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紅の御簾とき  作者: 鈴のたぬき
第四章 楽団
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誕生

 わたしの人生初めての出産は、旅をしている途中で滞在した国・華栄(カエイ)の後宮で行われた。後宮である行事に旅芸人として参加するために男子禁制の後宮にも男性が入ることができた。後宮では鶯を司る妃である寿桜泉(ジュヨウセン)様のお世話になった。桜泉様は皇弟妃で、一人の公主と二人の皇子を育てていた。滞在中に何度も皇弟殿下が桜泉様の元を訪れるのを見たので、ご寵愛は深いのだろう。

 さて、わたしの子だが、なんと双子だった。一人は樹衣(ジュイ)さまにそっくりな藍色の髪と深紅の瞳を持つ男児で、もう一人はわたしにそっくりな青緑色の髪と深紅の瞳を持つ女児だ。生まれて一週間が経つ今、二人の名前を決めなくてはという思いがあるが、なかなか思い付かない。悩みに悩んだ結果、男児の方を樹徒(ジュト)、女児の方を桜泉様から一字もらい、鈴桜(リンヨウ)と名付けた。なお、鈴桜はわたしの遺伝子を濃く受け継いでいるようで、生まれつき唇が紅かった。

「お姉さま。二人とも、かなりやんちゃですね。お姉さまと同じように、武術をやらせてみては?」

菁明(セイメイ)の言葉に、わたしは微笑んで頷いた。

「それも良いかもしれないわね。でも、この子たちに決めさせたいわ」

わたしたちが姉妹で会話を盛り上がらせていると、この宮の主、桜泉様が部屋に入ってきた。その名の通り桜のように美しくて朗らかな方だ。こんなに素敵な方が母国で冷遇されていたなんて有り得ない。あのまま樹衣(ジュイ)さまの元にいたら、外交の関係で皇弟妃と東宮の一侍女という立場でお会いすることもあったのだろうか。わたしはぼんやりとそんなことを考える。一方、桜泉様は菁明が抱いていた鈴桜を受け取って抱いた。

「あなたたち、何か訳ありなのでしょう。そちらの樹徒君(ぎみ)に似た方に心当たりがあるわ。そう、例えば……宮都(キュウト)の東宮殿下とか」

わたしと菁明が驚いて身を強張らせると、桜泉様は明るく笑った。

「別に大声で叫んだりしないから大丈夫よ。うちの旦那はただ無骨で筋肉質で多少しか男前じゃないけど、外交の時のために覚えておけってその旦那に見せられた絵に旦那と正反対の人が描かれていたから印象に残ってて」

「皇弟殿下に対してものすごい言い様ですね」

わたしが思わず桜泉様をまじまじと見つめながらそう言うと、彼女は頷いた。

「ええ。私がまだ皇弟妃になる前は、かなりすごいことを言っていた覚えがあるわ。十二の時からこんな感じよ。それで、何で東宮殿下に子供の存在を伝えないの?色々なことに関してしっかり責任を持つ方だと噂で伝え聞いてるわ。例え一人の旅芸人の子供でも自分の子だから責任を持って育ててくださるんじゃない?」

桜泉様の当然すぎる質問にわたしはグッと言葉に詰まる。確かに、樹衣さまはわたしが子供ができたと言えばしっかりと面倒を見てくれるだろう。それこそ、わたしを皇后にするくらいの勢いで。それでも、わたしが樹衣さまの元へ行かないのにはある大きな理由があるのだ。この子たちの存在が世の中に知られてしまえば、文官武官関係なく、この子たちの地位を押し上げた上で自分の手柄を主張して政界での自分の権力を増やそうとするだろう。そんなことにこの子たちを利用されたくない。そして、もう一つの理由。樹衣さまの政敵はこの子たちの命を奪おうとするだろう。そんなことは絶対に嫌だ。この子たちを守れる自信はある。でも、怖い目に会わせたくないのだ。

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