まずは凪いだ生活を愛してみよう
帰り道、坂で自転車を押しながらふと私は何をしているのだろうと路頭に迷う。いや、帰り道はわかっているから迷ってはいないのだけれど、私がいる場所は正しいのかと。
とはいえ、振り返るにはあまりに短い年数だ。だってまだ高校二年生。受験の焦りもまだ遠いし、友だちに合わせて頷いてばかりの時間が私の学生生活。
これといって特技もないし、部活も入っていない。もちろん誇れるような成績があるわけもなく。このまま私は社会の波に流されるだけで、大きな山も谷もなく、少しの愚痴やストレスを抱えて生きていくのか。
家ではお母さんがごはんを作って待ってくれている。お父さんは毎日真面目に出勤して働いている。幸せを絵に描いたような家族さえ、私には平凡で退屈だと思ってしまう。悪い子だ。
怖い思いをしたいわけでも、道を外したいわけでもない。そんな勇気ない。凪いだ生活が一番なのは当たり前。
それなのに、このままでいいのかなと焦りは感じてしまう。いいわけないんだ。なにかを変えなきゃ。なにを?
「あーー」
空に向かって声を出す。魔法使いじゃあるまいし、やはり何も変わらない。ゆっくり流れていく所々千切れた飛行機雲を眺める。
少しずつでいい。世界を大きく変えることはない。まずは帰ってお母さんにいつもごはんありがとうと伝えよう。




