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-異変-

俺は楓。


今、目の前で起こっていることを理解できずに教室の入り口の前で立ち止まってしまった。


さっきまで、今日は優紀とどんな話をしようかとウキウキだったのに…


今はそれどころではない…


なぜなら…



「優紀―!ここ教えて!!」


「いいょ。ここは、xにこれを代入して…ほら出来た!」


「ホントだー!!さすが、優紀、天才!」


「褒めすぎだって…他にわかんないとこは?」


「う~ん。コレとコレとコレと…」


「はぁ?蓮、そんなに!?ちょっとは自分で勉強しろよな…」


「だって、数学嫌いなんだよー!」



というやり取りをしている優紀と蓮。


昨日までは仲良くなかったはず…やっぱり理解できない。


夜の優紀との電話では何も言ってなかったし…



「ん~?」


「…っおい!楓、邪魔!」


「えっ!?あっ、智。おはよー」


「何、こんなところに突っ立って唸ってんの?」


「いや…それがさぁ。あれ、見てみ?」



そう言うと智は指を刺した方を見た。


それは、俺の中では史上最高に異様な光景。いや、むしろ…


やっぱ言うのはやめとこう。



「あれれ?どうしちゃったのあの2人?」


「それがさぁ、わかんないんだよね~」


「あぁ、それでここに突っ立ってんだ。気になるなら、ほら本人にさっさと聞く!行くぞ楓!」


「あっ!ちょっと待ってよ!」



智は俺の気持ちなんか無視して優紀のもとに向かって行った…


そして単刀直入に…



「お前ら、そんなに仲良かったっけ?」



オイオイ。


本当にズバッと聞きすぎだよ…


それが逆にありがたかったりもするんだけど…


恐る恐る優紀の返事を待つと、優紀が答えるより先に蓮が口を開いた。



「てか、仲良くしてなかった方が不思議なの!俺と優紀は幼馴染なんだよ?お前らが邪魔で話し出来なかっただけだし。」



そう言い終わると、蓮は俺の方を向いてちょっと勝ち誇ったような顔をした。


はぁ!?


俺の怒りのボルテージが上がった。


でも、ここは学校だ。


ましてや、俺は今、女の格好してるんだから騒ぎを起こしちゃまずい…


蓮の視線を無視して優紀に話しかけることにした…



「おはよー優紀君。」


「…おはよ。楓さん…」



えっ!?


今、優紀、俺から目逸らした?


しかも、さっきまでの元気がなくなった…


俺の頭ん中は混乱しまくりだった。


するとすぐに先生が教室に入ってきたから蓮と智は自分の席に戻った。


優紀もいつもの真面目な感じで先生の話を聞いている。


俺は携帯をとってメールした。


『なんかあった?』


返事はすぐに来た。


『何もないよ』


ただ、それだけ…



そのまま、1限目の授業が始まった。


授業が終わるとまた、蓮が優紀のところに来て話し始める。


そこに智も来て、3人で話している。


しかも、蓮と智は意外にも話が合ったようで盛り上がってる…


優紀も楽しそうに笑ってるし…




俺は、なんかその場にいたくなくて教室から出て屋上に向かった。


そして、そのまま次の授業をさぼることにした。


寝転がって青空に流れる白い雲を見つめたまま俺は眠りに着いた…




―優紀サイド―


休み時間が終わっても楓が帰ってこない…


今まで1度も授業をさぼったことがない楓がすごく心配になった。



朝から、蓮が話しかけてくるから今日はまともに楓と話をしていない…


しかも、朝。


上手く楓の顔を見れなかった…



授業が始まって30分が過ぎた。


楓に送ったメールの返事も来ない…


心配になったあたしは、この学校に来て初めて仮病を使った…


智と蓮が付き添う?と聞いてきたけど、「大丈夫!」っていって1人で教室を出た。



楓がいそうな場所が分らなくてとりあえず人があまり来なさそうな場所を探して回った。


そして、たどり着いたのは屋上だった。


普段は危険だからって理由で鍵がかかってるのに今日は開いていた。


もしかして?


って思ってゆっくりドアをあけるとそこには楓がいた。



「よかった…」



思わず。溜息とともに安堵の言葉が出た。


やっぱり、寝てても楓はキレイだった。


ウイッグの髪が顔にかかってたから取ろうとして手を伸ばしたらいきなり腕を引っ張られた。



「きゃっ!!」



気付くと寝転がってる楓の上で抱きしめられていた。



「…本物だ…」


「えっ!?」


「優紀の夢見てて…目開けたら優紀がいたから…」


「あたしのゆ…め…?」



あたしは顔が熱くなったのがわかった気がした。



「今日の優紀、いつもと違う…俺、嫌われたと思って…」


「えっ!?嫌う訳ないじゃん!!あたしは…楓が好きだよ…」


「俺も、優紀が好き!ぜってー離してなんかやらない…」


「…んっ!」



あたしは楓に唇を奪われていた…


いつもの優しい感じじゃなくて何かに焦っているような…



あたしたちは体を起こして向かい合って座った…


「楓…どうしたの?」


「どうしてあいつと仲良くすんの!?」


「あいつって?」


「蓮だよ…っ」



いつもと違うのは楓だよ…



「だから、蓮も言ってたじゃん。元々、幼馴染なんだし…仲良くしてても普通でしょ?」


「そうじゃない!優紀は、俺の彼女だから…あいつと話してるの見るとムカつく…」


「えっ!?」


「あいつは優紀の事狙ってるんだょ!それに、幼馴染だって言っても仲良くしなかったじゃん。でも、

急に態度が変わった!!絶対なんかあっただろ!?」


「…それは…」


「それは?何!?」



楓に余裕がなさそうなのは見ていてわかる…


きっと今、いくら「好き」っていっても気持ちは伝わらない気がする。


ちゃんと話さないとダメなんだろうなって…


でも、昨日の蓮とのキス…


忘れてって言われたけど簡単に忘れられる訳ない…



「優紀?…お願い…何があったか正直に教えて…俺には嘘つかないで…」


「…っ!?」



今にも泣き出しそうな顔をしている楓。


楓の気持ちが痛いくらいに伝わってくる…


やっぱり、正直に話そう…



「楓。正直に話すね…でも、あたしが好きなのは本当に楓だけだから…」


「…うん。」



あたしは昨日の出来事を順を追って話した…


正直に全部。


蓮に楓のことがバレたこと、蓮の正直な気持ち。


そして、蓮に抱きしめられ、キスをされたこと、うかつにもドキドキしてしまったこと本当に全部。


「これが、昨日あったこと…」


「…」


「怒ってる?」


「怒ってる…」


「そうだよね…ごめん。嫌いになった?」


「…なんでそうなるの?俺が怒ってるのはあいつに対して…そして、優紀の事を嫌いになるわけないじゃん」


「ほんと!?」


「当たり前だろ!でも、あいつ…どうしてやろうかな?」


「えっ!?」



さっきまで、泣きそうな顔をしていたのに…


今度は怒ってる。



「とりあえず、あいつのことココに呼んでくれない?優紀、連絡できるでしょ!?」


「あっ、うん。」



ポケットから携帯を取り出すと


ちょうど授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。


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