襲撃
襲撃はいきなり始まった。兄さんが牛車の護衛の中で一番線の細い人に刀をふるった。振り向いたその人の唇は、真っ赤に染まっていた。
気配を感じて、美美はとっさに太刀を避けた。襲撃に気づいた樹衣が端正な顔を歪め、自身の太刀を抜く。幼なじみが襲われているとはいえ、東宮という立場では助けることもできないのだろう。
危ないなあ。この男、わたしが女だと気づいてない?それなら困る。
美美は太刀を抜きながら、
「すみません、あなたは、わたしが女だと気づいてない様子ですが?」
と言う。男は驚いた顔をする。
「はあっ!?そりゃあいい。弱いじゃねえか」
かかったね、盗賊さん。別に女だったら弱いって訳じゃないんですよ。
美美は即座に男の太刀を弾き、腕をとらえ、男を地面に投げた。
「どこの骨を折って欲しいですか?自由に選べますよ」
美美は満面のニコニコ笑顔で物騒過ぎることを言う。周りの人間の心情は
「変能者」
ただそれだけだ。
当の本人は相変わらずのニコニコ笑顔だったが、そっと唇を男の耳に近づける。そして、
「選ばねば、利き腕を折ることになりますよ」
驚くほどに低い声でそう言った。盗賊は恐怖に声を震わせながら、
「ひ、左腕と左足を、お願いします…。」
と言ったきり、気を失った。
結局、折った盗賊の骨は左腕だけだったが、素手で盗賊の腕を折ったわたしの右腕の親指、中指、薬指の骨は反動で折れてしまった。その手当てをしたのは、まさかの樹衣だった。包帯の巻き方は少し下手だったが、皇族自ら侍女の手当てをしてくれたのだ、感謝しよう。そして、わたしは右腕に包帯ぐるぐる巻きの状態で盗賊が襲撃をしてきた場所にいた男ー盗賊には全く似ていないどこか高貴な雰囲気を感じさせる盗賊の弟ー・雲風に会いに行く羽目になっている。部屋で仕女に念入りに化粧をされ、羽衣付きの豪華な衣装をまとわされ、部屋の外に出ると、樹衣が立っていた。
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