出会い
舞雪と仕女は途中で別れ、舞雪は美美がいる台所に向かった。
あ、舞雪さまが帰って来た。何を話していたのか。
自分の名前の他に、もう一つ気になっていたことがある。
「あの、起きたときに唇に紅がついていたのですが、何かご存じではありませんでしょうか。」
「あなたは生まれつき、唇に紅がついているのよ。私もあなたに初めて会った時、驚いたわ。赤子の頃からそうなのだもの。さ、今から、坊ちゃんに会いに行くわよ。」
「?…坊ちゃん?」
「樹衣さまよ。やはり覚えていないのね」
「はい。あいにく…。」
「今から向かいますよ」
舞雪に案内されて、美美は立派な扉の前に来た。
「樹衣坊ちゃん、美美を連れてきましたよ」
「なんだ?用があるなら早くしてくれないか」
扉の向こうから、聞いたことのないほどの美声が返ってきた。舞雪はそれを肯定と受け取り、扉を開けて入っていく。そこには、気だるげに机に突っ伏した美男がいた。髪は藍色。美美も美しさには多少の自信はあったが、負けたのではないかと思う。
「お初にお目にかかります、美美と申します。どうぞ、お見知りおきを」
目覚めて美人になったと思っていたけど、早速負けちゃった。ちょっと残念。
美美がそう思っていると、
「はっ…?」
樹衣は目を見開く。
「お初にお目にかかりますって、何を言っているんだ?おさみだろう。」
「?おさみ?わたしは美美ですが」
「ま、待て。頭が追いつかない」
「坊ちゃん、美美は記憶を失う薬を混ぜた水を飲んだんですよ。坊ちゃんのことも覚えていません」
うん?わたし、記憶を失う薬を飲まされていたの!?
「な、ならば言っておこう。俺は樹衣だ。一応、お前の幼なじみだ。だから短縮しておさみと呼んでいる」
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