-失態-
楓が女としてあたしにアタックし始めてから1カ月が過ぎた。
まわりははじめ驚いていた…
だって、どんなにかっこいい男子から告られても断っていた楓がまさか地味で真面目な副会長を好きになるなんて誰が思ったか!
でも、そんな周りの目を気にしない楓のアピールはだんだん知れ渡って
今や、学校中が認めるほどになってしまった。
しかも、智も楓の事はあきらめた宣言するし!
さらにさらに!
楓の応援までしちゃってるから、まわりもあの副会長も楓になら落ちるんじゃないかって興味深々だし。
だから逆に付き合うって発表するのが嫌だったりする。
なんか負けたみたいじゃん…
というわけでまだ楓の片思いってことになってるんだけどね。
そんな空気だから今までは蓮は何もしてこなかった…
たぶんこれからも何も起こらないんじゃないかって…
そう思っていたのはあたしたちだけだったのかも知れない…
―兄(慎哉)サイド―
今日は珍しい人物からの呼び出しだった…
時刻は夜7時。
この時間なら生徒も先生も大半帰宅してるからってことで生徒会室にしてもらった…
まだ、仕事があるから帰宅できないしかと言って外で会うのはめんどくさかったからだ…
それにあいつなら別にいいかなって…
「…にしても…はぁ。あいつが俺に用事って今までろくなことなかった気がするなぁ…」
そう。
あいつとは蓮のことである。
あいつが昔から優紀の事を好きだったのは知ってるし、過保護だ!なんだ言って一方的に俺の事嫌って
るからなんか俺も苦手になってしまったのである…
それに、蓮が転校してきたのだって優紀を追って来たに違いない…
でも、1つだけ気になることがあった。
どうしてこの時期だったのか…
そんなことを考えてたらドアが開いた。
「失礼しまーす!あっ。もしかして待ちました!?」
「…いや。…で、なに?」
あいかわらず元気だな。とか思いつつさっさと話を終わらせたかった俺はいきなり本題を切りだした。
「あぁ。はい!実は…優紀にまとわりついてる楓って奴、あのまんまでいいんすか?」
「そんなことか、別にいいんじゃないか。2人も何か考えがあるんだろ!」
「はっ!?」
「?」
俺を見てる蓮の顔は不思議そうな顔をしている。
いかにも自分が求めている答えではなかったかのような…
俺にはどうしてこんな顔をしているのかわからなかった…
「えっ!?ちょっと待て!蓮、どうしてそんな不思議そうな顔してるんだよ?」
「だって、慎哉さんが…2人にも考えがあるって…えっ!?ってことは楓、優紀のこと知ってて?じゃぁ、優紀も女に告られてまんざらでもない感じなの?」
「っばか!優紀は女には興味ないよ。だって楓は、おと…っ!?」
やっべ!さすがに今のはまずかった…
つい優紀をかばおうとして…
「慎哉さんっ!今なんて!?楓は…男って言いました!?」
「はははっ、んな訳ないじゃん!あんなかわいい子が男だなんて!!空耳だって。楓ちゃんは女の子だよ!」
あぁ!!だから蓮と話するのは嫌だったんだよ…
優紀、蓮には話してなかったんだな…にしてもさすがに今のはバレた…よな…?
「ふっ。やっぱ兄妹っすね。慎哉さんも嘘つくと優紀と同じ反応するんすね!」
「!?」
「ふ~ん。楓は男で、女装か…変な趣味。ふっ…慎哉さん貴重な情報ありがとうございます!じゃぁ」
バタンっ!
生徒会室のドアが勢いよく閉められた。蓮の足取りは軽く、楽しそうに…
「あいつの最初の質問の意味は…普通に優紀のことを思ってだったんだろうな…あぁ。ど~しよう…優紀。ごめん…」
俺は誰もいなくなった生徒会室で1人呟いた。