樹衣さまの溺愛がすごいです
「へ?」
樹衣さまとわたしだけの昼下がり。樹衣さまの部屋に、わたしの間抜けな声が響いた。なぜこんな声を出しているのかと言うと。樹衣さまがわたしに央都に戻れ、と告げたからだ。
「なぜでございましょう?わたしは護衛のはずですが」
「お前に、俺を守ることで怪我をさせた。もう傷つけたくない…」
待て待て待て待て。いや何で。
「樹衣さま、お忘れかもしれませんが、例の旅館の娘さんの怪我の原因などがまだ解決できておりませんが」
わたしは適当な言い訳を言う。まあこれをまだ解決できていないのは事実なので、嘘ではない。
「それはこちらでなんとかする。央都に帰れ」
ぐっ!その手があったか!
「ですが、あなた様にはわたしを突き放す勇気がございますか?」
「……ああ。確かにない。この旅が終わった後も美美と過ごしていたい」
「では、なぜ、あなた様はわたしを突き放そうとするのですか?」
美美の声は、静かながらもどこか悲痛さを秘めている。樹衣はそれを感じ取った。
(俺の恋人にすることで、このような悲しみを、この人に感じさせていたのか…)
樹衣は座っていた椅子から立ち上がり、美美の肩を抱き寄せた。
「わかった。お前を央都に戻さない。だが、護衛の役目からは外す。それが、お前をこの旅に同行させる条件だ」
「条件って…この旅に同行しろと言ったのは樹衣さまですが?」
「はははっ、そうだな。そうだった。だが、お前と恋仲になったことで状況が変わったんだ」
「んで、例の旅館の娘さんに事情聴取をしてもよろしいですか?」
「分かった。手配しよう」
こうして、樹衣さまの許可をもらったわたしは、翌日早速旅館の娘の部屋へと向かった。
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