仕事初め
わたしに幼なじみがいた。しかも1000人に1人の美男だ。
「そうですか」
樹衣の言葉に、美美は少し尖った口調で言った。子供っぽいけど、こんな風にするしかできない。樹衣が自分よりも少しだけ美しい顔立ちだったからだ。
「ぷっ。どうした?おさみらしくない。普段だったら子供っぽいと言って馬鹿にするであろう」
美しい樹衣(あ、いけないいけない呼び捨てはダメダメ)樹衣さまは吹き出した。その顔は、こんな立派な部屋にいる人物というより、普通の青年みたい。
「記憶を失ったのならば、俺の立場を教えよう。ここ、宮都の皇帝の甥っ子、そして次期皇位継承者だ。本当は皇位になど就きたくはないが。」
「(棒読み)ソウダッタノデスカー。スゴイデスネー」
別に、そんなに位が高い人と関わり合いになったところで、いいことは実家が栄えるくらい。実は実家のことだけ覚えているけど、良い思い出は一つもない。実家が栄えるくらいなら、死んだほうがましだ。
「すごい棒読みだな。記憶を失ったところで申し訳ないが、早速仕事に復帰してくれないか。」
「仕事?」
「ああ。俺の侍女だ。」
フッ、と笑う樹衣(やっぱりもう呼び捨てでいい)。
「かし、こまり、まし、た…。」
美美の顔には、青筋が浮いていた。
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