第二章弐記「酒、酒、酒ぇ!!」
都の説明とか……。何があったかとか……。ニコスとデニスと放浪者の邂逅など色々説明の回。
思ってた以上に長くならなかった……。(というよりか二話に分けた)
すいません。あと、ニコスとデニスはかなり酔ってます。
更新遅れてほんっとすいません。ほんと。
あ、ちなみに貴族の居住といっても仮住まいみたいなものです。はい。
首都ラパスは特徴的な地形の上に成り立っている。
小高い丘、と言えばそれで終いだが、丘は丘であっても山にも等しい高さを誇る。
だが、あくまでも名称としては丘であるとされている。
傾斜はとても緩やかで建造物の立地や生活に支障はきたさないが、緩やかであるのに比例してその頂点へと登る道はとてつもなく長くなる。
それが、首都ラパスがクロニウスの中で広大とされる所以なのだが……
セズ教の総本山でもある法王庁がこの丘の中心――――頂上に位置する為、参拝や訪問の際に多大な疲労を被ることとなる。
現に、先日帰還した第六大隊ですら緩やかではあるが途方も無く長い坂道に疲労の色を隠すことが出来ていなかった。
大荷物を引いてきた軍馬やそれを補助する兵士達は、疲労の末卒倒というどうしようもない状態に陥ってしまうほど。
こんな、お世辞にも良いとは言えない場所に町を設けようとした意図はいくつかあるのだが、それも時の経過と共に薄れていった。
今では民衆の愚痴に必ずといっていいほどまでに話題にされている。
確かに、商いの為に日に何度も往復しなければいけない、なんて人もいるのだ。
お小言にされるのも仕方が無いと言えば仕方が無いことなのだ。
特徴的なのは何もその立地している土地だけではない。
町や村、ましてや都となれば匪賊や賊徒に対する(要するに敵)防護策や設備等は常備しているものである。
ラパスも例外ではなく、丘の麓に巨大な城壁と唯一の門口である大門により外敵からの防護は万全。
さらには、城壁の内側にも幾つかの区域分けが施されており、区域の区切りの度に巨大な城壁と大門が建設されている。
現在では総計、第三区域まで区画化され、新たな区画増設の為に四つ目の巨大な城壁と大門が建設されている最中だ。
その区域ごとに出入りや入域、住居の転居などが出来る地位というものが限定されてはいるが、絶対とまではいかないのが現状である。
仮に区域ごとに区切るとしたら
第一区域には一般の民衆。特別な職や家に就いている訳でない、所謂、平民と呼ばれる人々の居住区域。
第二区域には聖職者や下位に位置する貴族(男爵、準男爵)の居住区域。
第三区域には上位に位置する貴族(伯爵、辺境伯、侯爵)と法王庁の立っする居住区域。
と、なる。
現在進行している第四区域には法王庁と法王の住まいである宮殿が入る予定であり、完全に他と隔てる目的で建造が進んでいる。
外界からの完全なる遮断により、法王や法王庁の神格化に拍車をかけることが多面的にある一部の目的であるのだろうが、今以上に情報や現状の把握が困難になる可能性も否めない。
結果としては外敵が国内にほぼいない現状だから問題は無いということになる。
ある意味脆いと言ってしまえばそれまで、だが、神格化させなければいけない理由というのも存在しているのだ。
そんな、いざこざや問題が奮起しそうでしない不安定な状況に、法王の不可思議なお告げと、巨大な荷物を背負い込んで来た第六大隊に役人達は東奔西走している。
一方、その当事者でもある一部の人間は、案外のんびりと酒を煽っていた。
「いや~、本当に息が詰まって死にそうになりましたよ。あんな所に二度と呼び出されたくないです。初めて入った審問場は予想外にでかいし、周りにいた顔ぶれなんて想像もしたくないほど大きな権威と権限を持ってる人ばっかじゃないですか。僕なんて枢機卿とアディンセル様の二人に睨まれたんですからね……あん時はもう駄目だ思いましたから――――ってもう! うるさいなぁ!」
第一区域にある人気のある酒屋で豪快に酒を煽る髭面の男と狐顔の男。
木造の机の盤上には酒の入った杯と焼き焦がした魚が蒸気を上げ美味そうな音を奏でている。
体型や客観的にみた性格でも、いかにも相反するような様相である二人が酒を交わしていることに、周りの客は少なからず疑問を持っていたが、酒の席であるのでそんなことも水に流れていく。
筋骨隆々の暑苦しい男達による喧嘩やそれを賭けとした無断賭博、娼婦を連れ込んでのやんちゃや豪快な飲み比べなど阿鼻叫喚の屋内では落ち着いて話をしている者など極僅か。
次第に、雰囲気に飲み込まれていく極僅かに属していた客達が、新たな喧嘩や賭博、競合が至る所で勃発している現状に家主も何か言えばいいと思われるのだが、その家主自体が賭博に参加している為、もうどうしようもない。
この光景が、いつものことであるということは、初めてこの店に赴いた来客でも分かる事だった。
「ぬぅ、此処はいつもこんな風なのだ。慣れねば煩わしいだけだぞ。話を戻すが、まあ、お前の思うところも同感できる。ワシとてあの場から即刻逃げ出したかったぞ……」
「そうでしょ~」
座していた椅子を蹴飛ばしながら机に身を乗り出し髭面男へと迫る狐顔の男。
狐男の顔は随分と上気しており、大分酔っていることが窺える。
「そもそも、僕はアディンセル様の命令に忠実に従ったってだけなのに、何であんな睨まれなけりゃいけないんだよぉ~。どう考えてもあの場面は僕が助けに入らなければ隊長が怪我してたでしょ~に~。不条理だぁ~」
俗に言う絡み酒というやつだ。
とことん面倒臭い状況に返答と言う名の疑問を呈する。
「ああ、そうだな。お前の命令の事情は少し前に聞いていたし、確かにあの状況では我々には非は無いと言っても問題は無いだろうさ。それでもキシリア様はあの男と何かがあったに違いないのだろうなあ……それが肉体的なものなのか精神的なものなのかは我々には分からないが、キシリア様があそこまで男に執着を示したのは初めてなのではないか?」
狐男とは対照的で、酔いの片鱗さえも見せない髭男。
飲んでいる量は狐男と大差無いかそれ以上なのだが、顔色一つ変えていない。
完全な上戸である。
キシリアが男に執着を示したことが無いのは、父親であるヴァンガードの恩恵というかお節介というか、兎にも角にも父親の所為であることがほぼ確定している。
昔からお嬢様として教育してきたヴァンガードは乙女を守るのは鉄則とし、乙女が散ることが万が一でも無い様に男という存在から彼女を引き離したのだ。
だが、それも無駄な行為に終わってしまったのだが……
「そうですねぇ~。長い間あの方の身辺警護兼、お目付け役兼、教育係兼、執事的立ち位置の人として接してきた僕ですら彼女のあんな姿を見たことが無いですよ~。まあ、アディンセル様の圧力であの人に寄ってくる馬鹿はいませんでしたから、そんな風に思うだけなのかもしれませんけどねぇ~」
「思うだけであってほしいのだがな。……それにしても、キシリア様の審問はまだ続いているのか」
「そうですねぇ……かれこれ三、四時間は経過したんじゃないですか~?」
「あんな所にそんな時間、尋問されていたのでは身体が持たんぞ。大丈夫なのか……」
「僕でしたら無理ですねぇ」
満面の笑みで返す狐男。
暫しの沈黙。
狐男は乗り出していた身体を元の位置に戻し、今度は机に突っ伏しながら口だけでちびちびと器用に酒を飲んでいる。
天井を三白眼で睨みつけている姿はなんとも滑稽。
「こらこら、そんな可笑しな顔をしたら折角の顔が台無しになるぞ」
「そんなこと欠片も思っていないでしょうに~」
「はっはっは。バレたか」
「バレる以前の問題ですよ~」
苦笑交じりに冗談を言う。
その場限りの時間稼ぎであり、話を逸らすための一つの方法。
二回目の沈黙の後に二人同時に勢い良く酒を煽る。
そして、同時に――――
吹いた。
「ボブッファァァァー!!」
「ゴブッファァァァー!!」
当然、吹き上げられた酒は水滴となり、前方にいる男に着弾する。
一方は見開いた三白眼に、一方はその自慢の髭と空気を吸い込む鼻腔に。
またしても二人は同時に苦痛に悶える。
「おあああぁぁぁっ! 目がぁ、目があぁぁぁぁっ!! うおああああぁぁぁぁっ」
「ワシの自慢の髭がぁぁぁぁぁっ! なんというっ――ボフォッ!! い、いかん、髭に付いた水滴を吸ってしまうっ!! く、苦しっ――ゴフゥッ!!」
椅子から転げ落ち、床で転がり激痛に悶える狐男と、呼吸しようにも出来ないという状況に陥り髭に付着した水滴を一心不乱に掃っている髭男。
なんと醜く諧謔なことか。
「こんの糞髭がぁっ!!」
「それは此方のセリフだ。この糸目めっ!!」
そして、しょうもない罵倒を交わす。
「あああっ?!」
「あああっ?!」
この時、二人は完全に酔ってしまっていた。
場の雰囲気にも、酒にも。
その所為なのだろう。
普段は、第六大隊の中では比較的冷静な方であるこの二人。
そんな二人が大乱闘に発展してしまったのは。
○
夜。
庶民の街の夜は喧騒に包まれる。
あちらこちらでの夜店から上機嫌な笑い声や、喧嘩の音。
屋内から漏れ響く軽快な音楽に合わせて踊る人々の足音。
酒盛りの最中の大合唱。
道行く光景はどれも微笑ましく、温かい。
心の深淵へと沈み込んだ、明るく気高い気丈が再び顔を出す。
目深に被った外套を勢い良く拭い去り、そして、前方に投げた。
「ああっ!!」
男か女か聞いただけでは判断できない中性的な声音を発し、自分で投げ捨てた外套をあたふたと拾いに行く。
「何で投げたんだろうか?」
自身の突拍子も無い行動に自分自身で疑問を持ちながら喧騒の中を突き進む。
足取りは先ほどよりも軽い。
軽快なステップを踏み締め、壮快に足を振り上げる。
整備された道では無い、石や岩が地面から隆起した険しくも猛々しい原道。
目的の場所へと到着するまで、その軽快なステップは止むことは無かった。
「……すごい、久しぶりだな」
見上げるのは仰々しく飾られた店の看板。
杯を振り上げ、腕を組み交わしている逞しい腕をした男二人。
その間に卵と薄切りにされた肉が盛り付けられた皿がある。
「よし」
両の頬を景気良く叩き、気合を入れる。
そして、放浪者は酒屋の屋内へと入っていった。
視認したのは、殴りあう髭男と狐顔の男二人と、その周りに群がり囃し立てる阿呆共。
そして、その阿呆共の賭けに威勢よく乗って調子に乗っている旧友の姿だった。
クロニウス神国は神権政治に近い国家であるだけで、宗教統治をしている訳ではない。したがって貴族などが存在している。
筈……。(宗教統治でも貴族って存在するのかな? よくわからん)
何か変だったら指摘下さい。お願いします。
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