雲風の血筋
更新遅くなってすみません!
わたしの顔の赤みが去った頃、雲風くんが見舞いにやってきた。
「ミ、美美さま。大丈夫ですか?緑の宮によると、討伐にお疲れなのでしょう?突然訪ねてしまって申し訳ありません」
言うべき言葉の順番が違うことが気になるが、今はお見舞いに感謝だ。
「もう大丈夫よ。でも、気になることがあるのだけど」
わたしが真剣な顔になると、彼も緊張した面持ちになる。何の話かと言えば、雲風の親のことである。実は、今回の討伐にはわたしがさせた骨折がまだ治っていない雲風の兄である盗賊も着いてきていた。もちろん攻撃には役立たないので、万が一討伐に失敗した時のためのおとり役としてだ。
「今日あなたのお兄さんを観察していて感じたのは……やっぱり血が繋がっていないのかも、ということだったわ。だって、あのざんばらな黒髪とあなたのその艶のある栗色の髪とは全く違うじゃない」
「そうですよね。昔から薄々感じていました。兄とは血が繋がっていないのでは、と。それを口に出してしまった時もありましたが、兄はずっと僕を大切にしてくれたんです」
わたしが彼等兄弟の関係を否定する言葉を吐いても、彼は兄の愛情を語った。こんなに兄弟の絆が強いのにこれ以上否定するのは傷つけることになると思い、わたしはそれ以上その話題は出さなかった。でも、どうしても気になること。それは。
「雲風、あなた、古代朝廷の生き残りじゃないの?」
古代朝廷。別名、姦王朝。今の王朝・藍王朝によって滅ぼされた先代の王朝だ。その名の通り女系の王朝で、皇帝は女性ーーすなわち女帝だったらしい。そして、その王朝の人間の特徴は宮都人には珍しい栗色の髪と金色の瞳。これは、異国からやって来たからだと考えられている。というのが、わたしが記憶を失った後に精一杯勉強して覚えた成果。雲風の容姿はそれにそっくりだ。すなわち、雲風が姦王朝の人間である可能性が高い、と。そして、姦王朝は既に滅んでいるため、生き残りとなるわけだ。
「カ、姦王朝の生き残り、ですか?」
雲風は訳が分からない、というような顔をする。そんな彼に、わたしは頷く。
「ええ。あなたのその容姿、姦王朝の人間そっくり。姦王朝は女系だから、男性は自由に旅に出ても良かったらしいの。だからあなたはご落胤の可能性が高いわ」
そう。姦王朝の男性は旅に出ていた。でもそれは表向きの理由。本来の目的は国の情報収拾。その地に来て間もない彼らには、情報が不可欠だった。そのため、皇帝にならないーーというか、なれない男性が送り出されていたのだ。わたしの言葉に、雲風は「それならあり得るかもしれない……」と言って顎に手を当て、思案顔になる。
「美美さま、あなたは、もし本当に僕が姦王朝の生き残りだったらどうなさりますか?緑の宮に報告して、打ち首にしますか」
彼の言葉に、わたしはすぐに首を振る。
「しないわ。あなたにはよくしてもらったもの。それとも、打ち首にしてほしい?」
わたしがそう問うと、彼もすぐに首を振る。
「いいえ。母に孝行するまでは死ねません」
親孝行な息子さんね。わたしも将来はこんな息子がほしい。
「だったら、なんであんなことを言ったの?わたしを試した?」
「はい。美美さまにはなんでもお見通しですね」
諦めたようにそう言う雲風。仕える者が主人の心を試すのは当たり前。上に立つ者が仕える者の忠誠心を疑うのと同じで、仕える者も主人の自分に対する忠誠心を疑う。仕える主人が自分のことを使い捨ての駒だと思っているのであればそこで退職する。主人と使用人とは、そんな関係だ。雲風はきっとそれが分かっていて、わたしを試したのか。彼の聡明さに頭を下げたくなる。
「ええ。だってわたしはあなたの主人だもの」
本当に抱いている感想は胸の中に押し留め、わたしは勝気に微笑んだ。
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