衝撃
舞の振り付けでくるりと一回転したその時、背中に腕を添えられたと思った後、何を考える時間もなく、抱き寄せられた。
「ずっと慕っていた。年上の幼なじみとしてではなく…女子として。」
「え…樹衣、さま…?」
こんなことをするつもりでわたしに舞を申し込んだの?いや、それより、今の言葉は…?優しい声だったけれど、どこか荒々しさを秘めた声。そして、女子として慕っていたという言葉。今までの彼の行動から、彼はまだ子供だと思っていた。
「おいで」
美美は知らず知らずの内に震えていた。樹衣はそっと腕を離し、震える美美を舞踏会が行われている大広間から連れ出し、樹衣の部屋に入り、鍵を閉める。
「ジュ、樹衣さま、何をお考えになってあのようなことを」
「美美、そなたを怖がらせてしまったのなら謝る。だが、記憶を失った後のそなたは、容姿も心映えも素晴らしかった。そなたが、好きだ」
「樹衣さま。申し訳ございませんが、今のわたしはあなた様の想いに応えることはできません。どうか、お許しください」
「そう言われるのは分かっていたが、言われてみるとショックが大きいな」
樹衣…いや、樹衣さまは、前髪をかきあげて苦笑する。それを見ると、なんだかやるせない気持ちになる。わたしは、この人に散々言ってきた。それでも、この人はわたしを嫌いにならないでくれた。今は気持ちに応えられないけど、いつか…。
「いつか…応えられるようにします」
そう言って、わたしは樹衣さまの肩に寄りかかった。
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