって喜んでたのに…

まさか、あんなことが起こるなんて思ってもみなかった…




おみくじを引いた後は、智たちと合流して一緒に回っていた。



「そろそろ、集合時間だね!」



一応、この班の班長ってことになってるあたしは集合時間をみんなに告げた。



「だね!んじゃ戻るか!」





その時…



「あっれ~?蓮じゃん?久しぶりー元気にしてたー?」



えっ!?


あたしの脳裏にあの時の記憶が蘇った…


『死ね!!』


その言葉を発したのと同じ声。


でも、こんなところにいるはずない…


一瞬、目の前が真っ暗になった。


とりあえずこの場から逃げなきゃ…とっさにそう思った。



「おぉ…沙奈美…久しぶり…」



蓮は少し気まずそうに答えた。



うそっ…やっぱり…



蓮が口にしたその名前「沙奈美」中学の時のあの主犯。

あたしは蓮たちに背を向け沙奈美に気付かれないように離れようとした…

なのに…



「優紀!?どうしたの!?」



智があたしの様子に気づき声をかけてくれた…

でも…



「えっ!?優紀!?」



沙奈美は『優紀』という名前に反応したらしくあたりを見回しているようだ。

智は心配してくれてるようだったけど、今のあたしにそれに答える余裕はなくて、それに気付いた蓮が上手く智をつれて話をそらしてくれたようだ。


沙奈美が気付いていない隙にあたしは楓に必死に伝えようと…

楓の制服の裾を引っ張ると楓はあたしの異変に気づいたくれた。


「あ…の子…中学の…時の…」


楓は一瞬で悟ってくれたらしく…

驚いていたけど、あたしを連れてその場から離れてくれた…

後ろで蓮たちと沙奈美のやりとりが聞こえた気がしたけどそれどころじゃなかった…



―楓サイド―


とりあえず、集合場所に向かった俺らは先生に優紀の体調が良くないことを告げ先にバスに乗せてもらった。



「優紀、大丈夫?」


「…ん、大丈夫…」



大丈夫って言ってる優紀の顔は全然大丈夫そうじゃない…

まだ、顔は青いし手は震えてる…

やっぱり、優紀の心の傷は癒えてはいなかった…



「優紀、俺がいる。俺は絶対優紀を守るから…」



俺は優紀を抱きしめ言い聞かせるように言った…



「…ん。」



そういうと、優紀の肩の力が抜けたようだった…



「そういえば…さっき慎哉さんが…『今日は俺の部屋使え』だって。俺も、一緒にいるから…」


「…うん。」




俺たちは、ホテルについて慎哉さんの部屋に向かった。

この頃には、優紀は落ち着きを取り戻してはいた…

と、思っていたのは俺だけだったのかもしれない…



コンコン!



「あぁ、入れ。」



そう言われ俺たちは部屋の中に入った。

部屋に入るなり慎哉さんは優紀を抱きしめた…



「また、辛い時に一緒にいてやれなくてごめんな…」



慎哉さんの表情は本当に辛そうで…

前に、優紀を守れなかったことを本当に後悔していたんだと思う…



「大丈夫だよ…お兄ちゃん。それに…今回は楓が…っ…い…て……くれ…たからっ!」



優紀は泣きだしてしまった…



きっとここまで我慢してたんだな。

みんながいる手前、素の自分は見せられなかった訳だし…

俺は本当の優紀の辛さを分かっていなかったのかもしれない…

自分の無力さが悔しかった。



慎哉さんは優紀から離れると、食べ物をもらってくると行って部屋を出て行った。

出ていく間際、俺に『今の優紀には自分より楓の方がいい』って言って…



俺はまだ泣いている優紀のそばに行き、力いっぱい抱きしめた。



「…楓、痛いよ…」



そう言って見上げた優紀の顔には少し笑顔が戻っていた。



「やっぱり…優紀には笑顔が似合うな…」


「…ありがと。楓…」


「…ん?」


「やっぱり…昔の事思い出すと苦しいし辛いけど…楓がいるって思ったら昔より辛くなかった…楓、ありがとう。」


「そっか…俺は一生優紀の味方だ…約束な。あと、これ。本当は後で渡すつもりだったんだけど…」



俺は優紀の首にクローバーのネックレスをつけてあげた。

俺たちを繋いでくれた『クローバー』



「これで、俺らはずっと一緒だ。辛いこともこれからは2人で乗り越えていこうな。」


「うん。ありがとう楓っ///」



その後、俺たちは慎哉さんが持ってきてくれた夕食を食べ、眠りに着いた。

ベットは優紀が使って、俺は床で慎哉さんがソファー…


その後の修学旅行は無事に終わった。

あの沙奈美ってやつの事は蓮が上手くやってくれたらしく、波乱の修学旅行は幕を閉じた。


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